第89話 業火の地獄(中)
2階も1階と同じように、石造り床の廊下が広がっていた。所々巻物っぽい飾りとかがあって、手の込んだ造りだなあなんて思う。
やっぱりこれ、部屋を見た方がいいのかな。少し部屋に興味が湧いた私は、試しに手前にあった部屋を見てみる。部屋のドアを開くと、和室が広がっていて、鬼の魔物がいた。
襲いかかってきたので、いくつかの呪いスキルで撃退する。
特に倒したけれど、何も無かった。普通にその変の魔物を倒して手に入るようなドロップアイテムをゲットしただけである。
私はその後いくつの部屋も見たけど、部屋に入ると鬼の魔物が出現して、倒すと、しょぼいドロップアイテムをゲットするだけだ。魔物を倒した部屋の上には赤いランプがつく。
これ、全部屋の魔物を倒してたら埒が明かない。私は2階をとりあえず通過して、3階へ進む。豪華そうな部屋があったら、強い魔物がいるんだろうし、入ってみようかな? と思ったけど、全然豪華そうな部屋もないんだよね。どれも同じような見た目の部屋でさ。
3階へ行ってから、試しに部屋へ入るも、2階と同じで、部屋の魔物を倒すと、しょぼいドロップアイテムを落として、部屋に赤いランプがつくだけ。
この赤いランプ何なんだろうね。なんか関係あるのかな? もしかして全部のランプをつけないとだめとか? 2階に戻るのはめんどくさいけど、3階だけなら……と思い、私は3階の部屋を全部回ることにする。
1階と2階は後から来る誰か、何とかしてくれないかな? なんて。
私は早足で、3階の鬼の魔物達を倒していく。10部屋くらいあったが、1時間ちょいで全ての部屋を網羅した。
3階の部屋のランプが全てつくと、アナウンスが聞こえてきた。
ーー3階の灯りを全てつけました。「燃え火」を入手しました。
ーー3階の灯りが全てつきました。(全体アナウンス)
アナウンスで流れるくらいだし、これ多分なんかあるな。全部つけないとダメなやつだ。とはいえ、1階と2階に戻るのはめんどくさいので、4階に進もうと思う。
一応このクエストに巻き込まれた人はけっこういたはずなので、他の誰かがやってくれると信じることにする。
この城何階建てなんだろ。見た感じ、5、6階建てだと思ったんだけどなあ。ファンタジー世界は見た目と中身が一致しないからね。
4階に進む前に、入手した「燃え火」の性能を確認する。これは全てを焼き尽くすことが出来る火だってことが分かった。何かに使えそうなので、【翡翠のイヤリング】にセットしておく。
3階での用事を済ませたので、今度こそ4階に上がった。4階と3階と同じような感じだったので、部屋を順番に回って、魔物を蹴散らしていく。ちなみにだけど、階が上がるごとに、魔物のレベルが5ずつ上がっている。
2階の魔物のレベルは95前後、3階の魔物のレベルは100前後、4階の魔物のレベルは105前後だった。
105くらいなら、まだレベル差があるし、色々スキルもあるので、余裕かな。
4階のレベルを蹴散らしている時、全体アナウンスが頭の中に響き渡る。
ーー1階の灯りが全てつきました。(全体アナウンス)
どうやら誰かがやってくれたらしい。この調子で、2階も灯りを点けてくれると助かるな、どこかの誰かさん。
私はどこかの誰かさんに期待を込め、4階の鬼に立ち向かう。
部屋に入ると、すぐに呪い系スキルと精霊召喚系スキルを組み合わせて、敵を倒していく。何回もバトルしていると、次第に早く倒すコツを掴めていった。
ゲームでも周回になれると、周回速度が上がっていくけど、まさしくそんな感じである。
ゲームの周回作業ってこんな感じだよね。永遠と同じような魔物を倒すし。
しばらく4階の魔物と戦い続け、4階の魔物も全て私1人で蹴散らした。
ーー4階の灯りを全てつけました。「ブレインインパクト」を入手しました。
ーー4階の灯りが全てつきました。(全体アナウンス)
私はまずブレインインパクトの性能を確認する。攻略に何か役立つ性能かもしれないしね。
ブレインインパクトは近付く敵に、炎の衝撃波を与えることができるものらしい。ただ回数制限があって、10回まで使用可能である。
特にクエストで使うって訳でもなさそうだけど、普通に使えそうなので、大切に保管する。
次は5階かなあ。私は5階に登る。私は5階に登るとすぐに、4階までとは違うという変化に気付いた。4階までは、床は冷たい石で出来ていたけど、5階は床が畳になっていた。
そして、部屋の扉も、豪華さがグレードアップしており、強そうな魔物がいそうな予感がする。
とりあえず、4階までと同じように、魔物を倒そうと思い、勢いよく1つ目の扉を開けた。
1つ目の扉の魔物のレベルは110。やっぱり階ごとに5ずつ、魔物のレベルが上がってるのね。
私が呪いスキルと精霊召喚スキルを使い、攻撃するとすぐに10体もの魔物が消滅した。この作業にも慣れたものだ。作業ゲー感がすごい。
私が魔物を倒している時に、2階の魔物を倒しきったという全体アナウンスが聞こえた。後はこの階だけかな?
この調子で他の部屋の魔物を倒していく。そして、最後の部屋と思われるところに到達した。ここだけ、威圧感がすごいし、絶対ボス部屋だ。
部屋の入り口に張り紙がしてあった。まあ重要なお知らせだと思うので、読む。
プレイヤーの皆さんへ
ここまで到達おめでとう。ここまで来たら、後もう一息だよ。全てのランプを照らしたら、この扉を開けられるようになるよ。この扉を開けて、魔物を倒したら、全員クエストをクリアしたことになるから、頑張ってね!
地獄の番頭
魔物のレベルは120。推奨レベルは120~。
炎を操る。物理攻撃と魔法攻撃を両方使ってくる。
おまけ
地獄の番頭は挑む人数が多ければ多いほど、敵のレベルは上がる。1人だと120。2人だと130。3人だと140。4人だと150。5人以上だと200。
全てのランプは光がついてるし、挑もうとしたら、今すぐにでも挑めるけど。てか5人以上の敵のレベルの高さやばくない?
これは大人数だと勝ちやすいとか言う訳でもないのか。これは1人で挑むべきなのか、他の人を待つべきか。
敵のレベルが高い方が、経験値はいっぱい貰えそうなんだよね。それに、レベルが高い方がいいものをドロップするかもしれない。
けど、それだと待たないといけないんだよね。それがちょっと、いやかなり面倒い。次に来るのがどんな奴かも分からないし。
レベル120くらいなら、とっととソロクリアした方が早いかな。
そう言えば、誰も来ないな。大人数クエストのはずなのに、なんか3階、4階、5階って、1人寂しく制覇してるし。これいいのかな……?
まあクリアしたらいいんだよ、うん。そう思い直し、私は1人でクエストに挑もうとした。
その時、後ろから声がした。
「貴様、1人で挑むつもりか?」
え? 誰? と思って振り返ると、侍のような風貌の男性が立っていた。茶々さんの男版みたいな感じである。見た目的には。
初対面の人に貴様は失礼じゃない? と思いつつも、そういうキャラを作りたいのかな、と思い直し、気にしないことにする。
「その予定だったんだけど、あなたが来たし……。一緒に行く?」
「俺はそれでも構わないぞ」
あっさりと了承を貰えたので驚きながらも、自己紹介をする。この手のタイプは「いや、俺一人で行く。こんなの余裕だ」とイキリだすかと思った。
というかそんなことを言いそうに見えたけど、私の思い違いだった。失礼なこと考えてごめん、と心の中で謝罪する。
「初めましてだよね。名前は? 私はアナスタシア。アナでいいよ」
「俺の名前はシグレだ」
「シグレ……? シグレってあの、ゼノンのギルドの!」
ゼノンのギルドの1人だよね。前ゼノンと森で会った時にした雑談の中に名前が出てきた。特徴も一致してるし。
ちなみにだが、シグレもそこそこ有名人らしい。まあカルマ値0ギルドが有名だしね。
「知ってるのか?」
「あ、ゼノンとは2回くらい会ったことあって」
「まあいい。行くぞ」
私達はお互いに頷きあって、豪華絢爛なドアにゆっくりと手をかけた。




