2-4 クリスマスローズ~忘れてた人~ その2
もちろんその後の打ち上げでも私は有頂天。プレゼンを乗り切った解放感もあったし、雪恵さんにおだてられて、それこそ木に登ったサルのように上機嫌だった。
「さて、私はどうやって二股を見破ったでしょうか?」
居酒屋にデザイン部の女子6人が集まり、酔った勢いもあって私は鉄板自虐ネタを披露した。
「えー、なんか匂わせとかあったの?」
「匂わせどころか動かぬ証拠よ」
「クルマの中にピアスが落ちてたとか?」
「惜しい、クルマに盗聴器でした」
「っきゃー! さすが香菜ネエ、やるぅ」
予想通り、いちばんのリアクションいただきました!
「伊達にダメ男コレクターしてないわよ。超高性能のやつ奮発しちゃった」
「リアルにスパイファミリーってか」
自分でも不思議なくらい、タカシのことは笑い話にしても心が痛まない。
彼とは正式に別れたわけではないが、連絡があっても忙しいと言ってあれきり会っていなかった。忙しいのは本当だが、もう彼のために予定をやりくりする気力すらなく、さすがに脈がないのくらい気付いているはず。
いっそあのフカヒレラーメン女とお幸せにくらいの気分だ。
「でもさぁ、そこまで男運悪いってあるかなぁ」
「それって私が自らクズ男を選んじゃってるのかしら?」
「じゃなくて、香菜ネエはめちゃくちゃ優しいんじゃないの?」
「なにかやらかしても、一生懸命謝れば許してくれそうって思われてるとか」
「わかる~」「わかり味~」
「それは舐められてるってことでしょ」
「菩薩のように心が広いとか」
「違うわよ! ぜんぜん心狭いんですけど」
「そう思われてるだけってことかな」
「待って、それじゃ私はダメ男製造機だった?」
「男は優しくし過ぎるとつけあがるってことだね」
みんなが揃ってうんうんと頷いた。
年下の先輩軍団に言われるまで気付かなかったが、確かにそれは一理ある!
「次からはもっと厳しくした方がいいよ」
(次なんて、もう当分ないケド)
「そうそう香菜ネエはもっと高めに設定したほうがいいって」
「ケバいだけの港区女とはわけが違うんだから」
仕事どころか男のことまで年下にアドバイスもらうなんて、私ってそんなに恋愛偏差値とやらが低いのだろうか。
(イタすぎではないか?)
「いいじゃない、その分『女運』はいいんだからさ」と励まされる始末だ。
(とは言えさすがに1万円で捨てられたなんて話はドン引きだよね)
あの朝のことは思い出すだけで泣きたくなるし、とても笑い話にはできそうにないから早く忘れたいのに。
(神様、私にお仕事たくさんください。嫌なことみんな忘れられるくらいに)
いまはただ仕事が忙しくなるように願うのみだった。
そしてその願いは叶った。
一カ月後マリリンは意気揚々とイタリアへ旅立ち、その穴埋めに入った新人はグラフィックデザインが得意な人で、マリリンの仕事はほぼ私が引き継ぐことになった。超速で仕事をこなしていたマリリンには及ばないけれど、いまのところギリギリながら仕事は回っている。
佐山社長には何故か懐かれていてときどきお誘いのメールが来る。やっぱり私には『強引に押せばなんとかなりそうなオーラ』が出ているんだろうか。ちょっとムカつくがそれは堪えて丁重かつキッパリとお断りした。おぢの相手なんかしてる暇ないって。




