第五幕【亜美羅の過去】
ーー燃え盛る獄炎の中に、一人の少女がいた。
………………ひっく、…………怖いよ
誰かぁ…。助けてよぅ…ひっく…。
少女は助けを求める。然しその声は届かない。
……痛いよぉ…。ママぁ…パパぁ…。何処にいるの………ひっく、
助けてよぅ………。
「おやおや、お嬢ちゃん。そんなトコで一体何してるんだい?」
「………?」
少女の目の前には、紅い眼の男が立っていた。男は少女の目線と同じぐらいになるように、背を丸めた。
「……何で泣いてるんだい?お兄さんに話してごらん。」
男は優しく話しかける。
「………怖いの。熱くて…痛くて…
寂しくて。」
「そうかぁ、誰がここにお嬢ちゃんを置いていったんだい?」
「分かんない。」
「そうかぁ………。そうだよねー、起きたらこうなっちゃってたんだから。」
「え…!何で知ってるの⁉︎」
驚く少女を見て、笑みを浮かべる男。「そりゃあ知ってるよ〜♪ずっと見てたんだから。」
男の不敵な笑みに恐怖を覚える少女。
まるで蛇に睨まれたカエルの様に。
「僕は桜庭 仁、気紛れな死神さ♪」
「サクラバ…ジン。」
「……君は、九十九屋 亜美羅ちゃんだね〜?お嬢ちゃん。」
「うん……。」
亜美羅は桜庭 仁と名乗る男にしがみつく。
「…ジンお兄ちゃん、助けてよぅ…
怖いよぅ……。」
「……あぁ、良いよ、助けてあげよう。ついでに1人は寂しいだろうから、いいモノをプレゼントしようかなぁ」
「……いいモノ?」
「うん、いいモノだよ♪」
ジンと話している間にも炎は亜美羅達を追い詰めていく。
「ジンお兄ちゃん…!」
「……しょうがないなぁ、まったくもう。」
亜美羅に聞こえないように舌打ちすると、ジンは黒い影を纏った。
まさに、死神だった。
「……影のマント……⁉︎」
「捕まってなよ〜♪」
「…へ?……ッキャァアァア‼︎‼︎」
喋ったかと思うとジンは黒い影で炎を食べていた。然し、亜美羅が驚いたのは違う理由があった。
亜美羅が驚いた理由………、
「……背中から手が生えてる……!」
ジンの背中からは黒い手がうねりながら炎を食べていた。
「コレは影だよ、お嬢
大丈夫、お嬢を襲ったりはしない。」
「………良かった……。」
泣き疲れたのか、亜美羅は寝てしまった。
気がつくと、亜美羅は一人で焼け跡の目の前に寝ていた。
辺りを見回してみて、ジンと言う男は居ない。どこへ行ってしまったのだろう。
「……ジンお兄ちゃん…。」
亜美羅は悲しくなってきた。
またひとりだ。
寂しい…。
辛い……。
誰でもいいから、私と一緒に居て……
其処に、一つの黒い影が現れた。
「やぁ、目覚めたかい?お嬢。」
「…ジンお兄ちゃん!」
「…プレゼントを渡し忘れててね、ごめんごめん………っと?」
亜美羅は力一杯ジンに抱き着いた。
「プレゼントなんていらない……!1人は嫌‼︎一緒に居て、ジンお兄ちゃん!」
ジンはまた不気味な笑みを浮かべる。
「…大丈夫だよ、1人にならない為のプレゼントだから。」
「…え?」
そう言うとジンは、黒い影の中から
ヒトの形をした人形を二つ出した。
「…人形?」
「人形さ、かなりヒトに近い。」
そう言って、ジンは亜美羅に問いかける。
「1人が辛いなら、一人じゃ無ければいいのさ。」
「…1人じゃ…?」
「……覚悟はある⁇もう、戻れないよ?」
「…一人は嫌だ。覚悟はあるよ。」
「……そうか、じゃあ……。」
ジンは黒い影を出し、亜美羅の影と
接触する。
「少し…痛いよ?」
「……‼︎‼︎」
その一瞬、電撃が頭の中を
駆け抜けた。
「……コレを人形にリンクさせて……。」
亜美羅の影が人形にリンクする。
すると、人形は亜美羅と同じぐらいの身長になり、言葉を紡ぎ始めた。
「…俺……は、破善笯…。」
「私…………は、春、緋。」
「破善笯と、春緋…?」
「さぁ、コレで一人じゃないね!君のきょうだい、九十九屋 破善笯と、
九十九屋 春緋の誕生だ!」
「私の……兄妹…?」
何だろう、この不思議な感覚は。
「…コレから何があっても、乗り越えるんだよ♪今から彼等は人間としてこの世界に存在する事になる。」
一通り喋ったかと思うと、ジンは黒い影と共に掻き消えた。
「……行こうか、破善笯、春緋。」
其処から、私達の人生の歯車が狂い始めた。でも、大丈夫。怖くない。
一人じゃない、家族がいるから。
亜美羅は一歩、未来へと踏み出した。
失礼します、悪戯です。
今回は亜美羅と仁との出会い、九十九屋家誕生の真実などを綴りました。
これからもよろしくお願いします。




