職業【錬金術師】希少級のスキルを使用する
ロングソードでニーナに斬りかかる。しかし彼は余裕の表情で避けた。
当然だ、レッカが剣を握ることはカリナよりもはるかに少ない。そんな攻撃なんて当たるわけがない。
「スキルを使った知的な戦い方だ、カリナの影響を受けたんだろう? しかし経験がついてきていない。ゆえに攻撃が甘い」
二対一だというのに、攻撃がまるで当たらない。
当たったと思えば剣で弾かれていた。手が痺れて力が抜けていく。
「おいおい、それでいいのか? ほら、現に今もカリナが狙われてるぞ」
「っ!」
ニーナが顎をしゃくった先には、カリナと複製体のレッカがいた。
複製体は人工知能により制御されている、今はいわゆる『ガンガンいこうぜ』だ。
二人は数に押されて攻撃を受けているようだった。カリナを守るように複製体のレッカは動くが、魔法や剣による数多の攻撃は庇いきれない。
レッカはニーナを相手にしている複製体を、カリナの方に向かわせる。どうやら敵グループのリーダーはニーナのようで、彼が特別強いと感じた。
「俺相手が一人でいいのかよ」
「残念だけど……カリナは敗れないよ!」
「やぶってやるよ」
他のプレイヤーは経験が浅く、剣を握るのもおぼついていないようだ。カリナの心配なんてしない。
ニーナは剣を鞘にしまう、そして懐から取り出したのは魔導書であった。
「知ってるよ! 剣も魔法も使うんでしょ」
「浅いな」
隙をついて剣を振るうが、彼はその場で回転すると、足でそれを止めてしまう。
本をめくり、栞の挟まったページまで開く。舐めるように読むと、彼の足元に魔法陣が現れた。
「まずい……!」
「【神契り:虚大魔消撃】」
レッカは主人格をカリナのそばにいる方へと変える。
ニーナは紙をやぶった、その瞬間放たれたのは数多の白銀色の光線。その数、数十本。
レッカはカリナの前へと立ちふさがる。
魔法は二体の複製体を貫く、たちまち光の粒子を発して消えていった。
ダメージが還元されて、体力の三分の二が削れるのが分かった。
「……でもっ!!」
レッカは思い出していた。
カリナと話していた夜のことを。
「レッカはどうしたいの?」
そう問われて彼女は悩んだ。
謝ることが正解なのか分からなかった。
自分はサリアを直接いじめたわけではない、しかしいじめを止めることが出来る位置にいた事は確かだ。
悪いことをしたとは思わない、だが正しい行為でもない。
「私は……」
ただほっとけなかった。
自分になにが出来るのか、分からなかった。なにかすべきなのは分かった。
だから悩んだ、そして答えは出なかった。それでもカリナはそんな彼女を見捨てなかった。
「分かるまで、一緒に悩もう」
そう言ってくれた。
レッカは心が救われた気がした。複製体なんかじゃない、大切な存在が隣に寄り添って歩いてくれる。そう思うだけで、彼女にのしかかっていた、重荷が軽くなったきた気がしたのだ。
「僕だって友達を失うことは怖い、でもそのままにしとくなんて気持ち悪い。だから、なにか悩んだら教えて、気づいたことがあったら教えて。一緒になにをすべきか考えよう」
カリナの笑顔は暖かかった、その笑顔は自分が目指した笑顔だ。
人を安心させることができて、ネガティブを忘れさせるような笑顔。
「もう、逃げないよ!!」
レッカは光線を眼の前にして叫ぶ。
「【模倣:挑発】!!!」
ニーナは違和感を覚えた。
レッカの行動は自死を選んだとしか覚えない、こんな窮地はカリナに任せるべきだ。
どうして彼女が出るのか分からなかった。そして思考の末一つの回答を生み出す。
「しかし、いや、まさか!!」
ニーナは震える手を抑えてランキングを見る。
『固有級』スキル所持者の数が、増えていた。
「考えたな……」
光線は急激に角度を変えてレッカへと向かう。
白銀の衝撃がレッカを襲う。魔力の圧が彼女を包み込み、内蔵を軋ませる。
「レッカ……!」
衝撃は骨を振動させる、しかし彼女の信念は震えない。
なれないスキルに見を委ねる。
「【不落要塞】!!!」
それはカリナから譲渡された『希少級』のスキル。
その効果は、『不動』『要塞』『無呼吸耐性』を合成した鉄壁の防御スキルであった。
カリナは『鑑定』を使いレッカの姿を探す。しかし発色した魔力に遮られて捉えられない。
「カリナ、レッカはどこだ」
いつの間にか隣に立っていたアントに声を掛けられる。
「あの中だよ」
「染まっちまったな」
光が分散されて、魔力は散っていく。
そして二人は影を見つけた。そこには赤髪の錬金術師の少女。
「レッカ、後は任せとけ」
「私たちの分も、ちゃんと働いてよね!?」
「今度は役割を奪うなよ」
拳を天に掲げたレッカが笑顔を浮かべて立つ。アントはそれを見て、口角を上げた。




