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職業【遊び人】決着への糸口

 レッカの複製体が消えた。


「本体から来る」


 不意打ちに備えたエスの防御は、腕で剣を受け止めた。

 守ったと思われた彼の腕に流れるのは、マイナスの数値。


「【作用反転】」


 カリナが作成したスキルは『作用反転』。スキルの効果を反転させる。

【物理半減】により守っていたダメージを、二倍の痛みとして負う事となった。

 エスは口を開けて呆然としていたが、途端に口角が上がる。新たなスキルに心が高鳴るのだ。

 風がエスの髪をきる、彼の表情がよく見えた。


「分かればどうということもない。攻撃を受けなければいいんだろう?」


 エスは飛翔する。踊るように滑空するエスから、魔力が溢れ出る。

 魔法はより苛烈になり、辺りのプレイヤーに攻撃を撒き散らした。

 カリナは唇を噛んで牽制する。


「【挑発】」


【魔力蓄積】によりMPが潤う。

【無重空速】で空を制し刀を振るうが、素早い回避にカリナは追いつけない。

 試しに魔法を放つも、空中で魔法同士が相殺し届かなかった。


「カリナ、やるしかないぞ」

「俺達はこれ以上は役立たずのようだな」

「や、やれることはやるよ!!」


 三人はカリナの背を押してくれた。

 重い期待を背負ってしまったようだ。拳を握ると、汗が滴り落ちた。

 これ以上今までと同じ攻撃を繰り返しても意味がない。戦闘が長引けば被害も多くなるのだ。

 彼女は心をおさめる。間違ってはいけない。ここが勝負の分かれ目だ。

 エスの薄気味悪い笑みが目についた。あの笑顔を崩すために。















「【始原顕現(プロベール)】」


 羽根が生える。輪っかが点灯を始める。体内から未曾有のエネルギーが溢れ出す。

 彼女のスピードは音を置き去りにした。半天使の翠月刀はエスの腕を切りつけていた。


「っ! 避けられないな……」

「終わらせるよ」


 その言葉を合図に、翠月刀は猛威を振るう。

【符号反転】により【緩癒】を使用できない。体力を回復する術を失い、ダメージを軽減することすらも封じられた。

 彼女の王手に待ったを掛けたのはエス。


「話をしよう」

「……」


 半天使は姿に偽りがない。

 カリナは耳を傾ける。当然、回復はカリナの目に映るので、【緩癒】を開始すればエスの命はない。

 それを分かっているようで、彼も腕から力を抜くと、ほとんどのスキルの使用を止めた。


「俺の職業は【賢者(けんじゃ)】だ。この言葉の意味が分かるか」

「もしかして……エスも【遊び人】だったの?」

「あぁ。俺はカリナと同じ効果をもつ職業を持っていた。そして無事に進化を果たしたんだ」


 エスは息を整え終えると、顔に掻いた汗を拭き取った。

 無表情で語る彼からは、悲壮感を感じた。


「そして理解した。不自由なことが、これ以上なく苦痛だと」


 カリナはそうは思わなかった。

 不自由があるから、面白いのだ。不自由を自由にするために試行錯誤するのが楽しいのだ。


「だから、俺は俺と同じ考えを持つプレイヤーにせめてもの手助けをしてやりたいと感じたんだ」

「いい、考えだと思うよ」


 彼女の言葉は本当である。

 だからこそわからない。彼の行動にカリナは納得がいかない。

 彼と目があっている。【奪取眼】を使われればすぐに分かる。


「カリナは感じたことがないか? 他者の才能への嫉妬。同じ土俵に立っているのに、自分以外が選ばれること」


 嫌というほど感じたことがある。

 このゲームを始めて、武器が持てないと気がついた時。

 初めてのスライムに、六回も倒された時。大スライムを相手に、手も足も出なかった時に。


「そんな不平等を無くしたい。それが俺のスキルで叶えることが出来る。君ならどうする?」

「僕なら一緒に乗り越える。同じ土俵に立って、一緒に戦うんだ」

「なぜ? スキルを与えられる。すぐにその問題が解決出来る。そう捉えないかい?」

「それをすれば、スキルに囚われた戦い方しかできなくなる。それになんの成長にもなってないでしょ」

「成長は才能があるものだけが出来るんだ。君はオタマジャクシに歩き方を教えるのかい? 鯉に滝の登り方を伝えるのかい?」


 カリナは頭を悩ませる。


「オタマジャクシを蛙にする魔法、鯉を龍に変えるスキルがあれば、使うだろう」

「少しの時間も待てないの?」

「どうして待つ必要があるんだい? そこに魔法とスキルがあるんだから」


 会話が成り立たない。

 思考が交わっている。エスは笑っていない。冗談じゃないのだ。

 目線が交わる。もう話すことはない。それは彼も同意見のようで、手印を結ぶと、呟いた。


「君は君のスキルをまるで自分だけの特権のように使う」


 冷や汗が流れる。

 思わず振りかざした。地上から仲間の声が小さく聞こえる。

 戦え、自分。敵を斬れ。今振り切らないと、間に合わない。


「【模倣】」


 翠月刀がエスを捉えた。

 鈍い笑い声が耳を劈く。切り札を切ったのは、賢者。


















「【始原顕現(プロベール)】」


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