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職業【銃使い】スキルを得る

 光晶煌めく七層神殿。

 四人はボスとの戦闘に明け暮れていた。

 五度目の討伐後、彼らの体力が三割を切る。


「どうだ、俺達の結束力は」

「全然駄目ですね。特にニーナが足を引っ張ってます」

「うるせぇ。俺は仲間だと認めてねぇ!」

「そう言わずに二人で頑張ればいいでしょ」


 アントが静かに落ち込んでいる。それを庇うようにイトマとサリアがいちゃもんを付ける。

 しかし猫は気まぐれ。話を聞かない彼は、割かれたメイド服に落胆していた。


「新調しねぇとな……」

「ほんと、見た目は女なのに声と性格が残念だ」

「キメラのあんたに言われる筋合いはねぇ」


 彼がイライラしているのは、お気に入りの服がだめになったからだけではない。

 それは兄妹への腹立ち。その感情を共有しているからこその口調だと、彼らは気がついていた。

 ムスッとした表情もはたから見れば可愛いのだ。


「それで、『不知火(しらぬい)』がなんだって?」

「聞いてなかったのかよ……」


 アントが不貞腐れて応える。

 三人は戦闘を終えてボスの再リスポーンまでの時間を、雑魚狩りに費やすことにしていた。

 いつも通り来た道を戻りつつ話す。


「『不知火』は人間の体はブラフ。本体は炎……だったな」

「えぇ。特に魔法による攻撃に弱いです。アントとの相性は抜群ですよ」

「一度負けてるんだがな……」


『不知火』とは日本の妖怪。怪火であった。

 その正体は蜃気楼と言われており、理解すれば恐ろしくもなんともないのだ。

 それは兄妹の二人にも言える。サリアの説明によると、彼らは無敵ではなく、むしろ弱点の多い種族であった。


「他にも氷の魔法や低温の場所だと力が劣るようですね」

「ニーナの魔導書に氷の魔法は書かれているかい?」

「俺のには書いてないな。そもそも『氷』も『雷』も最近見つかった魔法だぜ? エレメントとか言うチームが広めてるだけで、簡単に使えて良い代物じゃない」

「氷が無理なら状態異常ですね。人形には物理や魔法の攻撃が聞きませんが、本体の火から魔力を得ているため状態異常には弱いです」


 自分の目を指さして言った。

 アントからすればサリアは初対面のようなものなので、彼女の戦い方については詳しくない。

 動画ではマゼランのそばで静かに佇んでいる印象を受けていたが、その本質がデバッファーであったことには驚いたものだ。


「【狼狽】が効くかどうかはわかりませんが、『衰弱』は確実に効果があるでしょう」

「確かに二人とも物理攻撃だったからな」

「俺の見立てだと、ナギは剣士系の職業で、ツムギは銃使いかな」

「『銃使い』は魔法職だろ? なにいってんだ」

「いや、俺の『銃使い』とは別だと思う。冒険者から『銃使い』に進化できるんだ。それに俺が使うのは魔法だが、ツムギは物理の弾だっただろ」


 彼らがだべっていると、道すがらの敵に見つかる。

 光晶ソルジャーは鉱石でできた肉体を持つ、体力値の高いモンスターであった。

 アントは走り出す。それを誰も止めない。それは彼が光晶兵を倒すことが出来ると理解しているから。


「元気なやつだ」

「やる気があると言ってくれ」


 彼は迂闊に銃を抜かなかった。懐から抜いた短刀を握り、光晶兵の剣を受け止める。

 牙を向くのは、彼ではない。


「『鎖破悪狼(フェンリル)』」


 アントを包むように現れるのは、不透明ながらも巨大な肉体をもつ狼。

 巨狼は実体を得ると、灰の毛並みを震わせた。

 巨大な腕は光晶兵の腕を握る。アントと交わした剣を離し、無防備となった関節に、アントは短剣を突き刺す。

 インベントリから取り出した拳銃を弱点である関節に打ち込むと、光晶兵はやがて命尽きる。

 その間、たったの一分。サリアとイトマは手を叩いて称賛した。


「カリナ様のようにスキルを使わずとも、その戦闘センスで補う強さはさすがアンノウンといったところでしょうか」

「ニーナと肩を並べる程だからねぇ。俺は最初からアントが強者だと見抜いていたさ」


 アントは巨狼を落ち着かせると、武器をしまった。

 ドロップアイテムをすかさず回収し越に浸っていると、途端に聞き慣れない音が聞こえた。

 その音に驚愕する四人。そしてそれがアントから鳴っていると気づき、声を震わせる。



 スキル取得

【視覚共有】



「い、今の音……」

「スキル取得音です……これって」

「……ほんとにスキルって自然に獲得できたんだね」

「何いってんだ。俺の仲間がよくゲットしてるだろう」


 彼だけは上機嫌。

 画面を見て、その効果に思わず口角が上がる。

 そのスキルは『上位級』であり、効果は視覚の共有。

 アントは試しにそのスキルを使用する。


「……あぁ」


 ニーナが呆ける。

 彼の右目に宿るのはアントの視界。メイド服の美しい女性。


「良いスキルを手に入れたなぁ」

「酔いそうです……カリナ様ならもっと都合の良いスキルを手に入れたでしょう」

「そんなこと言ってないでさ、スキルの自然取得だよ! とんでもないことだよ!! アント、すごいよ……!」


 そういって珍しくはしゃぐイトマに、アントは苦笑した。

 これを授かったということは、使えということだろう。

 それが指すのは、仲間との情報共有。


(もっと仲間を頼れってことか)


 試してみると、仲間の視界も奪えた。

 一人で光晶兵を倒した直後の取得。

 誰かの意図を感じ、アントは静かに背後の見つめた。

 神は、彼を見逃さなかった。


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