第86話 経験値の森
そして、吹雪の森から帰ってきた次の日、私達はさっそくゼノンから貰った「経験値の森のクエストチケット(special)」を使い、経験値の森にやってきていた。
このクエストはspecialなので、普通の経験値の森より貰える経験値の量は大分多い。
経験値の森のクエストチケットにも推奨レベルがあって、この経験値の森のクエストはレベル100~150くらいのプレイヤーが受けることを推奨されている。
手に入る経験値の量や敵のレベルはこのクエストに挑むプレイヤーのレベルで変動するけどね。レベル150のプレイヤーが挑むのと、レベル100のプレイヤーが挑むのでは、貰える経験値にかなりの差がある。
ちなみに色んなレベルのプレイヤーが数人で挑んだ場合は、数人の平均くらいのレベルの敵が出現し、平均くらいの経験値が貰える。
レベルが高いプレイヤーは低いプレイヤーと一緒に行くと、損をするのかな。
私達はレベルがほとんど変わらないから、そういうこともないけど。
私達が颯爽と生い茂る森の中を歩いていると、経験値と書かれた袋をぶら下げている木々が歩いてきた。
私達は経験値上がーるを飲み干して、経験値の森の木と向かい合う。
鑑定すると、レベルは110だった。
経験値の木 Lv110
スキル なし
倒したものにたくさん経験値を与える。
敵はスキルも持っていないし、大したことはないだろう。まあせっかくなので、新しいスキルを試してみますか。
「『呪い精霊王召喚』」
呪い精霊王を召喚する。美しい人型の精霊が現れ、クロユリの呪いスキルを発動すると、地面からクロユリが咲き、経験値の木の方へ向かっていく。経験値の木はクロユリの花に巻き取られ、すぐに消滅した。
他の皆も新しいスキルなんかを試していた。
身代わり精霊の方は、敵が弱すぎて試せないな。まあまたの機会にしよう。
5体の経験値の木を倒すと、レベルが121から125まで上がった。経験値のコスパが良すぎる。
私達は次々と襲いかかる経験値の木を倒していく。早い者勝ちとでもいうふうに。特にいっぱい倒したらいっぱい経験値を貰えるってわけでもないんだけどね。
私達が前に進みながら、何十体もの経験値の森の木を倒すと、ついにボス魔物と対面した。
ーー経験値の森のボス魔物「経験値の木」が出現しました。
ボス魔物は少し頭体が大きい。木で、経験値の袋をぶら下げているってところは他の木と変わらないけど。
ボスの経験値の木も、特にスキルは持っていなかった。レベルが高いだけなので、問題なく倒せるだろう。
そもそも経験値の森ってそんなに苦戦するようなクエストじゃなくて、ボーナスクエストみたいなもんだし。
私達は一気にスキルを叩き込む。
「【破滅の旋律】【呪い】」
「【刀雷伝】」
「[爆裂ウィンク]」
「【千華銃乱】」
私達の4連コンボにより、ボス魔物である経験値の木のHPは0になり、消滅した。
最終的に、私のレベルは137に、ルージュちゃんは134、茶々さんは131、マロンちゃんは130にまで上がった。
さすが経験値の森(special)と経験値上がーる。一気に短時間でレベルが上がった。レベリング効率よすぎないかな。
「私達、お金があるから、経験値の森のクエストチケット買い漁って、レベリングするのもありだよね」
ルージュちゃんがそんなことを言い出す。金の力にものを言わせていくスタイル。
ルージュちゃんのもありっちゃありよね。普通にレベリングするより楽だし。ただあんまり経験値の森のクエストチケットって出回ってないんだよね。
お金で売るより、物々交換用に取っておいたり、自分で使う人がほとんどだし。
お金があれば大体の物は買えるけど、入手困難なのはそもそも出回ってないからね。
「それもいいですけど、あんまり出回ってないですからね」
茶々さんも私と同じことを思ったらしい。まあ出回ってたら買えばいいんじゃないだろうか。
「あー、そっか」
ルージュちゃんはガックシと項垂れる。私達は経験値の森から帰還し、ホテルのレストランに行くと、ホテルのレストランが少し騒ぎになっていた。
ん? なになに。黄色い歓声が上がってるんだけど。私達は気になって、騒ぎが起こっているところを見ると、騒いでいるのはプレイヤーで、その中心にアラトもいた。
アラトとリンクスさんと、イケメン2人組と、顔は整っているものの、不潔というかなんというか、ダボッとした服を着て眠そうな青年、それからパーカーにスカートという緩い格好の女の子がいた。
「あれって、Amaterastのメンバーじゃない? イケメン2人組は魔王と王子でしょ」
「魔王と王子?」
私が尋ねると、ルージュちゃんが答えてくれた。
「黒髪の方が魔王で、金髪が王子。かっこよくて強いから人気なんだよ」
「へぇ。そうなんだ」
騒ぎの元凶はあの2人か。確かに見た目は整ってるし、強かったら騒がれるのも納得だよ。
私が納得していると、アラトは私に気付いたらしい。こっちこっちと手招きする。
「アナちゃん達、こっちこいよ!」
すると、周りの視線が私達に集まる。私達は周りを気にしつつも、アラト達の方に近づく。
「すごい騒ぎだねーー」
「こいつらのせいだよ。紹介するわ。このキャーキャー言われてる黒髪がアレン、金髪の方がカルロ。で、この目付き悪い男が、風牙。女の方の目付き悪いのはメリアだ」
「初めまして。君がアラトの言っていたアナちゃん? 噂は聞いているよ、キュアゴーレムを楽々倒したこととかね」
金髪のカルロさんがウィンクしながら、私に微笑む。近くで見ると、イケメンってすごいね……。
「アレンだ……」
魔王の方は無愛想にそう言った。
「アレン、そんなに無愛想だから魔王なんて言われるんだよ」
「ふん、言わせておけばいい」
魔王と王子のそのやり取りに、野次馬から歓声が上がる。えぇ、この空間が辛い。こういう風にきゃあきゃあ言っている場所は苦手です。
残りの2人は目つきが悪いとアラトが言っていたが、その通りで話しかけるなオーラが漂っていた。
確か、男の人が風牙さんで、女の方がメリアさんだっけ。
一応私達の方から自己紹介を返しておく。名乗られて、名乗らないのも失礼だろうし。
「アナことアナスタシアです。よろしくね」
笑顔で愛想良く挨拶する。
「ルージュだよーー」
ルージュちゃんは経験値の森で、いっぱいレベルが上がったのと、イケメン2人組に会えたのとでハイテンションである。
「拙者は茶々と申します」
「マロンよ」
私達はひと通り挨拶をすると、何となく一緒にご飯を食べようという流れになる。そこで、初めは近寄り難い雰囲気だった風牙さんやメリアさんとも少しは打ち解けた気がする。
メリアさんはエンチャンターの毒使いらしく、私と通じるところがあり、話が弾んだ。毒の話になると、明るい声で話し始める。
「アナさん達が城で取ってきてくれた毒、良かった。あれ、使ってる」
少し片言だけど、状態異常のエンチャンター通し、色々話せて嬉しい。
「そういえば、アレン達は何しに来たんだ?」
アラトが尋ねる。同じギルドなのに、知らないんかい。そんなことを思いながらも、話に耳を傾ける。
「レベリングと、エリアボスの討伐だよ。後クエストの調査とか、色々ね。アラト達は色々やらかして、お尋ね者だから、街の調査とかはやりずらいと思ってね」
カルロさんはが答える。
「ふーん、まあいいわ。そうだ、レベリングいかね? いいNPCの軍隊がいるんだぜ」
「興味無いな。それにNPC狩りはちょっと。お尋ね者になるのはナンセンスだし」
カルロさんは肩を竦めて、首を横に振る。アラトはまあそうだろうなという顔をした後、別の話に移っていった。
そんなこんなで私達の交流会は楽しめたのだった。色んな話が聞けたしね。
なんたって、あの有名攻略ギルドAmaterastの幹部が6人集まってるからね。




