表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/136

職業【読者】天罰と猶予

 サリアが【衰弱眼】を使用したのが、戦闘の開始であった。

 兄妹はそれを受けても、表情を変えない。ナギはニーナの懐に入った。

 猫又が楽しそうに話しかける。それは狂気とも過度なストレスへの緩和とも取れる。


「久々だなぁ、強くなったか? 俺はなったぜぇ」

「嘘でしょ。スキル増えてないし」


 薙刀がニーナを翻弄する。

 その攻撃速度はニーナのメイド服を切り刻む。それなのに、一向にダメージだけは与えられない。


「猫、みたいだ」

「猫又様だからなぁ」


 猫はナギの攻撃を柔軟に回避する。

 避けられない攻撃は【紙一重】で守る。

 隙があれば、ニーナは剣を振りかざす。その剣はナギの手首を狙っていた。


「妙な動き」

「妙なのはお前の方だぜ」


 ナギの灯籠は彼の背後一メートル上部に位置した。今のままでは届かない。

 このままやられているのも癪なので、彼の四肢を使えなくしてやろうと考えている。

 これはナギの思考能力への挑戦であった。ニーナは苦笑する。


「アントは? 大丈夫か!!」

「……」


 アントは答えない。

 レッカからもらったアキュムレーター。

 何重にも魔法陣を重ねていた。対するツムギの目は冷徹。静かに戦況を眺めていた。

 それは攻撃が始まらないから、四人のチームの内、アントとニーナを除いた二人は支援すらしないから。

 嫌な予感を抱きつつも、その思考を振り払う。


「ただ人が増えただけ」


 そう判断するのは、カリナやエスという異端を見てきたから。そして、誰よりも自分への信用が高いからである。

 灯籠を連れたツムギは銃を構える。放たれる弾は物理弾。発砲音とともに、アントも引き金を引いた。


「『灼熱大魔炎球界ギガブラスト・インフェルノ』」

「「――!!」」


 上位の中でも、威力を高めた一撃。

 空間を引き裂く業火の音色が、神殿に振動を起こした。

 ツムギは堪らず後退する。人形を盾に、灯籠を守る姿を確認した。

 そして燃え盛る人形。炎を振り払う仕草はまるで滑稽。

 ツムギの浮かべる表情は、苦痛であった。


「……趣向を変えたのか」

「魔力の装填に時間がかかったんだ」

「暇の加速」


 ツムギの目に映るのは仕事をしていない百鬼星行のリーダー。

 彼のスキル、速攻で上位魔法を放てたのはそれの影響。ツムギはナギに視線を送った。


「……」


 ナギはナタの振る手を止めて、アントの方へと走っていく。

 その距離十メートル。その間隔を詰める前に、狼は牙を剥く。


「【視覚共有】」

「【魅了眼】」


 ナギの視線が奪われる。

 それは些細な問題だと愚考し、突き進んだ先で起きたのは、錯乱。


「【煙幕】」


 ナギは立ち止まる。後退して、ニーナを見失ったことに気がついた。

 隣に並ぶツムギに『魅了』を直すアイテムを貰って、首を鳴らす。


「ニーナは」

「見てない」

「……」


 おそらく煙幕の中だろう。

 ナタを振りかざし飛び出てきたところを捉える。

 ツムギが煙幕の中へと銃を放つが、なにも反応はない。

 しばらくして、ニーナが煙幕から飛び出した。


「愚かだな」


 ナギは気がついていた。

 アントに『狐狸変化』というスキルがあり、ニーナの姿になれることを。

 そして、その作戦を実行することを。

 ナタを下から振るう。彼はこの攻撃を守るすべがない。

 勝ちを確信したナギ。

 煙幕が晴れて、背後で銃を構えるアントの姿を見て、彼の血の気が引いた。


「【紙一重】」

「『深淵大魔冥珠尽エクリプス・オーバーレイン』」


 ナタは遮られた。ナギは振り返る。

 既に放たれていた闇の魔法、それが妹の灯籠を破壊するところを目にしたときには、自分の愚かさを噛み締めていた。

 炎の灯火が弱くなる。そして初めて、彼らが自分の弱点に気づいていたことを理解した。


「ツムギ!!」

「どこ見てんだ」

「っ!!」

「【神契り:天光大魔煌点消ルミナス・ギガフォーカス】」


 猫又は、薙刀と彼の頭部を踏みつけ、灯籠に向かって魔法を放った。

 その点滅、光の上位魔法にして、彼の切り札。

 魔力が一点に集中する。焔を離散させるには容易い上位魔法の直撃。

 ナギが内側から苦痛を受ける。


「ッッァア!!!」


 宙に浮かぶ灯籠を抱えて後退するナギ。

 体勢を整えて、兄妹は互いに支え合った。


「始まったばかりだ」

「もうへばってんのか!?」


 自らに回復魔法を打つ兄妹。

 二人は支えなく立ち上がると、おもむろに猫と狼を睨みつけた。


「次はない」

「無駄な時間を過ごした、お兄ちゃん……!」

「あぁ、妹の言うとおりだ。殺るぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ