伊藤課長招き入れる
玄関を開けると私服の鎌田が立っていた。
「夜分にすみません。ちょっとよろしいです?」
鎌田がいつもの礼儀正しい感じで言った。
「あ、ああ。まあとりあえず上がれ」
もしもこんな所で告白でもされては大変だ。俺は鎌田を部屋に招き入れた。
「ビールでいいか?。それともコーヒーかお茶でも?」
飲みかけのビールを取り、紙切れの有る部屋の扉を閉め鎌田をリビングのソファに座る様に促しながら聞く。
「あ、お構いなく」
鎌田が返す。こいつは少し年下だが上下関係はキッチリしてるし、俺よりも真面目だ。仕事もしっかりして好感が持て、信頼もしている。
「聞こえたか?。ビールか他か聞いたのだが」
そう言うと鎌田は笑って「すみません。じゃあコーヒーを」
と言った。
俺はコーヒーを出しながら向かいに腰掛ける。
「で、どうした?。こんな時間に」告白でもされるかと変に緊張しながら訊ねた。
鎌田は少し考えた後に言った。「今日の課長の様子があまりにおかしかったので気になって・・・。具合悪い感じでは無かったですが、今日戴いた書類も幾つか不備も有りましたし、普段の課長からは絶対に有り得ない事なのでちょっと心配で・・・」
「すまない。書類は大丈夫か?」
「あ、はい。私の方で処理しときました」
仕事が疎かになるとは・・・俺は猛省した。
「有難う。・・・・・・・・・それで後は?」
それだけではないだろうと思い切って訊いてみた。紙切れの事になったら返事も持ってないのにとりあえず訊ねてしまった。
「え・・・?。後は特に要件は有りませんけど。・・・課長、ホントにどうしました?。大丈夫ですか?」
キョトンとした顔で鎌田がこちらん覗き込む。
え・・・?。あれ?。紙切れの主はこいつじゃ無いのか?。頭の中がフリーズする。
「あー。ちょっと待ってくれ」
頭をの中を整理する。紙切れの件はいいのか?。様子を見てるだけ?。それともこいつは関係ない?。
色々な事を考えてると目の前に鎌田の顔が有った。心配そうに俺の顔を見つめている。俺はドキッとし顔を赤らめる。
「いや、ではこれは一体・・・」
と、紙切れを見せようと思った時に気が付いた。
―――――こいつの字じゃない。
冷静に考えればすぐに普段の書類の字と違うと気が付いた筈なのに、やはり動揺しているのだろうか。
俺は少し考えこいつに話してみようと決意し、深呼吸をして一息つき思い切って切り出した。




