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職業【遊び人】天で戦闘を開始する

 カリナの四肢が青の不透明になっていた。

 これは大スライムに『種族変化』した結果であり、体力の増加が確認できた。


「実験は成功だね」


 体の形は人のままなので不便はない。ずっと懸念していた体力問題が解決して、カリナは満足げな表情を浮かべた。

 第十階層の空で彼女は散歩をしていた。



 スキル取得

【無重空速】



『空中歩行』が進化した。早さを調整したり、地面の位置を切り替えたり出来る。

 急なスキル取得音で若干驚いたが、性能を見て上機嫌になる。


「ってことは、コウモリみたいに逆さになることも可能……?」


 カリナは階段を登るように歩を進める。次第に体の向きが変わる。

 天に張り付いているように体が固定化されている。足が空を向く。重力を完全無視した瞬間であった。

 彼女は気づいていないが、これも『固有級(ユニーク)』である。


「ラッキーだね。こんなスキルが手に入っちゃうなんて」


 カリナは本来獲得しようとしていたスキル着手に目を向ける。

 それは『魔法作成』と『符号反転』のコンボである。

 魔法には四つの要素がある。属性、出力方法、魔力量、安定度という名のイメージである。

 そしてこの魔力量を出力の瞬間に『符号反転』で変えることができたら面白そうだと考えた。

 ちなみにこのスキルは、以前鯨の回復をダメージに変えた彼女のとっておきである。

 カリナは光のスタッフを握ると、魔力を注ぎ込む。

 今や膨大な魔力と、体力を魔力に変える『諸刃の剣』で、魔力は枯れることがない。

 分身を目の前に召喚すると、体力を少なくしておく。


「よっしゃー、やるよ! 『灼熱大魔炎球ブラスト・インフェルノ』、【符号反転】!!」


 魔力が瞬時に離散する。

 カリナは目を疑った。


「そ、そっか。魔力量がマイナスになるから魔法が消えるんだ……」


 裏を返せば、敵の魔法に触れて『符号反転』を使うと無効化出来るということになる。

 しかし今やりたいことではないので、打開策を考えて魔法を放つ。


「次は属性を反転できないかな? 『灼熱大魔炎球』ブラスト・インフェルノ


 魔法を放つと、それは青い炎となって放たれる。

 しかしすぐに魔力が離散してしまった。おそらく『符号反転』の効果を全て属性に掛けられていないのだ。


「先に属性を反転させてから魔法として発動するのが良いのかも」


 カリナはスタッフに魔法を込めると、【魔属性変化】で属性に干渉する。

【符号反転】で属性を変化させると、スタッフは冷たくなる。


「行けるんじゃないかな? 詠唱は……『再生』」


 青の炎が、分身体を纏う。肌がじわじわと震えて、開いた穴が塞ぐようだ。

 体力がみるみる内に回復していく。


「反転魔法、成功だね」


 これで彼女も回復が出来るようになった。

『可変譲渡』があるのでこれまでは自分の体力を分けることができたが、これでリソース無限で第三者を回復することが出来る。

 カリナは所得してきたスキルを眺める。



粘性之王(スライムロード)】【始原顕現(プロベール)】【統御生多相(マルチ・ドミネート)】【始原同一化(プロト・イコール)】【万象致死】【魔法拒絶】【変異の円環】【種族変化】【無重空速】



 これら全てが『固有級(ユニーク)』だ。他にも四十五種類ものスキルがある。

 鼻息を鳴らした。


「これでエスに戦いを仕掛けられても大丈夫だね」


 この全てのスキルはこれ以上仲間がやられるのを阻止するため。

 そして、最悪の展開を招かないためである。彼女は笑った。


「だからおいでよ、そこで隠れてないでさ」

「……見えてたんだね」

「僕を欺くなんて今や神でも不可能じゃない?」

「【透明化】は信用してたんだが、【可変鑑定】の効果で値は見えるか」


 カリナの視界に映るのは、何もない空中に何度も現れては消えるプラスの数値。違和感があって当たり前だ。

 それに『生命感知』でそこに意思を持つプレイヤーがいることを認識していた。

 彼は【透明化】を解く。

 そこには緑のローブを纏った優しそうな青年。


「なにがしたいの?」

「俺になら、そのスキルを皆に配ることが出来る。君に返すことも出来る。増やすことさえ出来る。意味が分かるかい?」

「強さの分配?」

「そうさ。俺は不便にしているプレイヤーを見て悲しくなる。だから俺のスキルを分けるんだ。皆が笑顔になる。幸せだろう」

「それはいい考えだと僕も思うよ」


 カリナの身体はいまだに逆さを向いていた。

 目線だけが交わる。エスは微笑む。


「それならよかったよ。なら君のスキルも借りて良いかい?」

「嫌だね。僕のスキルは僕のものだよ」

「どうして駄目なんだ? 仲間には分け与えてたろう?」

「『仲間』だからね」

「なるほど」


 エスは少し考える。

 ローブが風を切る。目立った飾りはないようだ。武器も見当たらない。


「なら仲間になろう」

「……ん?」

「仲間になればスキルを分けてくれるんだろう? 仲間だカリナ。俺達は共に己の夢を叶えに行こう」

「……なに言ってるのか、分かってる?」

「えっと、間違いだったかい? 君はどうすればスキルを分けてくれるんだ?」


 エスは目を見開いてじっとこちらを見る。

 奇妙な感覚だ。サリアと目を合わせているときよりずっと静かなのに、なにかが失われている気がする。


「もしかして、今スキル使われてる? さっきから体が痒くて仕方ないんだよね」

「分かるんだ、スキルを借りようとしていただけだ」

「それ、僕の本体じゃないから。意味ないよ」


 エスの背後に一匹のスライムが跳ねていた。

 それは人間の身体に変化する。額から大きな鹿の角が生えていた。

 話していたカリナはドロドロに解けて消える。


「それも本体じゃないんだろう? 『裏切り者』でスキルの共有はしているが、スキル本体はないな」

「ログインしたときから尾行されてるって気がついてたから。本体は今頃無銘舎で皆と一緒」

「ここまで何キロ離れてると思ってんだよ。ほんと魅力的なスキルばっかりだ」


『裏切り者』はフラムと初めに『毒の体』を得た時にゲットしたスキルである。

 効果は召喚したモンスターに自分と同じ効果や状態を付与出来る。

 これを使えば、カリナは自分の本体を何処かに隠して置くことで、倒される心配がないことに気がついた。


「姑息だね、【遊び人】は」

「知的って言ってよ。エスにはこれまでの借りを返さなきゃ行けないからね」


 カリナは剣を握る。それは本物、翠月刀。

 発動しているスキルの数に応じて、攻撃力が上がる。


「いいの? 奇襲になっちゃうけど」

「今、スキル使って奪おうとしてきたでしょ。名前はなんなの? スキルを奪う目だから【奪取眼】?」

「まだ命名してないんだ、君がいうならそれでいいよ」

「命名……」


 エスは笑う。

 掌をこちらに向けると魔力の流れを感じた。

 攻撃を仕掛けてくるようだ。戦闘が始まる。

 互いは笑みを浮かべる。神は微笑んで、観戦を始めた。


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