4-2 チェリーブロッサム~桜咲け~その3
繁忙期でなかったとは言え、2日も有給を使ったのはちょっと心苦しかったけど、会社に戻ると盛大に祝福された。デザイン部はみんなライブ配信を見ていてくれたようだ。
私は名古屋名物『カエルまんじゅう』を配りながら、ケンジが無事にカエル化しなくてすんだのを報告して回った。昔ながらのことだけど、女子の小さな不満は甘いものでたいてい解決する。なんにせよ、根回しは大事だ。
そして最後に、私は雪恵チーフの部屋に向かった。
「おめでとう、全国大会で受賞したんですって? これでフローリストとしてやってけるのかしら」
「一回きりではまだまだこれからですけど、自信にはなったと思います」
「あなたも嬉しそう」
「こんなに嬉しいなんて思ってませんでした。不思議な気分です」
「やっぱりあなたにはフィクサーが似合うようね。彼はあなたの作品ってところかな」
「作品って身も蓋もない。でも間違いなく自分のことより嬉しいですね」
雪恵さんにはお見通しだ。
確かに私は彼をそんな風に見ていた気がする。
二人で過ごす時間も好きだけれど、彼がどんどん成長していくのも楽しくて仕方ない。
「それで、これからどうするか決めたの?」
「はい」
「私はあなたの思うようにすればいいと思うけどね、会社とか私のこととかは気にしなくていいのよ」
「ずっと男運が悪いって言ってましたけど、私にも原因があって何がいけなかったのかわかった気がします」
「じゃあ、彼についていくのかな」
「いいえ、それはないですね」
「えっ」と私の言葉に雪恵さんは意外そうに首を傾げたが、すぐに気が付いたようだ。
「なるほど、それがあなたが決めたことなのね。後悔はしない?」
「問題ありません」
私は笑顔を返した。
後悔はするかもしれない。
でも私が決めたことだもの。
これはカエルが王子様になってめでたしめでたしのお伽噺じゃなくて、リアルに生きていく物語だから。




