職業【武闘家】断罪の刻
先に動いたのは、ミドであった。
狙いはコロン。『竜人化』した少年の懐に入ったミドは、その素早さで顎を穿つ。
「クッ!!」
彼が間一髪で避けれたのは、先刻の戦いで狙われていることを理解したから。
そして、ミドがやけにコロンのスキルに執念しているからである。
フラムもソロモンもそれを理解していた。故に、反撃の狼煙をあげる準備は万端。
「『重烈打震撃』」
「『大剣断割斬』」
赤の双斧と、黒の大剣がミドを挟むように振られた。
攻撃は空を切り裂く。空気の破裂音が地面を揺らし、戦況はやり直しとなる。
フラムの鋭い眼光。ミドは既に離れた位置でこちらを俯瞰していた。
「速いな」
「どうせもう戦わないので教えてあげます。私は【武闘家】、ハズレ職です」
「【冒険者】の進化職です。僕の【遊撃手】も同じ」
「同じく、俺の【剣闘士】も【冒険者】からだ。だからハズレというのは難儀なことだ」
「なぜ? 【遊び人】や【魔法使い】のほうが、よっぽど戦いの幅が広いと思いませんかぁ?」
革製のグローブをはめたミドは、目線を逸らすことなく話す。
いつ襲ってくるかが分からない。三人は身を寄せ合い、守りを固める。
「いづれ戦闘は魔法を主軸とした時代が来ます。私たちのような小手先だけの戦いは廃れる。そこで必要となるのが、スキルです」
「【竜人化】や【悪魔召喚】のことか」
「えぇ。私は戦うのが好きです。故に、負けるのも嫌いです。楽しいのも好きですぅ、勝つと楽しいは同義でしょう?」
喉を震わせて話す。
その声は自然とコロンやソロモンの耳を刺激した。
これはスキルではない。魅入られているのだ、二人は嫌悪を表情に浮かべる。
「ならば、楽しい戦いがしたい。こうして強い相手と戦えて幸せです。そして、脆弱な人が自らの弱さを自覚するのも、またいぃ……」
笑いながら話すミド。
彼女が地面を蹴るのと同時に、フラムが反応した。
「【魔王覇気】」
「……っ!!」
地面にしがみつき、静止するミド。目を見開き驚愕の表情を浮かべる。
それはフラムから発せられた雰囲気が、先程から一変したからだ。
殺意の塊は、猛威を振るう魔の化身となる。ミドは魔の覇気に絶え、放たれるオーラを賛美した。
「これが魔王……少し見くびってましたぁ! 心が踊るぅ」
頬が紅を染める。
体勢を立て直す。刹那、彼女はソロモンの剣を捉えた。
――!
鳴り響く金属音。鋼鉄は、割れない。
「武器、新調しました? 私が壊したと思ってましたがぁ」
「素晴らしい仲間を頼ったんだ。エレメントっていうんだがな」
「くだらない。武器を頼るなんぞ二流です」
ミドのスピードは空間を歪ませる。
その猛攻に耐える大剣は、悪魔の力を纏っていた。
しかし脅威。次第に表情を歪ませるのは、ソロモン。
「容易い! 所詮は二流でしょぅ!!」
「俺だけだったらなあ!」
ソロモンの声がミドの不信感を焚き付けた。
放たれる新たな剣技。うなじを押さえて剣を足で折った。
「モンスター……」
背後でケタケタと笑い出す魔の数々。
フラムの召喚したそれは、順次ミドを襲い出す。
しかしそれは序の口。彼女にとっては、戯れでもない。
「ただ、数が多いだけ」
視界を覆う魔の軍勢。
それは彼女の一撃で破られる。その奥に待ち構えるは、斧を構える魔王。
「ッ!! 安易」
フラムの斧を、拳で捉える。繰り返し巻き起こる爆風は、モンスターを一掃する。
しかし加勢するのは、魔の手だけではない。
「クッ!」
「麻痺です! フラムさん!!」
「よくやった」
フラムの視線、ミドを穿つ。
その怨念は彼女の脳に恐怖を植え付ける。
「……!!」
「『重烈斧断震撃』」
斧は、ミドの指を割いた。甲高い狂気の悲鳴。空間を割る振動。
同じように手で受け止めようとした、罰。
人を小馬鹿にする彼女に下った魔の鉄槌。
「ゆ、指がぁ……」
「ケジメだ、次はどこにしようか」
「どうしてまたやれると……? 二度はありません」
左腕の力を抜き、フラムと目を合わせる。
アイテムを使用して、麻痺を解く。
「再開です。私に抗うことの何たる罪か……神よぉ……! 私を見てくださいぃ」
狂気と異端。両者が牙を剥く。
魔の気配が空間を覆う。
戦闘は、苛烈を極める。




