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第80話 雪女

 洞窟の問題に挑んだ次の日、私達は再び経験値上がーるを飲んで、吹雪の森で狩りをしていた。降り積もる雪の中、私達は4人並んで、雪の上を踏みしめながら進む。


「昨日と変わり映えしない景色だねーー」


 ルージュちゃんが退屈そうに言う。最初は皆、雪にドキドキしていたけれど、丸一日雪の中にいたから、いい加減飽きるよね。


「レベルを上げるためだと思って頑張りましょうよ」


 私達の中で、レベルを100にして、ユニークスキルをゲットするということだけが、モチベだった。雪山は普通の森より、過酷なのだ。


 とはいえ、昨日より、靴のお陰か歩くのは楽な気がする。さすがLE。


「これから天気が悪くなりそうね」


 マロンちゃんが雲を指さす。黒い嫌な雲が、近付いていた。雪山で、吹雪になったら、悲惨なことになりそうだ。


「吹雪の森って名前ですし、吹雪になるかもしれませんね」



「吹雪になりそうなら、あんまり動き回らない方がいいんじゃない? 危ないし」


 危ないし、吹雪の中を歩くのはしんどそうだ。この中で、1番HPの低い私は切実にそう思う。


「大丈夫じゃないかしら?  2、3日くらい遭難したって死にはしないわ」


 マロンちゃんが涼しげな顔で言う。これが経験者は語るってやつなのかな? 最初マロンちゃんと出会った時のことを思い出すよ。マロンちゃんは道に迷って、2日間くらい飲まず食わずで遭難してたんだよね……。


「状況を見て考えましょう。それより、魔物の気配がします。これは近いですね。群れのようです」


 茶々さんがそう言って、しばらくすると、ドシドシと足音が聞こえてきた。足音的に、頭体が大きそうだね。


 私達が警戒態勢に入っていると、5匹の白いライオン? みたいな見た目の魔物が襲ってきた。


 私は鑑定を使う。


スノータイガーLv90

スキル 地団駄 雷電 雷パンチ 雪掛け 氷切


「地震みたいなの起こしてくるよ。後触れると感電する。それと足で、高い威力の雪掛けてくる。で、氷のような足で蹴りかかるスキルを持ってる」


 私は早口で、敵のスキルを伝える。


 皆は私の言葉に、了解という風に頷くと、それぞれが攻撃を始める。


「【破滅の旋律】【呪い】『呪い精霊召喚』」


 私は靴のおかげで、MP消費量も減ったので、遠慮せずに、スキルを乱発する。


 茶々さんは刀で、私達を守るように切りかかる。ルージュちゃんは爆弾と爪を器用に使いながら、敵を撹乱する。


 マロンちゃんは大きなライフルを振り回していた。


「降り注いで、【ブレット・ハート】」


 弾丸の雨が、ライオンに降り注ぐ。


 敵は雷を纏って、私達の方に走ってきたが、茶々さんが刀で止める。そして、ルージュちゃんは爆弾で1体を足止めする。


「【呪い】【カルタフィルスの呪い】」


  2つの呪いスキルを発動する。この【カルタフィルスの呪い】で、2体の敵のHPが0になった。


「【蓮魔切り】」


「【爆弾千花】」


「【魔弾】」


 残りの3人も、それぞれ1体ずつHPを削りきった。今回の戦いで、私のレベルは93に上がった。レベル100が見えてきたね。


 ルージュちゃんのレベルは88、茶々さんは83、マロンちゃんは82と皆レベルが上がってきていた。



「レベル90くらいの敵なら余裕ね」


 マロンちゃんはそう言いながら、カチャカチャと音を鳴らし、ライフルを仕舞う。


 私達の全体のレベルは、敵のレベルより低いし、人数も不利だった。けれど、余裕で倒せた。これなら氷の大地に行っても何とかなりそう。


「そうだね。この調子なら、氷の大地に行っても大丈夫かな」


「そうですね。でも油断は禁物ですよ」


 私達がそんなやり取りをしながら歩く。途中会話が途切れて、ゲーム用語縛りしりとりなんかを始めた。これはあまり続かなくて止めてしまったが。



「マジカルバナナでもしますか?」


「いいね、やろやろ、アナちゃんとマロンちゃんも!」


 その後は、茶々さんの提案でマジカルバナナを始めたが、皆疲れてきたのか、雪といったら美味しい、美味しいといったらレベリング、と答えるまでになってしまったので、これも止めた。



 そんなふうに私達は雪山を舐めていたのかもしれない。呑気に歩いていた。すると、天候が悪化してきた。


 最初雪が降ってきた時は、「あ、雪だ」くらいな感じで、誰も気にとめなかったんだよね。でも気が付いたら、大雪になっていた。


 空を見上げると、黒い雲がこの辺り一帯を覆っていた。不吉な空だ。



 これはけっこうまずいかも。吹雪で視界が暗くってきている。ドンドン雪が激しくなってるし。これ以上激しくなったら、歩くのも大変そうだ。


「どこかで、体を休めたいですが、ルージュさん木に登れそうですか?」


「多分。辺りを見回してみるね」


 ルージュちゃんは近くの木に飛び乗り、ゆっくりと上へ上がっていく。風がすごいし、振り落とされないか心配だ。見ているこっちが不安になるよ。


 私達がハラハラしながら事の成り行きを見守っていると、ルージュちゃんは降りてきた。


「どうだったの? 休めそうなところはあるのかしら?」


「あるにはあったけど、少し歩くよ。なんか小屋みたいなのがあった」



「そこに向かいましょう」


 私達はルージュちゃんの案内の元、小屋へ向かう。歩いているうちに、吹雪が強くなってきた。吹雪の森と呼ばれるだけある。


 私達は何とか歩いているが、足取りは重たい。吹雪で前が見えないし、雪の上を歩くというのは疲れる。


 そんな時、前の方から、気配を感じた。なに? 魔物?


 私達が身構えていると、真っ白な女の人が前に現れた。髪も肌も、全てが白く、全く生気を感じない。人? 魔物??


 私は鑑定を使う。


雪女Lv95

スキル 雪風 氷刃 雪のいのり 幻惑の雪


「雪を刃みたいにして風で飛ばしてくる雪風スキルを持ってる。後氷の刃で攻撃してくるスキルもある。それから祈ることによって、気温を下げるスキル、雪で視界を惑わすスキルを使ってくるよ」


 早口で、スキルを説明する。この雪女は厄介そうね。今は吹雪だし、天候的にも最悪だ。まあやるしかないけどね。


「【破滅の旋律】【呪い】」


 呪いスキルを重ねがけする。


「『闇精霊の導き』『呪い精霊召喚』」


 精霊達を召喚して、援護してもらう。


「ふふふ……」


 敵は不気味に笑う。その笑顔に私はぞっとした。心が凍るような恐ろしい笑顔に。


 雪女が手を振ると、一面を雪が覆う。おそらく幻惑の雪だろう。元々悪かった視界がさらに悪くなった。呪いメインの私や爆弾メインのルージュちゃんは、視界が悪くなってもそこまで影響はないが、銃メインのマロンちゃんなんかは厳しいんじゃないだろうか。




 それに加えて、敵は多分、茶々さんに何らかのスキルで攻撃している。茶々さんのうぐっという声が聞こえた。


「【アラウンドヒール】」


 茶々さんのいそうな辺りに、回復スキルを打つ。


 一気に決めないとね。



「『大地の舞』『防御力デバフのプレゼント』」


 自分と仲間の攻撃力を上げ、敵の防御力を下げる。広範囲のバフやデバフなので、視界が悪くても、ちゃんと命中した。そして、私は雪女の方へ近付いた。そして雪女のいる方向に通常魔法攻撃を撃つ。


視界が悪いせいで、中々当たらないけど、私に気付いた雪女が私の方へ真っ直ぐ接近してくる。それが私の狙いだった。


「【ファイアボール】」


 炎の玉が勢いよく、飛んでいき、雪女に命中する。向こうがこっちに来てくれたら、狙いやすいなと思ったけど、挑発に乗ってくれてよかった。


 雪女に炎は大ダメージだったらしい、雪女のHPは25%を切っていた。ここで、私は成功率20%のあの技を使う。成功してくれたら楽なんだけどな。


「【カルタフィルスの呪い】」


 私の渾身の呪いが炸裂し、雪女のHPは0になった。



 雪女が消滅すると、辺りの吹雪は少しマシになった。私たちは力を使い切ったとばかりにその場にヘナヘナと座り込む。


 そして、私のレベルは99から100に上がっていた。


ーーレベルが100になりました。


ーーユニークスキル「カース召喚」を覚えました。


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