2-3 ストレリチア(極楽鳥花)~自由~ その1
あれ? 『自由』ってなんだろ。
改めてデザイン部の中を見回してみた。もちろん制服なんてないから好みのファッションだし、推しグッズでデスクが自己主張してるし、ときどき体をほぐすためか踊りだす人いるし、ホントにみんな自由。でもコレは個人の自由だよね。
AIに訊いてみようか。
「もっと自由でユニークなのないかな?」と。
でもAIは膨大なデータから最大公約数を見つけてしまいがち。
だめだめ、ここで余計なこと考え出すとどんどん自由じゃなくなっちゃう。『考えるな、感じろ』ってやつ、たぶん。それを私は形にしなくちゃいけないってわけだ。
とりあえず5パターンのラフを用意して3パターンに絞ることにした。通常業務の間にやるからちょっときついけど、それでもいち早くAIを導入してくれているので、仕事の効率はとてもいい。とくに総務にはなかった生成AIが使えるのは助かるし、すごく楽しい。
私が作ったデータをマリリンとシノアに見せて意見を聞いたのだが、二人とも「ありっちゃあり」とか「もっと弾けてもいい」とか言ってくれるけど具体的なことは何も。
『弾ける』かあ…。
どうしよう、若い子向けの動画でも見てみようか。
でもそっちにすり寄るのは違う気がする、クライアントは企業イメージと言っているし。
私はなるべく定時に上がって、演劇や落語やイベント、地下アイドルのライブまで見に行った。いままで私が見なかったモノ、そこに答えがある気がする、なんとなくだけど。
「あなたの感性は僕には眩しいくらいです」
ああ、また不意打ち。
迷うといつもあの人の言葉を思い出す。
優しさも笑顔もみんな嘘でいいから、あの言葉だけは本当であって欲しい。私は思うままに進んでいいんだよね。
1週間後、先輩や雪恵チーフの了解が出た3本のラフを先方の担当者に送ったら、なんとデータを送って数時間でレスポンスがあった、早っ!
しかも来週には社長も一緒に行くから詰めといてって、ほんとに会いに来ちゃう社長なんだ。
「じゃ、私も参加するわね。決戦は?」
「水曜日です」
雪恵さんに報告に行くとすぐにスケジュールを調節してくれた。佐山社長のお目当ては雪恵さんだろうから是非とも出席してもらいたい。
「今回は合格点より面白いかどうかが勝負よ」
「はい」
「背筋を伸ばして」
「あ、丸まってました?」
「1メートル先を見て歩いて、歩幅を50㎝ほど広く」
急にロングヘアの元パリコレモデルみたいなことを言い出したので、少し笑ってしまった。
「そう、口角を上げて歯を7本見せて、ハリウッドスマイル。ところで時間が少ないけど大丈夫?」
「なんとかします」
「アイデアはできてるから、あとは見せ方でしょう。先輩たちを頼っていいのよ」
「でも、みなさんお忙しいのに」
「あなたが3日かかることを彼女たちは1日でできる。大した負担じゃないわ」
悔しいけど確かにそれくらいの差はある。
「チームなんだから甘えちゃいなさい。あなたは不満かもしれないけど、ささやかなプライドより締め切りの方が大事でしょ」
「はい、そうですね」
自分では謙虚にしているつもりでも、どこかで負けず嫌いがバレてしまったかもしれない。私は心の中で舌を出した。
「いい兆候だわ。仕事に欲が出て来たってことはステップアップのチャンスよ」
上手い言い方するなぁ、下げたり上げたり。これは頭のどこかにメモっておこ、なんか使えそうな気がする。
「私、けっこう欲深いですよ」
「そうこなくちゃ、この3プランで推しはどれ?」
「B案です」
「なぜ?」
「いちばん儲かります」
「じゃ、見せる順番変えようか。あのオジサマはああ見えて費用対効果もうるさいからね。健闘を祈る」




