第三幕【優しさと悲しみ】
「 ……。」
静か過ぎる部屋に鮮血が散っている。
破善笯の目の前には人間とは思えない程に血塗れの男が壁にもたれかかっていた。もう息は無かった。
恐らく亜美羅だろう。
然し、亜美羅の姿はない。
「…亜美羅。」
最上階へと続く階段には血が付いていた。まだ新しい。
破善笯の脳裡に嫌な考えがよぎった。
「……‼︎」
すぐに階段を駆け上がり、ドアを開ける。
バンッ‼︎
「亜美羅ッ‼︎‼︎」
そこには、金髪の髪に血が付着した美しい少女の姿があった。
「亜美羅……お前…‼︎」
自然と涙が零れる。
破善笯は亜美羅に駆け寄り、亜美羅を抱えた。
まだ微かに息はある。助ける。
絶対に死なせはしない、助けてみせる。
「俺はもう、亜美羅無しでは生きていけねぇんだよ…‼︎」
眼の奥に滾る焔、亜美羅の心臓めがけて、破善笯は拳をぶつけた。
「……ッ。…………ここは…?」
腹部の痛みに目を開けると、先程までいたビルの最上階では無い。
どうやら何処かの病院らしい。
不意に、何かが手にコツンとぶつかった。
「…破善笯。」
其処には傷だらけの破善笯がいた。
何故傷だらけなのかは分からないが、私を助けてくれたのは破善笯らしい。
遊び疲れた子供のようにすっかり眠ってしまっている。いつもキリッとした目付きで相手を威嚇する破善笯のこんな姿を見て仕舞えば、破善笯を怖がる人々も普通の男の子だと思うだろう。
「…ありがとう、破善笯。貴方のお陰で助かったわ。」
優しく破善笯の頭を撫でると、破善笯は眠ったまま嬉しそうな顔をしてベットに顔を埋めた。
また助けられてしまったな。
駄目なお姉さんだ。本当に。
亜美羅は脇腹から血が滲んでいるのに気が付かなかった。何故なら。
ーーーーーーーーー泣いていたから。




