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悪役令嬢 恋愛システムが破綻しました  作者: 南蛇井
第一章「設計された恋」

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第10話:公開反論

王城大広間。


高い天井から垂れる水晶灯が、白い光を落としている。


本日は特別公聴。


名目は――


“婚約候補停止措置に関する説明会”。


だが実際は違う。


見せしめ。


制度の正当性を示す場。


そして。


従わない者がどうなるかを示す舞台。


王太子は玉座の前に立つ。


その背後、聖女。


宝珠は穏やかに輝いている。


左右には貴族たち。


観測塔の術者も配置済み。


水晶盤が静かに波形を測る。


やがて。


名が呼ばれる。


「レディアナ=フォン=アルセリア」


大扉が開く。


彼女は一人、歩み出る。


飾りはない。


装飾も最小限。


だが視線は揺れない。


さざめきが広がる。


“停止処分中の身で”


“よく出てきたものだ”


王太子が口を開く。


「本日の場は、国家安定のための説明である。君の措置は、法に基づき妥当と判断された」


声は冷静。


だが内側には緊張がある。


レディアナは一礼した。


「ご説明、感謝いたします」


静かな声。


挑発も恐れもない。


王太子が続ける。


「王家には、国家安定維持の最終権限がある。調和婚姻法は、そのための制度だ。例外は認められない」


観測塔。


「会場安定」


「共鳴値、正常」


ここまでは予定通り。


王太子が言う。


「何か異議はあるか」


沈黙。


貴族たちの視線が集中する。


普通なら、ここで頭を下げる。


謝意を示す。


忠誠を誓う。


だが。


レディアナは顔を上げた。


「ございます」


空気が凍る。


水晶盤が微かに揺れる。


「王家が国家安定の最終権限を持つ。それ自体に異議はありません」


穏やかな導入。


貴族たちが頷きかける。


だが。


「しかし」


彼女の声は、静かに響いた。


「王族が法の上に立つなら、それは専制です」


一瞬。


完全な静止。


楽団の指が止まり。


水晶灯の光が揺れたように見える。


観測塔。


「感情波形、急変」


「緊張値上昇」


ざわめきが爆発する。


「無礼だ!」


「専制とは何事か!」


だがレディアナは続ける。


「調和婚姻法は、国家安定のための法と伺っています。ならば、その運用も法の枠内であるべきです」


王太子の視線が鋭くなる。


「今回の措置は“最終権限”による判断とされました。それは、法の解釈を王家が単独で決めたという意味になります」


静かな論理。


逃げ道を塞ぐ構成。


「もし王家が法を超えるなら、法は存在理由を失います。安定は、信頼によって支えられます。恐怖や強制ではありません」


聖女の宝珠が、一瞬だけ強く脈打つ。


観測塔。


「聖女波形、微細揺らぎ」


王太子の胸が熱くなる。


怒りか。


羞恥か。


それとも。


彼は言い返す。


「君は、王家の正当性を疑うのか」


「いいえ」


即答。


「王家の正当性は、法を守ることで保たれます」


会場が静まり返る。


レディアナは一歩前へ。


「今回の措置が、法的審議と公開手続きを経ずに行われたのなら。それは法の運用ではなく、権力の行使です」


水晶盤。


激しい波形。


だが。


彼女の波は、変わらない。


安定。


揺らぎなし。


王太子は初めて言葉に詰まる。


この場は、彼女を追い詰める舞台のはずだった。


だが今。


問われているのは自分だ。


彼女は最後に言う。


「私は処分を受け入れます。しかし、理由が法に基づくものであることを、公開の場で証明していただきたい」


「それが叶わぬなら――」


一瞬の沈黙。


「それは専制です」


言葉は柔らかい。


だが刃のように鋭い。


沈黙が落ちる。


観測塔。


「王太子波形、不整合」


「……乱れています」


聖女は息を呑む。


胸の奥に、かすかな疑問が灯る。


“法を守ることで保たれる正当性”


その言葉が、心に残る。


王太子は、ゆっくりと口を開く。


だが。


用意された台詞は出てこない。


代わりに浮かぶのは。


自分の署名。


王命干渉。


あれは、法だったのか。


それとも。


自分の執着だったのか。


大広間の空気は重い。


制度は揺れない。


だが。


その中核に、小さな亀裂が入る。


前半の対立は、


王子 vs レディアナ。


だが今。


構図は変わる。


制度 vs 自由意志。


そして。


王太子は初めて、


自分がどちら側に立っているのかを


考え始めていた。

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