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ヒロインと悪役令嬢

活動報告かプライベートに載せる予定でしたがあまりにも長くなったのでこちらに。


ヒロイン視点。主人公は出てきません。

 屋上に続く扉を開けると、驚いた顔の三条家のお嬢様と目があった。

 明らかに相手の顔がひきつる。


「こ、こんな所に来てなにをしているのかしら!」

「ご機嫌よう、三条様。同じ言葉をお返しします。なぜこちらに? ご友人達はどうなさったんですか」

「べっ、別にあなたに関係ないでしょう! 質問に質問で返すなんてさすが庶民は礼儀がなってないわね」


 後ろ暗いことがあるのだと主張しているような声音につい笑いそうになってしまう。

 前は高飛車なお嬢様、としか認識していなかったけれど結奈ちゃんと接してる姿をみる度に変わっていった。

 本当に、分かりやすい人。ほんのすこーし、可愛いとも思わなくもないかも。


「私は、これです」


 ひらひらと手の中の手紙を揺らしてみせる。


「ふぅん、告白?」

「はい」

「あなたも大変ね。いくら見目が良いからといって庶民に恋するなんて感覚、わたくしには理解できないわ。結奈は別だけれど」

「……えっ?」


 見目がいい? いつもどおりの嫌味の中にさらりと混じった賛辞に驚いて間の抜けた声が漏れた。


「見目がいいって……普通ですけど」

「はあ? 自覚ありませんの? それとも美的感覚がおかしいのかしら? って、なんですのその顔は」

「三条様にお褒めいただいて嬉しくて照れているんです」

「貴女の表情筋は仕事が出来ていないようね?」


 敵、というとなんだか違うんだけど、ライバル認定してる相手に真顔で褒められたらこんな反応にもなる。

 私相手に、というかそもそも誰にもお世辞なんて言わないだろうから、多分、彼女にとってはこれは本音で。嬉しい気持ちもあるけど、なんとなくの反発心だとか、妙なプライドとか、卑屈な自己否定とかで、素直に認めるのも癪。

 そんな複雑な気持ちが顔に出ていたみたい。

 結奈ちゃんなら戸惑いつつも受け入れるんだろうなぁ。


「それで、三条様はどうしてここに? 今日はお兄様とお勉強会ではなかったんですか? 私も答えたんですから教えて下さい」

「なぜ貴方が答えたからってわたくしも答えなきゃならないんですの? そんな義務はないわ」

「はあ。別にどうだっていいですけど、結奈ちゃんはそういう考えの人好きじゃなさそうだなー」

「ゆ、結奈を困らせてしまったから行き辛いだけよっ!」


 ……わあ、あっさり白状した。本当に扱いやすい人。


「結奈ちゃん困らせたって、何したんですか?」

「何もしてませんわ! ただ、一緒に旅行に行きたいって言っただけで……」

「もしかして海外旅行ですか? しかもアジアの近場じゃなくてヨーロッパとかその辺り」

「な、なんで分かるの……! さては盗み聞きしていたわね!」

「言ってみただけです」


 どこからそんな発想が出てくるんだろう。

 うーん、いやでも、もしかしたらそういう経験もあるのかな?


「そりゃ、断りますよ。私たち庶民にはそんなお金無いですし」

「分かってるわよ。だからお金は出すから行きましょうって言ったのに、断られたの。結奈はわたくしと旅行に行きたくないのよ」

「行きたくないなんて結奈ちゃんが言ったんですか? 言ってないでしょう。一方的に大金を貰えるほど結奈ちゃんは遠慮知らずじゃありません」

「そうは言ってないけれど……でもお金のことなら別に気にしなくていいのに」


 むうっと唇を尖らせる三条様。


「こっちが気にするんです。お金を一方的に貰う関係なんて、まるでお金で友人になっているように思えません?」

「お金がなくたって結奈は友人で居てくれるわよ!」

「そうですね。でも周りはそうは見ないかもしれません。お金目当てで取り入ってる卑しい庶民って見られてしまうかも。三条様もお金で友人を買う可哀相な人って思われてしまうんですよ。本当はどうだって周りからそう思われていたらお互い辛い思いをするだけです」

「……」

「そういう風に誤解を招かないために、結奈ちゃんは決してお金を借りたりしないんです」

「結奈は、わたくし達のことを考えていてくれたのね……」


 まあ、結奈ちゃんの性格からして普通に大金を受け取るのが怖かったって言うのもあるだろうけどね。

 私だって宝石をぽんと渡されたら怖いもん。貢がれ慣れてる美女ならともかく私たちは一般人なんだから。

 三条様に向かって、手を差し出した。


「分かっていただけました? なら、行きましょうか」

「は? どこにですの?」

「結奈ちゃんの所ですよ。今更一人で入るのって気まずいでしょう? だからここで一人で居たんですよね? 仕方ないから私を理由にしてもいいですよ。私を誘ってたから遅れたんだって」

「貴方どうせ自分が結奈の所に行きたいだけでしょう!」

「そうかもしれません。で、どうしますか? 別に気まずく感じないならいいですけど」

「うっ、い、いいわ。貴方の策に載って差し上げる」


 素直じゃないなぁ。

 払われた手を見て、くすくす笑う。


「気まずくて入れなかったなんて結奈達に言ったら許しませんわよ」

「そうですね。三条様が拗ねていたってことも含めて内緒にしておいて差し上げます」

「はぁ? 拗ねてないわよ!」

「はいはい」


 告白相手は……先に三条様がいたから帰っちゃったんだろう。三条様と話し始めて割と時間がたってるのに現れないし。


 私と三条様が一緒に来たら結奈ちゃん驚くかな?

 ふふっ、楽しみ。





活動報告にも短い小話載せています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王子様が入らない女の子同士の友情良いね。 若干GLではあるけれどwww 学生の頃の友人って就職や結婚や出産で疎遠になりがちだから、学生の頃のこういうキャッキャした関係は貴重だったんだなぁと…
[一言] 最高 現場からは以上です
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