第39話 令嬢たちの共謀サロン
帝都第一区「光輪地区」の午後。ヴァレンヌ公爵邸の庭園には、手入れの行き届いた白薔薇が幾何学模様の生垣に沿って整然と咲き誇り、秋の柔らかな陽光が白大理石の敷石を穏やかに温めていた。
外界の煤煙も、歓楽街の爛れた喧騒も、煙突街の泥水も、この完璧な聖域には一滴たりとも届かない。
だが、その広大にして豪奢な邸宅の三階、東翼の最も奥まったクラリス・ド・ヴァレンヌの私室サロンには、張り詰めた硝子細工のような不穏な沈黙が満ちていた。
部屋の中央に置かれた円卓には、最高級のマイセン磁器のティーカップが並び、淹れたてのアッサム紅茶から立ち上る湯気が、室内に白檀の香油と混ざり合った甘やかな香りを漂わせている。
卓上には、金箔で装丁された分厚い書物が数冊、無造作に開かれていた。
聖歌庁が公認した神学書『調和なる秩序の美』、そして宮廷詩人による無味乾燥な典礼詩集。
表向きの口実は、名門貴族の令嬢たちによる「私的読書会」。
月に二度、高位貴族の息女たちが集い、淑女としての教養を深め、神の調和を讃える詩を静かに輪読するための、極めて健全で無害な社交行事のはずだった。
集まっていたのは、クラリスを含めて七名の若き令嬢たち。
ロシュフォール公爵令嬢エレオノール、ベルテ伯爵令嬢セシル、近衛騎士団長の長女マリー、宮内卿の息女アンリエット――いずれも帝国の中枢を担う大貴族の直系であり、十六、七の年頃を迎えた花のような少女たちだった。
誰もが淡いペールトーンの絹やレースのドレスを纏い、コルセットで極限まで締め上げられた細い腰を伸ばし、一糸乱れぬ姿勢で腰掛けている。
だが――開かれた詩集のページをめくる彼女たちの細い指先は、氷のように冷え切っていた。
「……ねえ、エレオノール様」
沈黙に耐えかねたように、ベルテ伯爵令嬢のセシルが、ティーカップに触れることなく掠れた声を漏らした。
栗色の巻き毛を豪奢な真珠のピンで留めたセシルは、まだ十七歳になったばかりの可憐な少女だった。だが、その瞳の周囲には濃い隈が落ち、血の気が失せていた。
「お聞き及びかしら。……わたくしの婚約が、今朝、父と親族会議の手で正式に調印されてしまいましたの。お相手は……北方辺境の侯爵閣下。わたくしの父よりも年上で、すでに二度の先妻を亡くされている方ですわ」
「セシル様……」
ロシュフォール公爵令嬢のエレオノールが、痛ましげに息を呑んだ。
「一度もお会いしたことすらございません。ただ、ベルテ家の領地を流れる鉱山鉄道の利権と引き換えに、わたくしが北方の城へ送られるだけ……」
セシルの声が震え、テーブルクロスの端を握りしめた指の関節が白く浮き上がった。
「泣くことすら禁じられましたわ。『家門の繁栄のための器として生まれたのだから、神の調和に感謝して微笑みなさい』と、母に頬を打たれました。……わたくしたちは、一体何なのでしょう。感情を持たない人形として育てられ、見知らぬ殿方の家畜として売り飛ばされるためだけに、この喉を押し殺して賛美歌を歌わされてきたのでしょうか」
吐露された絶望。
だが、それはセシル一人の悲劇ではなかった。
隣に座るマリーも、向かいのアンリエットも、誰もが俯き、唇を噛み締めていた。
ある者は三十も年の離れた軍閥貴族の後妻に、ある者は一度の会話すら交わしたことのない放蕩息子の借金の担保に。
帝国の身分制度という名の巨大な歯車の下で、彼女たちの意思や感情は、埃ほどの価値も認められていなかった。
聖歌庁が強いる「感情を排した無菌室の美徳」とは、要するに、彼女たちから反抗の意志を根こそぎ去勢し、従順な家畜として飼い慣らすための精神的な首輪に過ぎなかったのだ。
「……セシル様。エレオノール様」
静かな、鈴を転がすような声が、重苦しい空気を切り裂いた。
上座に座るクラリス・ド・ヴァレンヌが、ティーカップをソーサーに戻した。
カチリ、と硬質な磁器の音が落ちる。
令嬢たちが一斉に顔を上げ、クラリスを見つめた。
「もう、そんな退屈な嘘を並べ立てるのは、おやめになりませんこと?」
クラリスは立ち上がった。
卓上に開かれていた聖歌庁の神学書『調和なる秩序の美』を、指先で無造作にパタンと閉じる。
その背筋は凛と伸び、サファイアの双眸には、かつて大聖堂で息を詰まらせていた頃の怯えなど微塵も存在しなかった。
彼女は部屋の入口へと歩み寄り、扉の前に控えていた専属侍女のアンヌに頷いた。
「アンヌ。閂を下ろしなさい。……外の回廊に、信頼できる護衛を二名立たせて。誰であれ、父様やお兄様の使いであろうと、この部屋へ一歩たりとも近づけてはなりません」
「かしこまりました、お嬢様」
ガチャン、と。
重厚な真鍮の閂が、内側から厳重に下ろされた。
さらにクラリスは、窓のドレープカーテンを両手で引き絞り、午後の光を完全に遮断した。
室内の光源は、暖炉の炎と、壁の真鍮ブラケットランプの琥珀色の灯火だけになる。
外界から完全に切り離された、秘密の密室。
「ク、クラリス様……? 一体、何の真似ですの……?」
エレオノールが戸惑い、眉をひそめた。
クラリスは答えず、マホガニーの豪奢な蓄音機が置かれたサイドテーブルへと歩み寄った。
彼女は机の引き出しから、ひとつの薄い包みを取り出した。
包んでいた絹の布が解かれる。
現れたのは――正方形の、厚手のクラフト紙のスリーブ。
漆黒の背景に、挑発的な「真紅の唇」。
そして、その口元を縛っていたはずの白銀の鎖が、火花を散らして無残に引きちぎられている、あのジュディット・モレルが仕立てたジャケット。
「なっ…………!?」
それを見た瞬間、セシルが短く悲鳴を上げ、扇を取り落とした。
マリーとアンリエットが息を呑み、椅子を引いて立ち上がりかける。
「そ、その絵柄は……!」
「クラリス様、正気ですの!? 街の高札に出ておりますわ! 聖歌庁が全土で所持を禁じた、あの悪魔の歌姫の……!」
「ええ、そうですわ」
クラリスは微笑み、スリーブの中から、鏡のように磨き上げられた黒い円盤――魔導レコードを、惜しげもなく引き抜いた。
深海のような濃紺と漆黒の盤面。
幾千本もの微細な溝が、青白い魔導の残光を宿して仄暗い室内に輝いている。
「あの日……歓楽街の〈アリーナ・ノワール〉で、皆様も二階の仮面の奥から、その耳でお聴きになったはずですわ。……そして今、この帝都の街中で、教会の銃剣の手を逃れて響き渡っている、あの唯一無二の歌声を」
クラリスは円盤を、蓄音機の回転台の上へと静かにセットした。
カチリ、と留め具が噛み合う。
彼女は令嬢たちを振り返り、その瞳の奥を、逃れようのない強烈な光で見据えた。
「セシル様。エレオノール様。……神の調和を讃える詩を読んでいれば、あなたを売ろうとするご両親の心が動くとでもお思いですか? 従順に微笑んでいれば、いつか誰かがあなたの手を引いて、この息の詰まる檻の外へ連れ出してくれるとでも?」
令嬢たちが息を詰まらせる。
クラリスの言葉は、彼女たちが心の奥底で最も見ないように塞いできた傷口を、容赦のない刃で抉り取っていた。
「誰も助けてなどくれませんわ。殿方も、教会も、神ですらも。……私たちを救うことができるのは、私たち自身の怒りと、自分自身の足で立ち上がる意志だけです。……お聴きなさい。この小さな黒い板に刻まれた、私たちの真実の産声を」
ジィィィィィ……。
クラリスは蓄音機のハンドルを回し、ゼンマイを巻き上げた。
レバーが倒され、黒い円盤が音もなく滑らかな回転を始める。
そして――水晶の再生針が、外周の溝へと、そっと落とされた。
プチッ、パチパチ……。
静寂を裂く微かな摩擦音。
令嬢たちが息を呑み、胸元を押さえて硬直した、その刹那。
『――ズッ、チャッ、ズズッ、チャッ――!!』
「ッッ――!?」
真鍮のラッパの奥から、豪奢な私室の空気を根底から叩き割るような、ピアノの重低音が炸裂した。
ノア・カレヴィの叩きつける、凶暴極まりないスロー・ブルース。
オルレアン帝国の最高峰、ヴァレンヌ公爵邸の無菌室に、地底の泥水をぶちまけるような不協和音の濁流が雪崩れ込む。
絨毯が震え、マホガニーの卓上が共振し、ティーカップの中の紅茶が小刻みに波紋を打つ。
そして――。
『――WELL, YOU LOCKED THE DOOR, BUT YOU CAN'T STOP THE RAIN!!』
大気そのものが、炎を噴き上げた。
「あ…………っ!」
セシルが両手で自らの口を塞ぎ、その場に崩れ落ちるように椅子にしがみついた。
エレオノールの瞳が大きく見開かれ、マリーの肩が目に見えるほどの激震を伴って跳ね上がる。
耳から入ったのではなかった。
彼女たちのコルセットで締め付けられた肋骨を、華奢な胸骨を、心臓を包む肉の壁を、直接見えない巨大な衝撃波が貫通したのだ。
裏声ではない。
頭蓋骨の空洞だけで綺麗に響かせる無機質なソプラノとは対極にある、生々しい肉体そのものの重み。
声帯のエッジが擦れ合い、微かな歪み(オーバードライブ)を含んだハスキーな絶叫。
半音下へと気怠く滑り落ちるブルーノートが、彼女たちの脳髄の芯を、針で刺すような痛烈な快感で痺れさせていく。
『――I GOT A FIRE IN MY THROAT, BURNING THROUGH YOUR PAIN――!!』
ラッパから吐き出されるその声は、歌というよりも、檻を破ろうとする野獣の咆哮だった。
痛みを隠すな、と叫んでいた。
理不尽に耐えて死んだふりをするな、と吼えていた。
どんな泥水の中に突き落とされようとも、どんな鉄の鎖で縛られようとも、生きている限りその喉を鳴らし、世界を呪い、自らの足で立ち上がれと――一人の少女の血の記憶が、豪奢なサロンを満たしていく。
「う……っ、あ……ああ……っ」
セシルの唇から、耐えかねた嗚咽が零れ落ちた。
止めどなく溢れ出る涙。
大粒の雫が頬を伝い、膝の上の淡いピンクのシルクドレスに、濃い染みを作っていく。
セシルだけではなかった。
エレオノールも、マリーも、アンリエットも、全員が顔を手で覆い、肩を激しく波打たせて号泣していた。
呼吸が乱れ、コルセットの隙間から熱い息が喘ぐように漏れる。
喉が熱かった。
全身の血管に、熱湯のような血液が一気に逆流していく。
これまで「淑女の美徳」として押し殺してきた怒り、恐怖、屈辱、そして自分自身の人生を生きたいという狂おしい渇望のすべてが、レアの一撃の絶唱によって白日の下に引きずり出されていた。
曲のラスト。
レアの限界突破のロングトーンが、サロンの天井を突き破らんばかりに響き渡り、やがて静かに、余韻を残して途絶えた。
カチ。
針が外れ、蓄音機が止まる。
静寂が、部屋に戻った。
暖炉の火が小さく爆ぜる音と、令嬢たちの荒い呼気、そして堪えきれない啜り泣きだけが、暗がりの中に落ちていた。
誰も口を開かない。開けない。
一度この生身の魂の叫びを浴びてしまった肉体は、自分たちがこれまで信じ込まされてきた世界のすべてが、いかに浅ましく、いかに死に絶えた欺瞞であったかを、痛烈に理解してしまっていた。
その涙の海の中心で。
クラリス・ド・ヴァレンヌは、静かに歩み出た。
彼女は卓上へと進み、号泣する令嬢たちの顔を、一人ずつ見つめた。
その瞳には、憐憫など欠片もなかった。
同じ地獄を生き、同じ鎖に繋がれ、そして自らの手でその鎖を引きちぎろうとする者だけが持つ、熱烈な連帯の光。
「……皆様。いつまで、顔のない人形として生きるおつもりですか?」
クラリスの声が、静まり返ったサロンに凛と響いた。
「言われた通りの服を着て、言われた通りの男に嫁ぎ、言われた通りの賛美歌を歌って死んでいく……。それが本当に、神が私たちに与えた運命なのでしょうか? ……違いますわ。私たちは、誰かの所有物になるために生まれてきたのではありません」
クラリスは蓄音機の上の黒い円盤を指差した。
「彼女をごらんなさい。煙突街の泥水の中で生まれ、大聖堂を追い出され、劇場を奪われ、教会の銃剣に包囲されながら……彼女は誰の庇護も求めず、誰の愛人にもならず、その喉一つで世界を殴り倒し続けています。……彼女の歌は、ただの娯楽ではありません。私たちの自由そのものですわ」
クラリスは両手を広げ、令嬢たちに向かって力強く宣告した。
「彼女が歌い続ける限り、私たちは絶望しなくて済む。彼女がこの帝都の夜に吼え続ける限り、私たちは、自分たちの足で生きる希望を失わずにいられるのです。……ならば、私たちは何をしているのですか? 温室の中で涙を流し、誰かが助けてくれるのを待つだけの、哀れな小鳥のままで終わるおつもりですか!?」
痛烈な問いかけ。
その言葉が、令嬢たちの胸の奥底で燻っていた炎に、決定的な火を点けた。
「……嫌ですわ」
最初に顔を上げたのは、婚約に絶望していたセシルだった。
彼女は涙を手の甲で乱暴に拭い、立ち上がった。
その瞳から、怯えの色は完全に消え去っていた。
「人形のまま、北方の城へ売られるなんて……絶対に嫌ですわ! わたくしも……戦いたいです! あの子のように、わたくし自身の人生のために!」
セシルは震える指先で、首元に手をかけた。
母から譲り受けたという、大粒の真珠のネックレス。
彼女は躊躇うことなく、その留め金を外した。
そして――。
ジャラッ、と。
マホガニーの卓上、神学書『調和なる秩序の美』の表紙の上に、その高価な真珠の首飾りを叩きつけるようにして放り出したのだ。
「これをお使いになって、クラリス様! ベルテ家の家紋が入っていない装飾品なら、闇市で金貨三十枚には化けますわ! あの子の新しいレコードのプレス代に……あの子の城を取り戻すための弾薬にしてください!」
「セシル様……」
クラリスの胸が熱く震える。
それが、引き金となった。
「わたくしもですわ!」
ロシュフォール公爵令嬢のエレオノールが立ち上がり、両手首のダイヤモンドのブレスレットを外して卓上へと投げ出した。
「ロシュフォール家の金など、どうせ政略結婚の結納金に消えるだけです! そんな汚らわしい金、すべてあの子の歌のために使っていただきますわ!」
「わたくしも!」「私のエメラルドのブローチも持っていって!」
次々と立ち上がる令嬢たち。
外されるティアラ。外される指輪。外される豪奢なイヤリング。
神学書の表紙の上に、眩いばかりの宝石の山が築かれていく。
彼女たちは、親から与えられた「家門の鎖」を、自らの手で一つずつ引きちぎり、反逆の軍資金へと変えていたのだ。
シスターフッド。
男の権力に窒息しかけていた女たちが、一人の下町の歌姫の絶唱を触媒にして、確固たる連帯を結成した瞬間。
それは、教会のいかなる戒律よりも、国家のいかなる法律よりも強固な、魂の同盟だった。
「ありがとう、皆様……!」
クラリスは宝石の山を抱きかかえるようにして、深く頭を垂れた。
「この富はすべて、匿名の支援基金『エスポワール(希望)』を通じて、レアとルージュ座の元へと届けます。……あの子は必ず、この帝都の夜を呑み干して、私たちを迎えに来てくれますわ!」
「ええ……!」「信じておりますわ!」
令嬢たちが手を取り合い、頬を紅潮させて微笑み合う。
だが――。
彼女たちが差し出したのは、単なる宝石や小遣い銭だけではなかった。
「……クラリス様」
近衛騎士団長の長女であるマリーが、声を一段低く落とし、身を乗り出してきた。
その瞳には、軍人の娘特有の鋭い光が宿っていた。
「金だけではございませんわ。……父の書斎で、昨夜、不穏な書類を目にいたしましたの」
「マリー様……?」
クラリスが息を呑む。
「聖歌庁の典礼査察局が、近衛騎士団本部に対して、治安出動の予備待機を要請しておりますわ。……来週の初頭、煙突街の地下工房を一斉捜索するための、特別捜査班の編成表です。父の執務机の引き出しに、部隊の突入ルートと日時のメモが挟まれておりました」
「なっ……!?」
クラリスの背筋に、冷たいものが走った。
さらに、宮内卿の娘であるアンリエットも、小声で言葉を継いだ。
「わたくしの父の元にも、マクシミリアン伯爵から私的な親書が届いておりますわ。『十日後の査問委員会において、レア・ヴィットを国家反逆罪として即決裁判にかけるため、貴族院の根回しを頼む』と……。裁判の構成員となる審問官の名簿、控えて参りましょうか?」
「マリー様……アンリエット様……」
クラリスの心臓が、早鐘のように激しく脈打った。
情報。
最高位の貴族の娘たちだからこそ、親の書斎や夜会の寝物語から、いとも容易く引き出すことができる、国家中枢の機密情報。
帝立聖楽院も、聖歌庁も、貴族院も、まさか自分たちが「家畜の人形」として蔑んできた娘たちが、自らの足元でこれほど巨大な情報網を構築しているとは、夢にも思っていないだろう。
敵の懐深くに穿たれた、無数の毒針。
クラリスの唇に、三日月の形をした獰猛な笑みが浮かんだ。
「……ええ。すべて控えていらして」
クラリスは宝石の山から顔を上げ、令嬢たちを見据えた。
「教会の動向、憲兵の配置、審問官の弱み……手に入るものは、すべてこの部屋へ集めるのです。……あの方たちが、私たちの歌を奪おうとするのなら、私たちはあの方たちの喉首を、内側から食い破って差し上げましょう」
「はい、クラリス様!」
秘密のサロンのなかで、少女たちの共謀が、確固たる誓約となって結ばれた。
それは、もはやただの音楽のファンクラブなどではなかった。
帝国の屋台骨を揺るがす、最も優雅で、最も恐ろしい反逆の結社。
マクシミリアン伯爵が敷いた完璧なはずの包囲網は、いまやその心臓部において、自らが飼い慣らしていたはずの令嬢たちの手によって、音もなく食い破られようとしていた。




