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職業【銃使い】武器を得る、しがらみを解く

 アントは思い出していた。それは第四階層討伐後日の昼。

 彼はフラムの提案した作戦に頭を抱えていた。


「仲間内でスキルを譲渡するなんて、それで遊び人は納得するのか?」

「僕は別にいいけど、アントは何が嫌なの?」

「スキルはその人にとっての武器だ、誰が戦場へ行くのに武器を置いていくんだ」

「別に置いていくわけじゃないよ。武器は仲間が持ってくれてるじゃん」

「あんたの武器はなくなるだろう」


 彼は腑に落ちなかった。

 どうして勝ちに行く戦いへ、わざわざ弱体化してから行かなければならないのか。

 スキルを散らしてカリナの負担を減らすのは分かるが、結局全員がやられれば意味がないだろう。

 そう言って悪態をついたアントであったが、カリナの表情を見て驚いた。


「何いってんの? 僕にはまだ二十個くらいのスキルが残ってるよ」


 まるで分かっていない様子だ。むず痒いところに直接触れてくる。

 そもそも価値観が違うのだろう。カリナは常に強くなる可能性がある。武器をなくしても武器を生む力があるのだ。

 アントは複雑な気持ちを整理させようと思考を凝らす。それを遮るようにカリナは疑問を投げかけた。


「PvPが実装されたら、僕は高確率で狙われるんだよね?」

「当然だ、あんたのスキルはこのゲームのバランスを崩しかねない」

「じゃあ、戦わないとだよね」

「あぁ、必ず勝つ」


 カリナはふくれっ面を見せた。その姿に疑念を抱くが、カリナは目を瞑って考え出す。

 なにがしたいのかと、待ってやる。すると途端にアントは頬を突かれた。嫌悪感を抱きすぐさま距離をとった。


「な、何するんだ」

「あのね? 僕は勝ちには行かないよ」

「は? じゃあ大人しくスキルを奪われるっていうのか?」

「違うよ、僕は戦いに行くんだよ」

「……? 何が言いたい」


 カリナは一通り話し終えると、視界の端を見て唸る。何度も話を中断させて、一体何が言いたいのだろうか。

 唸りたいのはこっちの方だと、腹を立てる彼を諭すように話し出す。


「アントは、このゲームをどうして始めたの?」

「理由なんてあるか、面白そうだからだよ」

「このゲーム、面白い?」

「そりゃあな」

「だよね、第四階層のボスに負けたときは?」


 そう言われてアントも思考を凝らす。

 あの時に感じたものは屈辱であった。己の作戦がまた通じないのかと感じると、腸が煮えくり返る程に苛立つ。


「悔しかったな」

「面白かったよね?」

「……は?」


 強い無念を伝えようとしたが、彼女の言葉に思わず口を塞いでしまった。

 思考が停止して、理解しようとして脳はフル稼働を始める。


「初めてボスを見た時、すごい気味が悪い姿だけど『こいつを倒せたら、どれくらい気持ちいいんだろう』って思ったよね?」

「それは、まぁ」

「どうやって倒そう、煙幕が使えるかもしれない、自分の『鎖破悪狼(フェンリル)』がトドメを差すかもって思ったよね!」

「あ、あぁ……」

「……楽しかったでしょ? このゲーム楽しいよね!?」

「何が言いたい……」

「よくぞ聞いてくれた、アント君! 忘れちゃいけないのは目的と手段を入れ替えないことだよ!」


 その時、アントは気がついた。

 己の内に渦巻く複雑なしがらみが、一本の糸になるようにほどけた。


「多分アントは勝ちたいって気持ちが強すぎるんだと思う。勝つために強くなって、スキルを得て、仲間を頼るんでしょ? でもそうじゃないと思うな。なんとなくスキルをゲットして、最高の仲間と冒険して、楽しくボスを倒そうよ!」


 カリナは笑顔でそういった。

 まるで言いたいことが言えたようでご満悦の様子だ。


「あー、でもこれは僕の考え方だよ? 勝つために準備してくれて助かってるし、アントが客観的に僕らのことを見てくれるから安心して前に出るんだ」

「お前らは前に出すぎなんだよ」


 そう言うと、「えへへ」と笑って頭を掻く。褒めた訳では無いが、嬉しそうなのでツッコミは入れない。

 しかしこんなやつに悩みをほどかれて、少しもどかしい。その役割は自分だろうと言ってやりたかった。


「せっかくだ、とある青年の半年前起きた面白い話をしようじゃないか」

「えぇ、それって長くならない?」

「安心しろ、エンドロールは短くする」

「映画くらいの長さなのかぁ……」


 そう言ってカリナに伝えたのは、彼が有名なFPSでチームを組んでいた時の話であった。


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