18◇ダンジョン
18◇ダンジョン
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その日はもうダークウルフに襲われる事はなかったが、周囲に群れが何組か常に徘徊する様になった。
ダンカンはかろうじて何か居るのは分かっていたが俺が具体的に指摘するまでダークウルフの群れとは思わなかった様だった。
隙あらば襲おうとしているのが明確だったので、ドラスラのメンバーに了解を取って脅しをかける。
具体的には各群の中で一番大きいリーダーっぽい奴を魔力の網で遠隔捕獲する。
で、そのまま網を固定して放置すると、群の他のダークウルフはその場から動けずに俺たちを見送るしかなくなるという寸法だ。
魔力の網は1時間程で自然消滅する様に設定しといたので、その後は群れは回復するはずだ。
これでダークウルフだけを乱獲せずに済むので、東の森の生態系を狂わせることもないだろう。
昼にはいつもの認識阻害と魔力の網でシェルターを作り、焼き肉放題である。
皆ガタイが大きく動き回るので食欲が半端ない。
今までは森の中では焼き物煮物が出来なかったのでその反動か、一旦決めた量以上に出せと要求して来たので魔力の網で縛ってお仕置きする。
特にクッカーのエリックは酷かった。
シェフなら食の管理くらいしろよ。
午後も同様に東の森の中を進むが、たまにストライクボアが出るくらいで特に目新しいことは無い。
そのストライクボアもドラスラの4人が殺さない程度に袋叩きにして逃していた。
下手に殺すと面倒だというのが分かってきたしな。
夕方近くまで歩いていると奇妙な魔力反応を感じた。
地面から魔力が噴き出している。
ドラスラの面々も50mくらいまで近づくと気がついた。
「これ、ダンジョンだな。いつの間に出来たんだ。今まで東の森に有るという話は聞いたことがないぞ。」
「俺も聞いたことがない。なら、俺たちが一番乗りか?」
「そうだな、まだ新しいダンジョンだろうから階層は少なそうだが。」
「どうする?潜ってみるか?」
「今日はもう遅いから明日にしません?」
俺が言うと、気が逸っていたドラスラの面々は少し恥ずかしそうに同意した。
まるで初めてダンジョンに潜る初心者みたいに思われたと感じたんだろうな。
聞いたところによると、ダンジョンの中には洞窟そのままの階層と自然をモチーフにしたかの様な階層があるらしい。
洞窟系は天井付近がぼんやり光っており、それが照明代わりになって松明やランプなどは不要とのことだ。
但し一日中同じ明るさなので時間経過が分からなくなり、体力配分を見誤って自滅する者も多いとか。
逆に自然系の階層は昼夜があり、ダンジョン外の昼夜と連動しているので昼行性と夜行性の魔物が交互に現れるそうだ。
特に夜行性の魔物が凶暴なものが多く、野宿する時は魔道具の結界で野営地を囲んで寝ずの番をを立てるのが必須になるとのこと。
さて、今夜も魔力網のシェルターで焼肉三昧である。
もういっそのこと少し前に倒してストレージに入れたストライクボアを解体して調理したらどうかと言うと、どえらい勢いで食いついて来た。
「あれ、本当に食わしてもらってもいいんか?売ったらえらい儲けになるぞ?」
「いえいえ、倒したのは皆さんでしょう。私は単なる運び屋ですので、肉の使い方は皆さんで決めてくださいよ。」
そい言うと歓声の雄叫びが上がり、早く出せとせっつかれた。
一旦野営地の魔力の網を解除し、近くにストライクボアを出して両方含む大きさの魔力の網を再展開する。
存在隠蔽魔法も掛け直し、網全体を覆う様にした。
これで周囲に気付かれることなく解体し放題である。
早速全員が解体用のナイフと骨切断用の斧を持ってストライクボアの死骸に群がった。
切り分ける端から保存を頼まれるので名前と番号を付けてもらって分類しながら収納する。
クッカーのエリックが言っているので料理用の分類なんだろな。
2時間くらいかかったが、あの巨大なストライクボアが綺麗に分類されて収納された。
解体して血が染み込んだ地面は深さ1mくらい収納魔法応用で削り取り、別枠に収納しておく。
そのまま放っておくと臭いので一旦隔離し、明日の朝出発時に土は戻すことにする。
さて、肉の量の制限が取っ払われたドラスラの食欲はどえらいものがあった。
まず一番美味いヒレ部分を真っ先に出して食い始めた。
ストライクボアはだいたい3000キラル(3トン)あるので、ヒレが2%としても60キラル(kg)もある。
これを15キラル出して殆ど4人で食い尽くした。
まぁ前世の日本人の記憶では大食い大会なるものがあり、そこでは5kg以上が優勝条件だったのと比べるとまだおとなしいか。
そうなって来ると野菜とパンが足りなくなって来そうなもんだが、奴らは肉さえ食えれば満足みたいなので特に問題は無いそうだ。
次の日の朝は俺だけお袋特製のブレックファーストセットだが、奴らは我慢出来なくなったのか朝から肉を要求してきた。
まぁ彼らの肉だから出すけど、朝から一人1キラルは食ってたな。
元気でなによりだ。
腹が満たされたことで彼らのやる気も爆上がりし、ダンジョンに突撃することになった。
そうは言ってもさすがはランクAである。
シーフのウォルトが索敵して誘導し、ブロッカーのオニールが巨大な盾で魔獣の初撃をいなし、アタッカーのダンカンとエリックが両側から攻撃して虫の息にする。
トドメはウォルトが弱った魔物の背後から延髄斬りだ。
見事な連携で、俺は後ろで見とれていた。
俺単独でも軽く倒せる魔獣ではあるが、チームプレイは独特の美しさがあるな。
1階層目は洞窟で、出て来るのは大型犬以下の大きさの魔物ばかりだ。
これに対してもドラスラはきっちり連携して倒していく。
決して単騎で倒したりはしない。
体力の配分と絶え間ない訓練代わりだそうだ。
魔物は倒してしばらくするとゆっくり床に沈み込んで消えていく。
まるでリサイクルだな。
なので、資源として持って帰りたい場合はすぐに床から浮かさないとならないそうだ。
布や板を床に敷いてそれに乗せてもそれごと沈み込むので浮かせる高さが必要ということだった。
今回は小手調べなので足手纏いになる獲物は放置する。
よっぽど価値のあるツノや牙なら剥ぎ取るが。
1階層目はドラスラにとって朝飯前の相手だったのでサクサク進んで行き、体感で昼前には2階層目に降りる階段が見えてきた。
ちょっと降りてみるとそこは草原のフロアだった。
太陽(に見える何か)は天頂に位置して薄い雲がたなびき、頬を撫でる風は爽やかで草が揺れている。
うん、ちょっと人工っぽい。
何より雲の動きが胡散臭い。
トンビが飛ぶくらいの高度を工場の白い排煙の様にモヤっと漂っている。
太陽もそんなに眩しくなく、よく見ると天空を横切る様にレールの様な物がうっすら見える。
風の匂いには機械油の臭いがかすかに混じっていた。
完全にテーマパークである。
「さて、昼飯としようぜ。準備をしてくれないか。」
「はいはい、わかりましたよ。では階段を降りたところの少し右に行った所に展開しますね。」
2階層目の階段出口から右に10m行ったくらいの場所に魔力の網と存在隠蔽魔法を展開する。
ちなみに階段の出口の両側は見えない壁になっていて触ると硬い岩の様な感触があった。
ちょっと強く目視すると俺の魔力圧に負けたのか、岩の地肌が部分的に見えた。
恐らくドーム状の階層エリアの壁を光学擬装魔法で誤魔化しているんだろうな。
天井?の太陽レールの高さの見え方からして直径10km程度かもしれない。
今回もストライクボアのヒレを12キラル出し、一人3キラルは食ってたな。
俺はそのおこぼれの0.5キラルくらいだ。
まぁガタイの寸法からして違うもんな。
飯が済むと連中は午睡を始めやがった。
食ってすぐ動くとオークになるんだと。
じゃぁ俺が居なかった時はどうしてたのかと聞くと、乾き物だと眠くなるほど食えないからオークにはならないらしい。
どんな屁理屈だよ。
さすがにランクAだけあって、例え腹一杯になって寝ても1時間もすれば全員起き出した。
寝汗をかいて顔がアブラギッシュだ。
俺が水魔法で空中に水の大きな玉を作ってやると、一斉に頭を突っ込んでガシガシ洗っていた。
たちまち水が濁ってくるので2回ほど新しく出してやる。
「いやー、出先のしかもダンジョンの中でこんなにさっぱりしたことはねーな。感謝するぜロバートさんよ。」
薄汚れていた面々が爽やかになっている。
まぁ汚いオッサンに絡まれるよりはマシなので定期的に水玉は出してやろう。
俺?
俺自身は清浄魔法でいつもイイ男だぜい。




