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第90話 業火の地獄(下)

ーーボス魔物「地獄の番長」が現れました。


  私達の目の前には、見た目で自分がボスだと主張している大きな鬼、そして小さな鬼達と、ケルベロスがいた。地獄の番犬、ケルベロス!  初めて見た。


  敵を鑑定したけど、敵のレベルは130で、特に厄介なスキルも持っていなかった。



「いいか。俺が斬る。援護は任せるぞ」


「おっけー」


  シグレのステータスは私よりレベルが高いのかステータス鑑定妨害してるのか、見えなかったけど、どっちにしてもそれなりに戦えるのは確かだろう。


「【破滅の旋律】『呪い精霊王召喚』『呪い精霊召喚』」


  私は呪いスキルで、援護する。


  シグレが刀で切りかかる光景は中々に戦闘アニメみたくて、映えていた。


  シグレは和風な世界観にあっていた。私のこのゴスロリに藁人形姿という西洋チックな派手な格好は全くあっていないけどね。1人だけ異世界からやってきたみたいだ。



  シグレの刀捌きはすごかった。圧倒的な速さと力で、敵に切りかかる。


「【呪い】『防御力デバフのプレゼント』」


  私はシグレの援護をしながら、シグレの動きを少し見ていた。茶々さんといい勝負かもしれないな、なんて考えながら。



  私達2人で、一気に番長達を倒しきった。そんなに時間はかからなかった気がする。番長倒したし、これでクリアだよね?


ーー強制参加クエスト「業火の地獄」をクリアしました。


  私がそう思っていると、アナウンスが聞こえ、いくつかのアイテムをドロップした。


  私とシグレさんで素早くアイテムを分ける。こういう時、戦闘タイプが違うと分けやすい。私は魔法職向けのアイテム、シグレは物理攻撃向けのアイテムって風に、分配出来るし。



  私達がクエストをクリアしてしばらくすると、魔法陣のようなのが現れて私達を包み込み、次に目を開くと、クエストに参加させられるまでいた道にいた。


  私の隣にはルージュちゃん達がいた。あれ、シグレは?  せっかくだし、友達登録しようかなとか思ったのに残念。強かったし、ああいう和風男子な知り合いいないんだよね。



「アナちゃん、マロンちゃんに茶々さんも!  無事で良かった!」


  ルージュちゃんがほっと胸を撫で下ろす。


「誰かがクリアしてくれたお陰ですね。拙者は城が見えたのですが、遠くてたどり着けませんでした。ケルベロスや鬼をかなり倒したのですが」


「え、いく道中にケルベロスなんていた?」


  私の疑問に、茶々さんとマロンちゃんは頷く。


「いたわよ。むしろ私はケルベロスしか見かけなかったけれど」


「拙者は両方見かけましたよ!」


「私は多分アナちゃんと一緒!  鬼だけ。城に着いたはいいけど、1階の魔物は全部倒されてた」


  皆の話をまとめると、スタート位置によって、城までの距離とか出現する魔物が違うっぽい。私のスタート位置はかなり、城に近かったのだろう。お陰で、すぐ城に辿り着けた。


「ボス魔物は私とシグレってゼノンのギルドの人と倒した」


「え、アナちゃんが倒したの?」


「うん!  城までの距離も近かったからね」


  私がそう言うと、3人は最初は驚いたていたが、すぐに納得した顔をした。


「ないすアナちゃん!  お陰でお金とかアイテム消えずにすんだよ」


「ボス魔物私も戦いたかったわ。中々ないチャンスだもの」


  マロンちゃんは羨ましそうにしていた。



  私達がそんな話をしながら、立ち去ろうとしていた時、周りはざわめきあっていた。私がクリアしたのが、自爆魔にばれたら面倒くさそうだし、とっとと消えようと思う。



  自爆魔はそうとうお怒りっぽい。クリアされたことが気に食わないのか、周囲を睨みつけていた。


  そして騒ぎを聞きつけた正義の翼の面々がやってきた。


  これは修羅場か?  修羅場の予感。私達は距離をとって、やり取りを眺めていた。



「お前らか?  業火の地獄をクリアしたの。お前らがクリアしなけりゃ、俺らがこの辺のプレイヤーの落としたもの全部回収出来たのに」


  強制参加クエストは、参加させた側が、参加したプレイヤーの落としたものをゲット出来る仕組みになってるんだね。私は新情報に耳を傾けていた。


「いや、クリアしたのは俺たちじゃないが、とにかく罪もないプレイヤーに危害を加えることは許さん」


「ふん。今日こそお前らを皆殺しにしてやる。俺の邪魔をしやがってこの害虫が」



  これはやばいな。相当クリアされたことにお怒りらしい。絶対に私がクリアしたってことバレないようにしないと。




  怒りが私に向きそうである。そしたら、死神の使いにばれて殺されそう。


  PKプレイヤーに殺されるなんて嫌だ。もちろん魔物に殺されるのも嫌だけど。


「やんのか?  あ?」


  自爆魔と正義の翼が睨み合い、今にも殺し合いを初めそうな雰囲気だった。周囲には張り詰めた空気が流れ、周りのプレイヤーは固唾を飲んで見守っている。



  厄介なことに関わりたくないプレイヤーはもう帰ったから、ここにいるのは立ち去るタイミングを逃したプレイヤーと野次馬したいプレイヤーだ。


  私は立ち去ろうと思ったけど、タイミングを逃した。今更何事も無かったかのように立ち去るなんて無理じゃない?



「行け!  【自爆天地】」


  自爆魔がそうスキルを使った瞬間、天地が割れるようなすごい地響きがして、自爆魔の周囲が爆発した。



  私達はそれなりに距離があったから軽傷くらいで済んだけど。


  自爆魔の周囲は地獄絵図と化していた。自爆魔本人も大ダメージを受けていた。まあ自分の爆弾のダメージを軽減するスキルは持っているので、死ななかったのだろう。私の鑑定は自爆魔のスキルを全て見抜いていた。



「ぎゃははははは!  爆弾だあ!  やっぱり爆弾だなあ」



  狂ったように笑いながら、爆弾を周囲に投げていく。この男、正気じゃない……。


  そして、その男と一瞬目が合った。


  私は慌てて目を逸らしたものの、何だか見られてる気がする。もしかして、私がクリアしたのバレた?


「お前らみたいな女が泣き叫んでるの大好物なんだよな、俺」


  私がクリアしたことはバレていないが、やばそうな絡みをしてきた。どうやり過ごそうか思案していると、自爆魔は驚きの一手に出た。私に接近してきたのである。


  何かを巻つけようとしてきたので躱す。しかし追尾型の紋様は私の身体能力じゃ完全には躱さなかった。


  茶々さんが攻撃しようとしたものの、躱された。


「動くとこいつの爆弾が爆発するぜ」


  自爆魔はそう高らかに宣言した。自爆魔の言っている爆弾というのは、私の腕に巻き付けられた紋様のことだろう。


  私の腕には自爆魔の紋様が巻きついている状態である。


  この紋様がどんなものかはしっかりと分かっている。鑑定で見たからね。この紋様は特定のプレイヤーの位置を記録するものだ。そして、起爆スイッチでもある。この紋様に誰かが触れると、紋様が爆発する。


  動いたら爆発するといったが、触れなきゃ大丈夫だ。これは触れたら爆発するって知らなかったら触れてしまうだろう。これを解除するには、爆発させるか、術者に解いて貰うか、術者を殺すかだ。


  おそらく弱そうな見た目だし、なんか目が合ってむしゃくしゃしたから私をターゲットにしたってことなのかな?


  私は冷静に、自爆魔の気持ちになって、この状況を整理していた。


  にしても私運悪すぎじゃない?  幸運ステータスは高いはずなのに、怪しげな占い師といい自爆魔といい、変な呪いだの爆弾紋様など付けまくられている。


  1度お払いにいくべきだろうか。


  そんな現実逃避をしつつ、私はあるスキルを発動する。


「『身代わり精霊召喚』」


  このスキルを使うと一定時間、私の受けたダメージを無効化出来る。このスキルを発動した私は紋様に触れた。


「お前、何やって!」


  正義の翼の人は慌てたような声を出す。自爆魔も驚いていた。






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