職業【遊び人】敵対
エスは掌をこちらに向けて攻撃を放ってきた。
しかし攻撃が見づらい。
「攻撃自体に【透明化】を付けてるんだね」
「これは俺が名付ける。魔法の透明だから、【魔透明】としようか」
カリナには『可変鑑定』があるため、数値が流れが分かる。
しかし視認は難しく、カリナはスライムを十メートル上空に召喚する。
「その移動方法、流石にずるいよね」
「専売特許だよ」
魔法を受けた分身はあえなく消えていなくなる。
スライムが人型となると、落下する翠月刀を『念動』で受け取る。上空からエスを睨みつけた。
「残機無限? いや、あれは召喚したスライムを『種族変化』で人間に変えているだけか」
「どんどんバレるね」
「俺のセリフだよ。本体を倒さないと君は死なないんだね」
「召喚」
カリナの言葉に応じて現れる四種二十匹のモンスター。
金剛スライムが魔弾を連発する。
蜂がエスに飛びかかり、小鳥と蝶が魔法を放つ。
その全てが『自立戦闘』によって攻撃を開始する。
「所詮は雑魚モンスター。だが、カリナの攻撃は侮れない……か」
エスは丁寧に魔法を避ける。
翼はない、足も動いていないため、宙を泳いでいる認識だ。さながら『空中浮遊』だろうか。
「『異常魔導』だろ? 攻撃を一つでも受ければ、状態異常になる」
「なら僕が直接つければいいね」
エスはすぐさま左に避ける。
そこには、召喚されたスライム。スライムからは人の腕が生えており、エスの身体に触れていた。
「邪悪だな」
「倒すためだよ。【変異の円環】」
スライムからもう一本の腕が生えて、ボコボコと音を立てながら、体が生成される。
もう一方の身体は溶けてなくなる。エスはそれを横目に、腕の痺れを押さえていた。
「体力が削れている、麻痺の次は毒か」
「次は呪いにしよう」
カリナの腕に、虹の輪が腕輪のようにまとわれていた。
ゆっくりと回転を行うと、エスの攻撃が止む。呪いを受けた証明であった。
「【技能創出】」
エスがゆっくりと体勢を立て直す。
「【異常排除】と名づける。先に状態異常の対策をしなかった俺が悪いね」
「スキルが、作れるの?」
「見せるつもりはなかったさ。でも、見られて問題はない。こういうふうにやるんだよ」
エスは五本の指をそれぞれ突き合わせた。手元で文字を操る。
紙はない。白い文字が宙に浮いているようだ。
指先を合わせてじっとしていると、文字が忙しそうに走り回った。
「今、状態異常の無効を無効化するスキルを作ってみた。【異常再臨】と名付けよう」
「……」
エスがそれをわざわざ説明するということは、それを攻撃に転用するつもりなのだろう。
エスはスキルを付与することが出来ると言っていた。カリナにそのスキルが足されたら面倒だ。
今の自分は本体ではないので、追加されたら、すぐに別のモンスターに【人格投射】を行い主人格の位置を変える必要がある。
「ここまでモンスターの体で来たね? 主人格は君かも知れないが、君を倒してもスキルを奪えない。そうだろう?」
「よく分かったよね。レッカにも分からない難問なのに」
「モンスターは器に過ぎない。人間の姿をしているが、『種族変化』による仮の姿だ。だから、俺はこの勝負に勝機がない」
「そうだね、それで? どうするつもりなの?」
「俺は勝ちに来たんだ。よって君に構う意味はない。【技能創出】」
エスはスキルを生み出す。
そして優しい笑みを浮かべた。
「【技能拡散】」
そして、エスは姿を消した。
瞬間、舞い散る文字列。
「悪あがきかっ」
文字を受けた瞬間に、モンスターが落下し始める。【変異の円環】による状態異常が身体を襲う。
ここにいても意味がない。カリナは本体に人格を戻す。視界が暗転し、頭の中がふらふらと揺れる。
「カリナ!!」
「だ、大丈夫!? 倒されたの!?」
「あの数を倒すのか……?」
「いいや、状態異常の無効を無効化されたんだ」
「……!? なに言ってんだ! カリナ!」
「多分そのままの意味だよ、フラム……」
カリナは目を覚ますと、無銘舎にいた。本体は無銘舎にいる、それは正しかった。
そばには本体を守るために三人が常に警戒して守ってくれていた。モンスターの体のみでエスを倒せれば良かったが、そうは問屋が卸さないようだ。
カリナは無銘舎を飛び出した。三人が追いかけてくる。
「まさかここがバレたわけじゃないだろう?」
「大丈夫、だと思う。だけど、時間の問題かな」
「エスはどんなやつだったんだ!」
「緑のローブを着ていた。髪の毛がなんか灰色だった。あと、スキルを作れる」
「スキルを作る……!?」
「魔法を作る、で驚いていた俺がまるで過去のようだ」
頭を抑えるアントに、興奮冷めやらぬフラム。
そんな二人にレッカが冷静に説く。
「このままここが襲われるのは怖いよ。階層を移動しよう。襲われるまでの時間をちょっとでも長くしよう」
四人は階層移動する。
戦闘は第二フェーズへと移る。
神は静かに笑みを浮かべた。




