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第91話 自爆魔

  私が紋様に触れると、紋様は大きな音をたてて、爆発した。しかし、ダメージは全て身代わり精霊ちゃんが受けてくれたので私は無傷だ。ありがとう、精霊ちゃん。


  ちなみにこの紋様は、紋様が付けられた人しか爆発ダメージを受けないので、周囲の人も無事である。


  自爆魔が驚いている隙に、私は距離をとった。紋様騒ぎの時にルージュ達と離れてしまっていたので、ルージュちゃん達の元に戻る。


「アナちゃん、大丈夫?」


「うん。平気!」


「あれがアナの言っていた新スキル。中々便利ね」


「今初めて使った」


  3人は私が無傷で戻ったと分かると、安堵の表情を浮かべて、励ましてくれた。


「お前、一体何をしたんだ?  俺の爆弾を受けて、無傷だと?」


「君は一体……」


  自爆魔や正義の翼の人達まで、驚きを表情で表しながら、こちらを見ていた。


  自爆魔は途中から怒気を含んでいたけど。自分の爆弾が効かなかったのがかなり不服のようだ。


  他の関係ない野次馬まで集まってきている。これが注目の的ってやつなのだろうか……。


「お嬢ちゃん大丈夫か!」


「可愛いだけじゃなくて、強いのか!  ひゅー!  生かしてるぜ」


「一体どうやったの?」


  さっきまで静かだった野次馬達は熱を帯びたように騒ぎ始めた。さっきまでは、自爆魔を恐れていたんだろうけど、私が攻撃を防いだことによって、自爆魔は舐められたのだろう。


  自爆魔もそれに気付いたようだ。騒ぐ野次馬は自爆魔を余計に刺激していた。これ以上、私に自爆魔のヘイト集めるのやめて。もうヘイトはプラスカンストしてそうだけど。


「かなり注目を集めてますし、立ち去るなら今ではないですか?」


「確かに!」


  これ以上注目を集めるのはごめんだもんね。私達がすーっと帰ろうとすると、自爆魔が逃がさんとばかりに追ってきた。


「お前、俺の爆弾の価値を貶めやがって!  許さない」


  自爆魔の言っているのは、完全な逆恨みである。ていうか小物臭がすごいね。私達を追いかけようとした自爆魔を正義の翼の人が止めてくれた。


  ありがとう、どこかの誰か。私はこの場を去ります。さようなら!  私は心の中で手を振りつつ、その場を離れた。


  猛ダッシュで、あの場を去り、少し離れると私達は歩く速度を緩めた。



「何だったんだろうね、あれ」


  私が呑気にそう言うと、茶々さんに呆れられた。



「何だったんだね、じゃないですよ。殺されかけてましたよ」


「そうみたいだね。まあ身代わり精霊のいい練習になった。あのスキルかなり便利だった。取って正解だったよ」


「アナちゃん図太い神経してるね……」


  苦笑いするルージュちゃんに、私は笑い返した。正義の翼の人と自爆魔はまだ揉めてるみたいだけど。無視無視。



  あの自爆魔に顔を覚えられたかな。さっさとこの街を離れた方がいいかも。また狙われたら面倒い。



「けっこうPKプレイヤーって多いのかな?  自爆魔もそうだし、前も1回襲われたよね」


  ルージュちゃんが不安そうにそう呟く。


「この街は治安が悪いし、しょうがないよ」


「やっぱり女性4人組っていうのが襲い安いのかもしれませんね。特にアナさんとかルージュさんは戦えなそうな見た目ですし」


「大剣とか持ってたら襲われなくなるかな?」


  大剣持つだけで、襲われなくなるなら買うのもあり?  なんて血迷ったことを考えていたが、3人が私を止めてくれた。


「アナちゃんが大剣もってどうするの?  使えるの?」


「えっと、飾り?」


「飾りって。大剣買うのが無駄遣いだよ」


「それに重たいわ。大剣って。ライフルも持ってると疲れるし」


「そうだね……」


  私の大剣デビューは永遠に来なさそうである。


  そんな話で盛り上がる私達の頭から自爆魔のことはすっかり消え去っていた。



  私達はその後は何事もなく、ホテルに帰ることが出来た。私達がホテルに帰ると、桜子ちゃんとすれ違った。桜子ちゃんは相変わらずの笑顔で、すれ違いざまに話しかけてきた。


「聞きましたよ!  自爆魔に絡まれたんですって?」


  情報速すぎない?  私は何よりも、情報の速さに驚いていた。


「よく知ってるね」


「お兄様は情報屋ですから!  もし良かったら、自爆魔のスキル情報とか見えたら教えてくれません?  高値で売れそうなんですよね」


「そんなので、良かったらいくらでも教えるけど」


  いらない情報を買って欲しいというのに断る理由もない。情報は売ったところで減らないし。


  自爆魔に絡まれのはめんどかったけど、結果的に桜子ちゃんに情報を売ることで、金儲けになったので、良しとしようと思う。



  私は鑑定で見た自爆魔のスキルや称号、装備等全てを覚えていた。少し有名くらいのプレイヤーはここまで覚えないけど、自爆魔とは色々あったからね。


  今後絡まれた時のために、情報を覚えていたのが、役に立ちました。


「ありがとうございました!  また正義の翼とか死神の使いの人を鑑定したら教えてくださいね!  高値で買い取りますから」


  一体その情報を何に使うかは知らないけど、見かけたら鑑定しとくよ。


  この世界で、有名プレイヤーや、敵が多いプレイヤーの情報の価値は高い。


  有名プレイヤーとかは、鑑定されるのを警戒して、鑑定妨害系のスキルを持っている人が多いけど、簡単に鑑定妨害系のスキルが手に入るわけじゃないからね。



「ところで、自爆魔は正義の翼にやられたか知ってたりする?」


  自爆魔がやられてくれたりしたいかな。そしたら、少しは安心して出歩けるんだけど。


「知ってますよ。アナさんはお得意様ですから、教えてあげます。自爆魔は正義の翼にやられそうになって、逃げましたよ」


「そっかあ。ありがとう」


  ならまた狙われる可能性はあるわけだ。


「いえいえ、今後もご贔屓に!」


  桜子ちゃんとは少し雑談をして、別れ、私達は部屋へ戻る。



「今日は、装飾品受け取りにいっただけなのに疲れたね」


  ルージュちゃんは部屋のソファーに座ると、疲労感を含んだ声でそう言う。


「時間が余ったら、ストーリークエストに行こうかと思ったけど無理そうね。残念だわ」



「ストーリークエストはいつでも行けますよ」


「フェリシモ王国の観光したかったなあ」


  フェリシモ王国の観光はしたかったけど、今回ので、危険さを身に染みたから、観光する気がなくなっていた。


「吹雪の森と氷の大地は観光したしいいんじゃないかしら?」


「あれ、観光っていうの?」


  マロンちゃんの一言に、ルージュちゃんが絶句していた。


  私たちはそんな風に、襲われたことなんて忘れて、緩やかな時を過ごしていた。そんな時、ルージュちゃんが珍しく真剣な様子で口を開く。


「ところでだけどさ、マロンちゃんの異界に繋がっていると言われているクローゼットみたいなのあったじゃん?」


「あるわよ。それがどうかしたのかしら?」


「あのクローゼットって、本当に異界に行けないのかな?  あそこの報酬、私達3人はけっこういいのだったし、よくよく考えたら、ただのクローゼットじゃない気がするんだけど。あのクローゼットのことがめっちゃ気になってるんだよね」


  あのクローゼットかあ。確かに、ただのクローゼットなら、わざわざ異界に繋がっているという伝説があるなんて、説明のところに書く必要もないよね。


  異界に繋がっているのかな?  なんかそういう物語あったよね。ナルニア国物語だっけ?  クローゼットの先の世界が広がってるの。あんな感じだったりするのだろうか。


  夢が広がるよね。クローゼットの先が異界って。


「うーん、ですが調べてみても何もありませんでしたよ」


「もう1回調査しようよ!  気になりすぎて夜しか眠れない」


「寝れてるじゃないですか……」


  私達はルージュちゃんの発案で、クローゼットを調査することにした。



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