2-4 クリスマスローズ~忘れてた人~ その1
^_^ソレデ、ナンデワタシハイマ、カベドンサレテイルノカナ?
プレゼンが終わって会議室を片付けていたら、ひょっこり佐山社長が戻って来て「僕のペンが落ちてない?」なんて見えすいたこと言って、「ねぇねぇ香菜ちゃん」と馴れ馴れしく近寄ってきた。そして壁ドン。
(舐められてる)
クライアントの立場を利用してセクハラ、本当にこういうことってあるんだ…と私は妙に冷静だった。
それにしても壁ドンでドキドキするのなんてJCとかJKでしょ。私を幾つだと思ってんのよ!
「今日のプレゼンすごく良かったよ、うちに欲しい人材だなぁ」
「ありがたいお言葉です」
「今度じっくりお話したいんだが、社長面接なんてどう?」
さあ、どうしてくれよう。
プレゼン全部ひっくり返すの覚悟で蹴っ飛ばしてやろうかしら。
「ここ、防カメ入ってますよ」
「え?」
ひるんだところでするりと体をひねって壁際から抜け出した。
「まさか、ウソでしょ?」
「さあ、どうでしょう」
「はいはい、そこまで。佐山さん、奥様に怒られますよ」
雪恵チーフが戻って来てくれた。というより最初から見てたのかな。
「雪恵ちゃん、ここまでがセットでプレゼンでしょ」
「バラエティのお約束みたいなこと言わないでください。会社の方が探してましたよ」
「香菜ちゃん、いや逢沢さん。僕はけっこう本気なんだよ~」
「御社に広告デザイン部はありませんよね」
「逢沢さんはデザインもいいけど、総合的な判断力があると思うんだ。プロデュースとか闇のフィクサーとか。コストや費用対効果の計算がとてもしっかりしてたし、締め切りをきつめに設定したのに分業制で乗り切ったよね」
(闇のフィクサーって褒めてるつもり? 分業にしたのは私が仕事が遅いせいだけど)
「あら、ずいぶんお目が高い。でも彼女はうちの秘蔵っ子なんで差し上げるわけにはいきませんわよ」
秘蔵っ子! 雪恵さんの素敵な言葉に私は最上級のニヤケ顔をしていたと思う。おかげで社長を蹴っ飛ばさず、にっこり笑顔で送り出すことができた。
社長、雪恵さんに感謝してね。




