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4-1 ガーベラ~挑む心~その3

3月の初め、春めいてきた頃、珍しく社内で雪恵チーフに呼ばれた。

軽い打ち合わせかと思ったが、彼女に思いがけない提案をされた。


「ちょっと確かめておきたいことがあって、カレシのことで」


ケンジのこと?


「そういうのは自宅で」


「いえ、仕事のことでね」


なんだか雪恵さんらしくない遠回しな言い方。

私、何かやらかした?


「そろそろ二人目を考えてるの」


二人目、なるほどそういうことか。


「おめでとうございます!」


「違うわ、これからのこと。年齢的にもそろそろリミットだし」


「あら、失礼しました」


「私としてはあなたにサポートして欲しいの、あのチームをまとめられる正社員はあなただけだし、しばらく私の代わりを務めてもらいたいんだけど」


「もちろんお手伝いします」


「でもあなたのカレシ、留学するとか言ってたわよね。一緒に行くつもり?」


「あーそれは」


うわぁ、ぜんぜん考えてなかった。

そもそも私たちは付き合っているの?

あれはカレシと呼んでいいのかしら。


けれど言われてみれば、いい大人の社会人だものそういうことも配慮しなきゃいけないよね。

さあ、どうしよう。


「まだそこまで話が進んでないので、具体的には考えてないんですけど」


「もちろん、あなたの好きなようにしていいのよ。あなたが無理なら他の手段を考えるだけのことだから。ただね、私のポジションの引継ぎは事務的なものだけってわけにはいかないでしょ。細かく教えておきたいことがあるから、それなりの時間は取りたいのよ」


「すごく光栄です、やりがいある仕事だと思います」


「いますぐどうって話じゃないわ。あなたの選択によっては私もスケジュール変えなきゃいけないから、考えておいて。それとね」


スケジュールって私の甥っ子か姪っ子のことになるわけか。

なんだか急にリアルになってきた。


「あなたは彼にずいぶん入れあげてるようだけど、ああいうお仕事って結局は自分の力次第よね、しかも努力が報われるとは限らない。あなたはそれをどこまで引き受けられるのか、どこまでの覚悟があって付き合ってるのかしら」


「もしかすると彼の努力は水の泡になるかもしれません。でもそれは、いざとなったら私がなんとか」


「まさか養ってあげるとか?」


「いえ、私は普通の花屋さんでも全然かまわないんです」


「それって彼が望むこと?」


言葉が出なかった。

私は思いあがってたんだろうか。


雪恵さんの言うことはわかる。

彼女はフォローアップする立場だから、最悪を想定している…と思うけど。

私は、私にできることって何?


思いあぐねているうちに、コンテスト本戦の日はやってきた。


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