「エピソード41 中世編:道化編『魔術師は賽を手では振らない-封印編Ⅱ-』」
あの時は、どんな流れで内容を決めていたっけ。そうだ。確か、バトルものにしようとしていたんだった。なんとなく剣と魔法の世界にしたかった気がする。
それが、クトゥルフ神話の要素を取り入れたかと思えば、いつの間にかソード&マジックの世界観へと変貌していた。何故だったか。
『あぁ~、それそれ。戦闘シーンって文章で表現すると、どうしても状況説明が増えて説明臭くなるんだよな』そうだった。理由はそんなところだった。
剣を振るい、魔法を撃ち合う場面は映像なら一瞬だ。だが文章になると、その一瞬を伝えるために位置関係や動作、駆け引きまで説明しなければならない。
───だからだったか。気付けば物語は戦闘そのものではなく、神話や謎、世界の裏側へと興味の矛先を変えていったのだ。検めて、設定資料として 「夢境監察局の構成、目的、思想について」の資料を配置しておきます。
≪設定資料:夢境監察局の構成、目的、思想について≫
https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3494205/
≪『魔術師は賽を手では振らない -封印編Ⅱ-』プロット+制作プロセス≫
『魔術師は賽を手では振らない -封印編Ⅱ-』のプロットは、今振り返ると驚くほど大雑把だった記憶がある。
① 獣君が咆哮を上げ、立ち上がる。
② 獣君とカイルの戦闘。
③ カイルは何度も吹き飛ばされながらも立ち上がり続ける。
④ ヴィネリの魔法による推進力を受け、剣が一筋の流星となる。
⑤ その流星は一条の光となり、獣君の腹部へと突き刺さる。
⑥ 獣君の咆哮が洞窟内に響き渡る。剣が突き立つ瞬間、洞窟全体が地鳴りのように震動し、鋭い衝撃波が周囲へ広がる。
→ A:地殻変動を重ね掛けする形となり、裏舞台では来た道がさらに崩落。帰路が事実上断たれる。
⑦ クソザコだった獣君、ついに斃れる。
⑧ 闇間よりルサリアが姿を現す。
⑨ ルサリアによる執拗な追撃。
→ 獣君の脇腹に突き刺さった剣をゆっくりと捻る。
→ さらに剣の柄へ足を乗せ、体重を掛ける。
→ 冷酷というよりも、「上位者にとって弱者の苦痛など意に介さない」という印象を定着させる場面。
⑩ ⑨の行為によって獣君は完全に絶命。
⑪ ルサリアから新たな舞台への誘い。
→ ヴァルとナーレの関係性について、一枚ヴェールを剥がす形で次章へ接続する。
今見ると、本当に骨組みしか存在していない。
「獣を倒す」
「ルサリアが出てくる」
「次の舞台へ誘導する」
ほぼこれだけである。
そこに戦闘描写や会話劇、伏線や世界観設定を後から盛り付けて、一話分へと膨らませていったのだと思う。
【すんげぇカオスな設定だな……! ルサリアって誰だよ。……いや、それよりも。なんだ、この卑猥極まりないお姉様は……】
咄嗟に投入された年上のお姉様である。ちなみにルサリアは二十九歳前後の設定だ。当時の私は「妖艶なお姉様」を描こうとしていたらしい。では妖艶とは何歳くらいなのか。真面目に考えた結果。
「二十九歳より上だろう」という恐ろしく雑な結論に至った。そして誕生したのが、……いや、待て。ルサリアって誰だよ。なんで此処にいるんですかねぇ? 獣君を倒した直後に、闇の中から現れて、獲物が本当に死んだか確認するように剣を捻り回し、平然と次の舞台へ案内しようとしている。
お前は何なんだ。というか、この妙に色気だけは全力投球なムチムチお姉様は何なんだ。当時の私は何を考えていたんだろう。たぶん何も考えていない。だから突然現れたのである。たぶん、現れた後で慌てたのだ。
(やっべぇ……何か設定を入れねぇとやべぇぜ……)
そうして咄嗟に捻り出されたのが、『夢境監察局』である。魂の循環と管理を担う裏機関。
世界の裏側で暗躍し、死者と生者の境界を監視する組織。たぶん当時の私は、「このお姉様を自然に登場させるには、それなりに格の高い所属先が必要だな」くらいのことしか考えていなかった。結果として生まれたのが、夢境監察局だったのである。設定とは往々にして、物語の都合から生まれたのだ。
夢境監察局はできた。ルサリアの所属先もできた。よし、完璧だ。……何一つ完璧ではなかった。肝心の物語の行き先が決まっていない。
私は再び頭を抱えることになる。設定は増えた。だが、プロットは増えていなかった。
どうする。どうする俺。その時だった。
(あー、そうだなぁ!!)
私は一つの事実を思い出す。ダイススタッキングをまだ使っていない。ならば話は簡単だ。これを使って無理やり物語を作ればいい。よし決めた。『魔術師は賽を手では振らない -封印編Ⅲ-』は賽子を用いた儀式勝負にしよう。
戦闘ではない。駆け引きだ。そして、その過程でヴァルとナーレの心理描写を挟み込む。ヴァルには神としての使命がある。だが現時点では、その本質を見せる訳にはいかない。だから側面的な記号として扱う。
イマジナリーフレンズ。あるいは、本人すら自覚していない心の障壁。そんな形で少しずつ匂わせていく。読者には気付かれない程度に。しかし後から読み返した時、「あぁ、最初からそうだったのか」と思える程度には。そうして私は、物語ではなく伏線を積み始めたのである。
≪魔術師は賽を手では振らない、積み上げてから、横から薙ぎて──。──詰み手、搦め手を巡らせ、手薬煉を引いて待ち構える。そして賽の目を弄くり廻す。≫
【賽の目を操るに非ず。運命そのものを積み上げる。之、則ち魔法と嘯く……】
皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
『第四十一話「魔術師は賽を手では振らない──封印編Ⅱ-」』において、プロットや物語の進行意図を、わずかでも感じ取っていただけたのであれば幸いです。
こうして振り返ると、ルサリアというキャラクターは驚くほど適当に生まれている。妖艶なお姉様が欲しい。だから出した。本当にそれくらいだった気がする。
しかし問題は、その後だった。突然現れた以上、何者なのか説明しなければならない。どこから来たのか。何のために現れたのか。なぜヴァル達を知っているのか。 そうして辻褄を合わせるために生み出されたのが、夢境監察局である。
ところが困ったことに、この監察局という設定が妙に面白かった。気付けば構成員が増えた。思想が生えた。目的が定まった。組織構造まで出来上がった。そして、たった一週間ほどで設定資料が完成していた。
今となってはルサリアの方がオマケで、夢境監察局の方が本体だったのではないかと思うことすらある。全然出てこないっすね?
【巡礼編より、ルサリアお姉様が改めて再登場します。】 さて。
ここで皆様には、もう一度思い出していただきたい。この作品は何だったのか。何を描こうとしていたのか。そして、その目的は何だったのか。
巡礼編では、それらの基軸となる要素が再び姿を現します。かつて唐突に出た設定達。魂の循環と管理という思想。断片として散りばめられていたそれらが、改めて物語の中心へと引き寄せられていきます。忘れられていた伏線。そして、この物語が本来向かおうとしていた場所。巡礼編は、その再確認の章でもあるのです。
もう一度。あの日の物語と出会う覚悟は、御座いますか……?
【巡礼編をお待ちください……】




