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1-3 エーデルワイス~高嶺の花~ その1

挿絵(By みてみん)

偶然を装ったつもりだったが、まぁ、バレバレだろう。


表参道の花屋と言っても裏通りの住宅街にある店で、通りすがりに花を買うような店ではない。おそらくここらの得意先から注文を受けて届けるのが主な客筋のはずだ。

そんな店に「たまたま近くまで来たから寄ってみた」と言っても嘘くさいのは百も承知だった。


最近、香菜が花屋に通っていると言って忙しそうにしているので、もしやと思って来てみた。表参道なら店員はどんなチャラ男かと思ったが、愛想はいいが野暮ったいヤツで、二人が特別親密というようにも見えない。

ただガラス張りの店の中で楽しそうに話す彼女は、僕といるときとはまるで違う笑顔を見せているのが引っかかった程度。


上機嫌で店から出てきた香菜に声を掛けると、すぅっと笑顔が引くのが分かった。

驚き、戸惑い、迷惑…それらが入り混じった顔をしている。それもごく短い間で、彼女は礼儀正しく『偶然、恋人に出会った彼女』の笑顔をして見せた。


内心はバカにされているかもしれない。少し会えなかったくらいで浮気を疑って様子を見に来る小さいオトコ、と思われたかも。それでも来ずにはいられなかった。



共通の知人に「港区女子を紹介してやろうか」と言われた時は、好奇心と同時にちょっと面倒だなと思った。それこそ我儘で金遣いの荒いめんどくさい女の機嫌を取るなんて、物好きな男がやることだと思っていた。


しかし、香菜は本当のお嬢様だった。

お高く止まっているという意味ではない。

大人しく控えめだが、しっかりした芯の強さを感じる。それは所作の美しさ、言葉の端々の洗練された言い回しや教養の高さに表れていて、選ぶファッションもコンサバなのに古臭くなくむしろ個性的。遊びで付き合っていい女じゃないのはすぐにわかった。


僕の女の趣味が悪いのか、デートと言えばショッピングやカフェやワインバー、流行りの服やスィーツをSNSに乗せるからと写真を撮りまくり、なんなら銀座で寿司をおごれと言ってくる女ばかり。だが彼女はそんなことは一度だってない。

美術館や博物館、歌舞伎にクラシック、オペラ、彼女の好みに合わせると自分の世界が広がっていく。会うたびに緊張するけれど、それは心地よいものだった。


パッと見は地味な女だ。彼女の良さが分かるのは僕だけだろう。

なんて、まったくもってなんの根拠もない自信でうっかりしていたが、そうだ、いまこの瞬間にも奪われたっておかしくないじゃないか。


それとも僕は間違っているのだろうか。

香菜が求めているのはそんな細かい男じゃなくて、まったく別の…。


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