第二幕 【気持ち悪い】
「亜美羅…遅ェな……。何時もよりも30秒遅ェ…。」
「なぁーに言ってんのよこの超絶几帳面シスコン野郎っ‼︎」
「俺はシスターコンプレックスじゃ無い。ただ亜美羅を愛してるだけだ。」
「だぁぁあかぁぁあらぁぁああ‼︎‼︎‼︎
それがシスコンだって言ってんじゃんか‼︎何で破善笯がハルヒのお兄ちゃんな訳ぇ⁉︎本当っしんじらんない、今すぐ死んで‼︎」
「お前の為に死ぬ義理なんて一つもないんだが。それにしても遅い……。もう3分経ってるっていうのに………。
……っはあ‼︎‼︎まさか見ず知らずのチャラチャラした男共に襲われてるんじゃぁ………‼︎」
「もう嫌、今すぐ死んで下さいお願い致しますお兄様」
破善笯と春緋は亜美羅を待っていた。
『もう直ぐで仕事が終わるから、待っていてね。』
電話でそう言伝を受け、破善笯に伝えると破善笯は顔を少し緩め、
「亜美羅が俺を呼んでいる。」
そう言って亜美羅を迎えに行って今の現状に至る。
然し、確かに少しおかしかった。
何時も時間通りに仕事を終える筈の亜美羅姉が時間通りに終わらないのは珍しい事だった。
「……確か亜美羅はこのビルの最上階だったな……。」
目の前には少し古びたビルが建っていた。
「亜美羅姉、大丈夫かなぁ…。珍しい事があるときとか限って怪我とかしてく「亜美羅‼︎今行くぞ‼︎」ってはぁぁあ‼︎‼︎‼︎‼︎⁇⁇⁇」
破善笯は春緋の言葉を遮ってビルの中に駆け込んで行く。
「…もう、このビル60階建てだよ…?破善笯、階段で行くつもりじゃん、絶対に……。」
春緋はこんな兄を持ってしまったことを今更ながら後悔していた。大きく溜息を吐いた後、春緋はビルの中に入って行った破善笯を追いかけた。
【ビル最上階】
………風は冷たい。空は青い。雲は白い。
身動き一つ取れない。血が広がる。
痛い?なんと表現すれば良いか分からない。
これは致命傷だ。油断した。
真逆、この私が撃たれるとは思わなかった。
脇腹に一発、至近距離で撃たれた。
流石に至近距離で発砲されたらいくら私とて、避けることはできない。
嗚呼、なんて静かで暖かい空だろうか
悲しい程に無知で、美しい程に残酷だ。
私は死ぬのだろうか。やり残したことはないし、別に死んでも構わない。
然し、破善笯と春緋は大丈夫だろうか…。仕事はあと少しだったのに。残念でしょうがない。
なんだか眠くなってきた。このままずっと、目は覚めないのだろうか。死んだ後、私はどうなるのだろうか。息は、次第に小さくなっていく。
ぼやける視界、頭の隅に浮かぶ破善笯と春緋の顔ーーーーーーーー。
胃酸ではない、ムカムカしたものが形となって喉元に上がってくる。嗚呼、出来の悪い私を許して。ずっと、貴方達と一緒にいたかった………。
ムカムカした胃酸ではないものを言葉として口に出す。
「…………………気持ち悪い。」
それが最後の言葉だった。




