職業【遊び人】魔法の極地を学ぶ
カリナは、第十階層の広原で戦闘に励んでいた。
相手はソートとメイト。味方にはエレンがいた。
魔法を使って更に強くなるためだ。ソートの教えは正しく、カリナはすぐに成長していった。
魔力量と魔法発生の調整も上手くなり、思うような魔法を放てるようになっている。
エレンが隣で恨めしそうな表情を浮かべて、少し申し訳ない。
「カリナはすごいわね。私も打ったことのない魔法を、すぐに打てるようになっているわ」
「僕は【魔法作成】で作ってるからね。スキルで上達まで近道してるんだよ」
ソートの魔法をスライムで受ける。もちろん攻撃は受けないし、むしろMPが回復する。
魔撃を放ちソートとメイトが受けている隙をついて、スタッフを振りかざした。
「【大岩魔撃】」
岩が空中を浮遊して、二人を襲う。
その魔法は実体化した岩石のようで、魔法を受け流していた彼らの耐性を崩す。
「エレン! 今だよ」
「【大雷魔線】」
「【大光魔珠】」
二人の魔法の連発、休む暇なく放たれた魔法は魔力量が少し雑だが、それでもダメージを与えるには充分過ぎた。
「クッ! 厳しいね!!」
「自分が受けきりましょう……! 【天光大魔嵐線網】」
光の光線が宙を包む。
空が眩しい、だがカリナの目は既に光に慣れていた。
ソートの懐に潜っているのはカリナ。その姿に怯む。ソートの隙に、三人は決着を確信した。
「アビス・オーバーレイン」
闇の上位魔法。それは唱えられなかった。
ソートの胸に、カリナのスタッフがちょこんと当たる。
「……参り、ました」
「ふふん! どうよ。僕、強くなってるでしょう!!」
「おぉー!! カリナがソートを上回ったよ!! すごいすごい!!!」
メイトはカリナを抱き寄せる。
エレンは一人呆けていた。まさか自分よりも上達スピードが早いとは、彼女の力に目を疑った。
「素早い連撃に、それぞれの属性を組み合わせた展開。そして何よりその上達速度。少し見くびっていたようです……」
「ソートほどの威力の高い魔法は放てないけどね。そこまで褒められると嬉しいよ」
四人は成長に歓喜する。
この力があればエスに勝てると、そう考えているのはこの四人の中に、いない。
カリナは表情を歪ませた。
それは、魔法を放ってもエスには勝てなかったこと。思い出すのは直近の戦闘。
「きっと大丈夫です。カリナなら勝てますよ」
「私たちはあの鯨も倒せたんだよ! カリナは最強なんだからね!!」
「私はあなたに思いを託しているわ。最悪の化身である闇の亡者を倒せるのは、あなただけ」
眼帯を押さえて話すエレン。
その言葉は本心であった。しかし悔しいのは違いない。カリナは感謝を伝えていると、空中に気配を感じた。
「……」
空に目を向けると、三人もそちらの方を見た。
エスとは違う、和やかな雰囲気。そして心の奥に燃える鬼のような気配。
膨大な魔力の底に眠る怒りに、カリナは手に汗を握った。
「なってないな。カリナ」
「マゼラン……」
マゼランが言いたいこと、話したいことは、何となく察していた。
それは少女の表情を見れば分かる。眉間にシワをよせる鬼に、カリナを除いた三人は、思わず怯む。
「そのスタッフ。魔法の刻印がなされていない。お前、いちいち魔法を作ってるな」
「【魔法作成】っていうスキルを使ってるからね」
「スキルに頼る戦い方がよくないと、伝わってはいなかったか」
おもむろに金棒を構えたマゼランは、重い動作で歩みだす。
次の瞬間には、目の前まで迫っていた。
「っ!!」
「なんて傲慢な。カリナの努力を、知りませんか!」
カリナは驚いた。その金棒をどう受け止めようかと考えていた隙に、ソートがそのステッキで金棒を受けていたのだ。
その迫力のある声にカリナは目を丸くさせる。
「ソートの言うとおりだよ!! カリナは私たちといっしょに一生懸命頑張ってるじゃん! そんなひどいこと言うなんて、絶対駄目!!」
「【天文学者】かなんだか知らないけど、悪鬼は駆逐してやるわ。だから去りなさい。私たちの仲間に手を出さないで」
メイトとエレンも前へ出る。
しかし、マゼランの目に浮かぶのは、カリナだけであった。
それ以外は眼中にない。
「次負けた時、お前はどんな言い訳をするんだ。スキルが使えませんでしたっていうのか」
「……」
「魔法の練習はしてましたと言うのか。仲間の力を借りましたと言うのか」
「……っ」
「喚くなよ。お前は逃げられないんだ。次にやることが分かっているだろう」
マゼランの言葉を否定できない。
心に傷を負いながらも、カリナは立ち上がる。
三人はそれを見ておくことしかできなかった。魔法を扱うプレイヤーとして、マゼランはその極地であるからだ。
異論はない。
だから、マゼランに太刀打ちできるのは、彼女だけであった。
「僕は、勝つよ」
「どうするつもりだ」
「マゼラン……魔法を、教えて」
カリナはスタッフをマゼランに渡す。
ソートは息を呑んだ。カリナのステージは、ここではないことを、今やっと理解する。
「……悪かったな。あんたたちを悪く言うつもりはないんだ」
ため息をついて、鬼は表情を崩した。
四人がエスとの戦いから逃げていることを、マゼランは理解していた。
それをみなに自覚させたかったのだ。
少女の不器用な気持ちに、四人は安心を浮かべた。
「そのようなやり方はやめてください」
「ほんとだよ! 私、本気で敵対するつもりだったんだから!!」
「……わ、私は信用していないわ。悪鬼であることには変わりないのだから」
マゼランの冷たい視線に、エレンは息を呑んだ。
しかし、その勇姿は認めているマゼランは、エレンの言葉を許す。
「やるぞ。もう逃げるのは終わりにしよう」




