職業【遊び人】敵を見定める
無銘舎の机に一人座るのはカリナ。
手物に映る画面には、フラムとミドが戦ったログが残っていた。
対戦後すぐに連絡があったのだ。カリナが感じたのは恐怖である。
「逃げられない、世界は僕を認識し始めている……」
マゼランと初めて会った時のことを思い出していた。
今やカリナは一躍の有名人である。
それは、スキル所得数のランキングやイベントでの貢献、レッカの動画等で人に見られる機会が極端に多くなったのだ。
自分では成り行きでゲームを楽しんでいただけだが、それが裏目とでた。
人気になればなるほど、狙われるようになるとは思っていなかった。
イベント戦後からは、スキルを奪うために戦いを挑みにくるプレイヤーが多くいた。
初めは自分だけが迷惑を被ればそれで良いと思っていた。
しかし、問題は拡大していった。
「ニーナにコロンまで……」
彼らには個別で謝りに行った。
ニーナは「気にするな。俺の方こそすまない。あの時の謝罪がまだだったな」と慰めてくれた。お互い思うことがあったのだろう、話はそれでイーブンになった。
コロンも「自分が弱いのが悪いんです。もっと強くならないと」と言っていた。あれからずっとソロモンやフラムと戦闘センスを磨いており、いつか疲労で倒れないかと心配になる。
周りに支えられている。感謝が溢れて、喉が詰まった。
そんな今だからこそ、自分に出来ることを考えなければならないのだ。
「エス……」
みなを襲ったプレイヤー群。
軍服を着ており、近くに火を浮かべる『ナギ』と『ツムギ』。
頭が花になっている、樹人の『ダリア』。
茶髪で不思議な間で話す『ミド』。
そして彼らをまとめているであろう存在、イベントで二位を取った強者『エス』。
「一体なにがしたいの……?」
エス以外の四人は単純にスキルを奪いに来ているように思えた。
しかし違和感が残る。
「スキルを奪いたいなら、僕のもとに来ればいいのに」
アンノウンでも、百鬼星行でも、エレメントでも、黒白戦線でも。もっとも多くのスキルを取得しているのはカリナである。
それにカリナは特別強いわけではない。確かに対応力だけで言えばダントツであろうが、一対一の勝負に分があるとは言えなかった。
カモが葱を背負っているようなの状況で、カリナを狙わない理由。
「やっぱり、エスが皆を襲うように言ったのかな」
襲うという表現は極端だとしても、カリナを避けているのは明確であった。
その理由がなんなのか、分からない。
しかしそこに意図がある可能性があることに意味があった。
彼女はため息をつく。
動画では、ちょうどフラムがミドに斧を振った瞬間であった。
「皆、攻撃が効いてない」
兄妹には、魔法があたってもダメージがなく、物理攻撃はそもそも透けてしまう。
ダリアは、『偽造』というスキルによってダメージがなかったことにされてしまう。
ミドは予想になるが、ダメージや衝撃はあるように見えるが、とにかく頑丈という印象。
「攻撃も強い……のか」
兄妹二人による猛攻、ダリアの範囲攻撃、ミドの単純なる暴力。
カリナは彼らの戦いを見て感嘆する。敵ながらあっぱれという所だ。
「僕はなにが出来るんだろう」
画面を閉じて窓の外を眺めた。
鳥がさえずり、葉擦れの音が囁く。
木漏れ日がカリナを導く。
「……初心に帰るのが良いって言うよね」
カリナは窓をまたぐと、翠月刀を握った。
考えるのも大事だが、行動しなきゃ進まない。
彼女は気の向くままに、作戦を開始する。




