職業【選ばれし者】運気を上げてガチャを回す
「運気を上げました! トト!」
「いくよ」
トトはガチャを回し敵を見据える。
目の前には、黒い王冠を被った魔生族の主。
|魔統黒禍王《ダーク=オーバーロード》
HP 800/800 MP 200/200
黒の剣がトトを襲う。
シルフはそれを庇うと、トトに目配せをした。
「SR、まだまだっ」
トトの手元には光輝く両手剣。
運気を上げた効果が出ているのか、魔生族の弱点を付けるアイテムが手に入った。
「こっちは任せといて!!」
レッカの声に、トトは安堵する。
城の中。広い講堂で、王は最奥で待機していた。
トトとシルフは攻撃を仕掛けるが、王はすかさず雑魚モンスターを召喚してきた。
さすがの王だが、このパーティに憂いはない。
レッカが自身を複製させると、スタッフで攻撃を仕掛ける。
肝は、三匹のテイムモンスター。
レッカのそばで羽根を広げる小鳥は、それぞれ『レン』『ジュン』『ツキ』といった。
「トト、行けるか!?」
「……やってみる」
トトの剣による攻撃は、王に着実にダメージを与えていく。
王からの攻撃に耐えるのはシルフ。攻撃を与えるのはトトの役割としていた。
だがその攻撃が致命傷を与えることはない。
「クソッ、またですか」
王は知的であった。
自身の体力が減るのが分かれば、守りの型に入る。
攻撃を与えようにも、屈強な鋼の鎧が攻撃を防ぐ。
体力を回復して剣を構え直す王に、シルフは悪態をつく。
「姑息なやつだな」
「トト、また運気を上げました」
「ありがとう」
体を覆う橙色のオーラ。
朗らかな暖かさにトトはガチャ画面を開く。
その時、トトは感じた。
「ねぇ」
「なんだ、なにか分かったか」
「『選ばれし者』の進化条件、分かったかも」
トトは後ろに下がると、剣を地面に置く。
そしてガチャを回した。
「進化条件……どんだけガチャ回しても、URを当てても、進化しなかったのにか?」
「『選ばれし者』はトトさんのお陰で強い職業だと再認識されましたが、それでも職業進化を成した人はいません」
「これまでのことも必要かも知れない」
トトの手元には一つの大剣。
シルフは目を疑った。トトのステータスが徐々に上がっていたから。
セレナは声を漏らした。トトにバフを掛けていないのに、力が溢れているから。
「でも必要なのは、進化したいって意欲かも」
「……らしくねぇぜ」
「まったくです」
二人は笑う。
トトは大剣を構えると、王に叩きつけた。
その攻撃を剣で捉えた王は、攻撃を受けてから理解した。
剣が砕ける。守れない。
「っ――」
胴を切りつけ、赤いエフェクトが散る。
王が下がる。だがトトは逃さない。
少女の羽根は巨大化し、その姿はカリナの半天使を思い出させた。
鋼の鎧を砕く斬撃。王の体力が減る。
【選定者】の名が、トトの頭上に映る。
シルフは呵々大笑する。
「やっぱり俺のアドバイスなんて、必要なかったな!!」
「進化すらも運任せですか……選ばれし者がやっと選ばれた瞬間ですね」
「皆のお陰だよ」
トトの職業は【選定者】へと進化した。
その効果は、ガチャの当たるものを操作出来る。
トトは武器を思い浮かべた。手元に現れるのは巨大な鉄槌。
鉄槌を振りかぶったトトは、王の腹めがけて振りかざす。
「鈍いね」
鉄槌による攻撃は、遠心力によって威力を底上げした。
王は上へと攻撃を避けるが、羽根の生えたトトから距離を離せない。
攻撃を喰らい落下する。トトはガチャを回すと、次は短剣が手元に現れた。
王の首に短剣を突き刺す。ダメージをそこそこに、トトは距離を取る。
「効いてる」
トトの手元に現れたのは銃器。
アントの真似をして打ち込むと、王は悲鳴をあげる。
「これが『選定者』……」
「都合のいい職業ですね、私たちといい勝負ができそうです」
「トト、進化できたんだ!! やったー!!」
レッカが合流する。雑魚モンスターが急に姿を消したからだ。
彼女はトトの姿を見て声をあげる。彼女の鑑定には、トトの真価が映し出されていた。
「す、すごいステータス……これ、セレナのバフは掛けてないんだよね!?」
「えぇ、今のトトは鯨よりも頑丈でしょう!」
少女の連撃は王の体力の八割を削った。羽根を畳んで皆の元へと着地する。
「トトすごい! 天使みたいだよ!!」
「白い羽根に四本のスタッフだろ? 俺には神に見えたぜ」
「美しいのは間違いありません」
「や、やめてよ……」
トトは羽根で自分の顔を隠した。
ともかくあとはトドメを指すだけだ。
シルフがハンマーを握ると、セレナが運気上昇のバフを掛け、レッカが攻撃力を高めた。
時は満ちた。花は笑う。
「良いところに来れたわ」
王の首に絡みつく触手。
シルフは動けなくなる。
「初めまして。樹人のダリアと申します。」
王の首が飛ぶと同時に、セレナが膝をつき、そして頭を地面に強くぶつける。
遅れて、甘い香りが広がる。レッカは正気を保つため、自分の頬を叩く。
「……え?」
そこには、花の異形頭。
紫色の花弁が、幾重にも重なっている。
丸く膨らむの花びらの中央が、まるで顔のようにこちらに向いていた。
その下には、スーツを着た人の体がある。
「えっと、よそ見していたから、気づかなかったのかしら。要求は一つ。トトちゃんか、レッカちゃんのスキル回収」
「なんの話?」
トトが睨みつける。
紫の花柄が印字されたシャツに、黒いスーツを着ている異形頭。
花が揺れる。触手が、ぬるりと増えた。
「勝った気になって、滑稽。ほらほら、スキル奪っちゃうけど、攻撃しなくて大丈夫なの?」
レッカはスタッフを構えて走り出すが、トトが目の前で翼を広げてそれを止めた。
トトが口を抑える。
「あら、案外賢いのね。それとも今だけ?」
「花粉が飛んでる。レッカ、大丈夫?」
「ありがとう、今、無効化した」
「残念。オレの花粉が効かないみたいねぇ」
シルフとセレナも口を抑える。
「テメェ……!」
「なにして、くれてるんですかぁ!!」
「戦いが終わるまでは気を抜かないこと。ご存知ないかしら」
触手が更に増える。二本、三本。音もなく講堂を覆い始める。
「それとも、分かってて出来なかった?」
不気味な笑いが講堂を響かせる。
城は、ダリアの支配下となる。レッカは、スタッフを振り上げた。




