第四話 凱旋
水の都に来て早々、水神という十大神の五柱であるカーヴァリオンに会えるとは思いもしなかった。
なんかもっと、色々な経験をした上で格上の人と出会う展開になるかと思っていたが....思いっきり観光してた気がするんですけど!!?
蒼海騎士団という騎士団が大衆を左右に開けさせ、水神が通る道を確保しているようだ。
お、なんだか盛り上がってきてないか?
多くの人たちが誰かを見るように視線を寄せていたので、俺もそっちを向いてみた。
「わ、わぉ...」
ゾクッときた...水神だと思われる人...いやてか水神だと一目見て分かる、あいつと戦ったら死ぬ...と俺の本能が言っている。
キラキラと輝く青白い羽織りを着ており、顔には海の色をする鱗?みたいなのがちょくちょくあるのが分かる。
水神の後ろに護衛らしき人が2人いた。
貴族みたいな服を着ているし、神としての威厳がありまくりだぞこりゃ。
てかなんで周りの人達はあんなに喜んでいるのだろうか...怖くないのだろうか...いや、水の都を守っている人だ、そんな守護神的な人に怖がったら失礼か。
俺がおかしいだけか。
「楽白、大丈夫か?顔が怖いぞ。」
「え?あ、ぁあ大丈夫大丈夫。」
やべ、顔に出てたか、白月も怖がっているような様子ではなさそうだな。
あれが、十大神か...あんなのがあと9人もいると考えたら、正直怖いけどワクワクもする。
突如、身体が震え上がった。
何故だ、何か目線を...
「....」
水神...?なんか見てたような気がする。
いや、たまたまだろう。
俺みたいな無名を意図的に見るはずがないはず。
凱旋の行進を大通りで済ました後、水神は蒼海騎士団と共に宮殿みたいな所へと向かうのであった。
「良いもんが見れたな楽白。」
「う、うん..けどちょっと怖かったかも。」
「そうなのか?まぁ、見た目があれだしな..怖い人もいるよな。」
やっぱり、白月は水神を怖がってなどいなかった。
喜んでもないし、平常心を保っていて白月らしいな、と思った。
てか、さっきの騎士団の誰かが凱旋とか言ってたよな。
水の都の外で何をしていたんだろうか。
凱旋とか言ってたから、亜龍種みたいなのを倒してきたのかもしれん。
「ねぇ白月、水神は何をしてきたんだ?」
「さぁな...情報が公に公開されてないからな。」
結構大事なことだったりするのだろうか...うわぁ、気になるッッ!!
ま、この世界の強者の中の強者がどんななのかは分かった...関わりたくはないな!うん!下手に関わったら俺が死ぬ!!
周囲の人々が水神の凱旋を見送ったのち、店のところへ戻ったり買い物の続きをする人もいた。
...意外とあっという間だったな。
怖かったこともあったが、十大神がどんな感じか見れて十分だ。
俺もいつかは十大神になって...二ヒヒヒ。
腕を組みながら、妄想を膨らしながらニヤニヤしていた俺であった。
色んなことを頭に思い浮かべていたが、白月に特に大通りでやることはないとのことなので、白月と適当に水の都を歩くことにした。
どうやらもう、水の都に用はないらしい。
あとは適当に観光をして水の都からおさらばをするつもりだったのだが.....
「そこの君たち、通行証を見せて貰えないかね。」
灰色の羽織りを着ている人に声を掛けられた。
ん?通行証...?なんだそれは。
俺は思わず、頭を傾げた。
白月の方を向いてみると、おやまぁなんてことでしょう...めっちゃ慌ててるではありませんか。
まさか、水の都に入る前に通行証を見せる必要があったとか言いませんよねぇ?
「あ、えっ..えっと...」
めっちゃテンパってるぞこの人。
まさか、白月...そんな事も知らずに俺と共に水の都へ行ったではあるまいな。
ー時は遡ること、水の都へ入る前のことだった。
「白月ーこのまま入っても大丈夫なの?」
「ぁあ特に問題はないぞ...あれ..まぁいいか。」
「..?どうかした?」
「いや、なんでもない、さっ早く行こうぜ。」
特に問題はない...そう言っていた。
絶対忘れてたなあの人!!
「まさか、持ってないとか...言いませんよね?」
「いやまさかぁ.....」
ダメだ...詰みだろこれ。
ってことは...
「はぁ...持っていないようだな、留置所まで来てもらおうか。」
「"え"」
ですよねー。
HAHA...白月何してんだよおおおおお!!!
「え、俺たち捕まるの...?」
「ス、スマン...楽白...通行証必要なの忘れてたぜ....」
汗を垂らしながら謝ってきた。
本当に忘れてたんだな....
転生して3日目でこうなるとは...トホホ...
「ほら、その刀危ないからこちらで預かっておく」
「は、はい...」
こうして俺たちは警備の人に連れていかれ、留置所に収容されることになった。
ははは...なんでこうも俺はこんなことに巻き込まれるだろうか...俺はもっとファンタジーみたいなことを出来ると思ってたのに....
「お前らの名前を言え、あとここに来た理由と目的...他諸々も話してもらう。」
うわぁ...めっちゃ面倒くさそうだぞ。
前世でも本当に意味あるのか?ってくらいのことを言わなきゃいけないし...そことは似てるかもな。
渋々ながらも一つ一つ教えることにした。
こりゃあまた大変で、体感でもう1時間は経ってるぞ。
白月が申し訳なさそうにこちらを見てきた。
まぁ仕方ないよね...俺もウッキウキで水の都に突っ走ってたんだし...haha。
「楽白は...あまり分からんが白月は分かったぞ。お前、月聖のとこの人間だったとはな。あんなところで育ったならこんなことにはならんだろ普通。」
月聖...?それってすごいのか?まぁ、そこまで言うんだし凄いんだろうけどさ。
白月って結構裕福なとこの家系だったりするのだろうか..銀べェール250枚分の刀を買ったりと、ただ者じゃないとは思ってたんだけどね?
てか、助けてくれた時の時から思ってたんだけどもっ!
「そして楽白...お前、どこ出身だ。」
「え、えーと....」
「なんだ?自分の出身知らねぇってか?」
やっべ、俺どこ出身なのか分かんねぇぞ...山で育ちました!って言えるわけないし...下手に答えたら疑われるだろうな。
「...まさか、ドラグゼオン大陸の棒龍族じゃねぇよな?」
「..!!こいつがそんなわけないだろう!」
おぉ、白月が怒った...優しい人ほど怒ったら怖いってのは本当だったんだな。
てか、ドラグゼオン?棒龍族?また知らない単語が出てきおったぞ。
「落ち着け、まだ確定した訳では無いだろう。」
「...念の為、検査させてもらうぞ?」
白月が俺の方を不安そうに見てきた。
そんなに棒龍族ってのは危ない存在なのか?てか、多分俺はそんな種族ではないだろう。
少し席を外した警備員が、何かを持って戻ってきた。
本みたいな何か...まさか魔導書みたいなやつか?
「今からお前が棒龍族かどうかを判別する。じっとしとけよ?」
「お、おう...」
とりあえず指示に従うことにした。
無理に反抗したらもっとこの状況が悪化しそうだからな。
警備員が魔導書らしきものを開き始めた、何が行われるのだろうか。
突如、俺が座ってるところに魔法陣が出てきた。
おぉ、初めて生で魔法陣みたぞ!こんな感じなんだなぁ..!....って!今そんな喜ぶ時じゃないでしょうが!!
特に、俺に害は無さそうな魔法陣だ...棒龍族かどうかを識別する魔法陣なのだろうか...
警備員は魔導書みたいなのを険しい顔でじっくり見ていた。
そして魔法陣が解除され、魔導書みたいなのをパタンっと閉じた。
「とりあえずお前は棒龍族ではないことがわかった。」
白月はホッと一息ついた。
俺も心のどこかで安心していたようだ。
「だがな、通行証が無ければ水の都には居られんぞ。」
「あ」
そうだった、通行証が無くてここに連れてこられたんだった...
棒龍族のことで話がいっぱいだったぜ。
てか、通行証はどうやって手に入れれるんだ。
市役所みたいな所で作ったりするのだろうか...いや、市役所みたいなのがそもそもあるのか?
とうとう詰んだかな..と思っていた頃に誰かが来たようだ。
「ガルダス殿、こっからは私がこの人たちの相手になるから、君は少し休んでいるがいい。」
「こ、これはこれはアヴェッサさん...ですがよろしいのですか?水神様の護衛をしていたはずでは..」
「さっきエヴが引き継いでくれたから、少し暇になってね。」
こ、この人は...水神の護衛をしていた...単純に暇でここに来ることがあるか?
なにか狙いがあるはず...
「ささ、3人だけにしてくれ。」
「は、はぁ..分かりました。」
ガルダスとかいう名前だっけか...その人がアヴェッサという人の手に押されながら部屋から退出した。
「や、こんにちは。俺は蒼海騎士団の副団長を務めるアヴェッサという者だ。」
「ふ、副団長ッ?!」
ワオ...まさかの副団長だとは...尚更ここに来た理由が分からん。
「はは!そこまで驚く人がいたなんて...笑えちゃうねぇ。」
「な、何しに来たんだ。」
お、白月が質問してくれた。
俺もそれ気になってたところっ!
「んー、とある人から君たちのことを調べて欲しい...という頼み事が俺のとこに来てね?そしたら都合良く留置所に君たちがいたから直接聞くことにしたってわけ。」
調べて欲しい...?誰にだろうか...白月はともかく、俺を調べてもなにも得とか無いだろうに。
調べて分かったとしても山で過ごしていたぐらいだろうな。
「別に君たちのプライベートの話とかは聞くつもりは無いよ?まぁ、とりあえず聞くね。」
「まず...白月だっけ?君は何処で楽白という人と知り合ったのだい?」
「え、えーと...山奥の川で黒族に殺されかけていたところを助けて知り合った感じですかね。」
なぜ俺と知り合った理由を聞いたのだろう...別に知っても意味は無さそうだが...
「そっか、うん分かった。んじゃ次楽白、君に聞くね。」
アヴェッサは椅子に座って両肘を机につき、交差させた指の向こうから俺を見据えた。
「君は、死神という人物に出会ったことはあるかい?」




