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カウントゼロ  作者: Co.2gbiyek
2048bit
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27/28

テイキングオフ

 新たなネット網ではAIによる過剰なまでの浄化がなされる。悪意の存在を感じさせる余地さえ無くなってしまい、旧ネットとは逆の意味のウソで溢れかえっているように見えた。


 旧ネットに置き去りにされたままの私のSNSには炎上狙いで突っかかってくるバカがその腹いせのように無限に湧いている。


「この女、ルックスだけじゃ売れないから妙な手品を使ってフォロワー増やして荒稼ぎしているらしい」


「この女ってなんでこんなに信者いるの?」


「こいつ六本木のラウンジでみたことあるな」


「知ってる、顔しか取り柄が無いからすぐ枕するって聞いた」


「この顔で魔法少女?キャラ設定間違ってね?」


「こいつ本出してるんだな」


「何これ、このポエム買うやついんのかよwまじキメェww」


「こいつは現代の魔女だな」


「じゃあ狩っちまうか」


「いいね、オレもまぜろよ」


「あかりちゃん待っててねw」


 私のSNSはもうずっと更新していないし、更新する気もなかったけど、ここを見てしずくの会を訪ねてくる人たちもいるため消さずに置いている。


 今では長くなってしまった私の話をしずくの会が物語や教義にしてくれる。そして信徒がそれを目にすることができるように、出版社に勤める信徒がとても高価な材質を使って製本を行ってくれている。


 いくつか出版されている本の中でも私が最も初期から語っていた話をまとめたものはドグマと呼ばれている。


 バカの1人が製本されたドグマに貼り付けた私の写真を体液で汚す動画を投稿した。美しい純白の絹糸であしらったカバーとモデル時代の白いワンピースを着た私の写真。


 それを面白がったのは惰性で旧ネットをウォッチし続けている、暇で退屈していた中途半端なインテリ層だった。彼らは旧ネットに転がる有象無象の投稿を拾い上げて炎上させては実害を引き起こして楽しんでいる。


 バカはすぐに身元が特定され、大学のサークルで開いた飲み会の写真がアップされる。それでもなおバカな大学生は炎上に乗って配信を続けたため、一人暮らしのワンルームマンションのインターフォンが幾度となく押され、それが常態化していた。


 度重なる覚えのない宅配サービスや無言のインターフォンに激昂した大学生はインカメと金属バットを握ってとうとう玄関ドアを開けてしまう。


 そこに立っていたのは白いパーカーのフードを被り、サバイバルナイフを持った大男だった。


 事件後に逮捕されたのは、陸上自衛隊第1師団に所属する第1普通科連隊の21歳になる士長の大東信彦だった。大東はレスリング125kg級でインターハイ優勝の経歴を持つ189cmの大男だった。


 殺された大東と同い年だった大学生の遺体には40カ所以上の刺し傷や切傷だけでなく、右腕の肘から先がちぎれていたという。


 警察の取り調べに応じた大東は、しずくの会に対する冒涜行為が許せなかったと供述している。


 解剖と供述の結果から右腕の上腕動脈からの出血が直接の死因と断定された。つまりナイフの傷の大部分は死後につけたもので、生きたまま右肘から先を捻じきったのだという。


 彼には罪を償わせなければならない。自分は彼に罰を与えただけだと大東は静かに語った。


 それ以来、若い信徒を中心にオーバーサイズの純白のパーカーとスウェットパンツやスウェットのハーフパンツをセットアップで身につけるようになっていった。


 白のセットアップを着た信徒による裁きが度々行われている。これまでに殺人事件が3件発生し、小さないざこざは常に発生している。


 大東は償う必要のない罪を問われている。私たちのために動いた信徒に報いる必要がある。私はマスコミ、検察、政治家の信徒を使って各方面から強く圧力をかけ続けていた。


 私は私たち以外の事には興味がない。ただ、私は信徒が謂れのない罪で裁かれるのが許せなかった。この時は心の底からそう思っていた。


そして、大東が警察の留置所から法務省管轄の拘置所に移送される際に私たちは行動を起こした。


 麻布警察署の留置所から出た輸送車の前に白いパーカーを被った信徒4人が道を塞ぐ。前にいた1人の信徒がスウェットパンツのポケットから緩慢な動作でグロック19を取り出す。それから素早い動作でフロントガラス越しに銃を構えると前の座席に座る2人の警察官が慌てて手をあげる。


 警察官が反射的に手をあげたのは拳銃を構える動作とその後の眼光に圧倒されたからだ。


 4人は大東と同じプロだった。大東の事件を知って私に力を貸してくれている。


 後ろに回り込んだもう1人の信徒がパーカーのポケットから同じくグロック19を取り出して窓ガラス越しに構える。後部座席の2人の警察官も手をあげるのを確認すると、3人目の信徒がドアを指さして開けるようにジェスチャーで促す。


 後部座席の2人の警察官に挟まれるように座っていた大東が車から降りると4人目の信徒が用意していた車の方に先導する。大東はそのまま南麻布のイラン大使館に駆け込んだ。


 数日経っても、大東の件は一切ニュースにならなかった。


 それから私の近くに大東を置くようにした。しずくの会の広報サイトなどわざと人目にふれ易いところでは特に大東を連れて行くようにした。


 自分でもなぜそこまでこだわっているのか最初は分からなかったが、今でははっきりとわかる。大東は自立と実力行使の象徴だったのだ。


 私がやりたいと思ったことは必ずやり遂げる必要がある。しずくの会は有言実行できる私に期待している。私たちがより自由に振る舞うためには自立にとどまらない、「独立」を必要としていた。


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全然想像してなかった方向へ展開してきました。 驚きと不安。 固唾を飲んで注視しています。
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