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「エピソード37 中世編:道化編「 魔術師は賽を手では振らない-導入編Ⅱ-」

『魔術師は、賽を手では振らない』──────。


何の囃子か?


ジャパニーズ・ユーロビートの波に乗って。


囃子は鳴っている。

だが誰も叩いていない。


──それでも、賽は転がる。

ジャパニーズ・ユーロビートの律動で。


笛(篠笛)のフレーズがシンセメロに絡み、

林のように、ざわりと立ち昇る。


──ヨイサ、ハッ! ッッサ!


拍子は既に、加速している。


漢は片足で、トン、トン、とリズムを刻むが、

それすら遅い。


音が先に走り、身体が追いかける。


拍子を外し、なお堂々と、歌舞く。


【やあやぁ! この背に見えゆ。 星が見えるかぁ~? 】


ぐ、と見得を切る。


その一瞬、時間すら引き延ばされたかのように、

ビートが遅れる。


否──遅れたのは、世界の方だ。


テン、テン、テン、テン……ッ!! 


─────ヨォーーー! 日本一っ!!


喝采が走る。

それすらも、既に予定調和だったかのように。


魔術師は、賽を手では振らない……。


身体で振る。

身を捩り、拍子を外し、理を外し。


道化のように──見得を切る。


その刹那、

振られたのは、賽か。

それとも、世界か。


その一挙手一投足が、

既に賽だった。


某、傾奇者──。


『さぁさぁ! ちょいと、歌舞いて、参ろうぞ!

 いざぁ! いざぁ!! いざぁ!!! 』


………モノローグが紡がれる。

とうとう、モノローグという手段すら、

 作者の手から離れた。

 

 あるのは、作者の没入感のみというストーリー展開。

 

 既にあるのではなくて、

 今ある、不意に立ち上がる、煙を掴むようなもの。

 

 宇宙そらから吹きだした、

 誘いを、彩りを、両手で掴む行為だった。

 

 何故だか、気が付けばホラーになっていく。

 

 作者は無意識にラヴクラフト著:「宇宙の色(The Colour Out of Space)」が咲き誇って、

 割れた空から、舞い落ちた。

 

 もう、戻せないと数千文字に至る時に気が付く。

 

 【あぁ──御大よ! 赦して下さい!

  誓って、私は貴方を熾した訳ではないのです。

  その地(プロヴァンス)でお眠りください! 永久に! 】

 

 (……だが、筆は止まらない。)

 

 場面は「宇宙の色(The Colour Out of Space)」のオマージュの絨毯になっていく!

 

 (あぁ! 駄目駄目だ。 

  これでは! 御大にアイスクリーム4Lの刑にされる! )

 

 ≪──いざぁ!! いざぁ!!!≫

 

 筆が宇宙を割って、

 其処にあるものを顕現させていく。

 

 ────それが制御できない。

 これ程に、怖気が来るものだろうか?

 

 (狂気は筆に宿り、

  色は其処から紡がれる────

  余りに原色めいた、宇宙的恐怖があった)

 

 <場面的整理>

 物語はカイルの村である「エルド村」を舞台となる。

 

 (今、見直すともう少し捻ればよかった)

 

 此処ではナーレ宅からエルド村への移動シーンが一応挟まる。

 

 歩き始めて三時間と表記しているが、

 ナーレの身長を考察して、

 中世の交通網をなんとなくで決めたのである。

 

 このままで書くと酷いシーンになるので、

 風景描写を付け加えた。

 

 これで「隣村」くらいの距離感だと、思うことが出来る。

 

 (というか、徒歩感の旅路って大変だなと気づいたのは此処である。

  後半ずっと、馬車の移動が多くなるのは移動スキップの為だ)

 

 ────ちょっと困ったのは「エルド村」についてからの場面転換だった。

 

 <エルド村の入り口及び場面転換>

 

 エルド村の入り口に辿り着いた……二人だった。

 

 非常に困ったことに、

 イベントを決めずに村の前に来たのである。

 

 全く起因がないまま、

 気のままで来たのだから、

 定めし運命もないのである。

 

 (うーん! 最高に詰まった! )

 

 ──仕方なく、状況報告。

 視たことを、感じた空気を描くことに注視する。

 

 (頼むから……イベントが起きますように! )

 

 ──村の入口に差しかかる頃には、周囲はほとんど闇だった。

 

 にもかかわらず、村の中にはぽつり、ぽつりと明かりが灯っていた。松明だ。

 古びた家の軒先や小道の分かれ目に、いくつかの火が据えられている。

 

 (お!? 良いぞ 良いぞ……。 取りあえず。

  違和感よ! 今すぐに来てくれ!! 切羽詰まってる!!!  ) 

 

 カイルが松明を一本手渡してくる。

 火を手にしてなお、私は肌寒さを覚えていた。

 

「持っておけ。ここから先は、明るさ以上に“心許なさ”がついて回る」

 

 彼の声には、どこか切迫したものがあった。

 

 ──けれど、不思議なことに、光はどこまでも頼りなかった。

 まるで、この土地そのものが“夜を受け入れている”かのように。

 

 明かりが周囲に染み出すことはなく、ただ狭い円を照らしているだけだった。

 

 (ナイス! カイル! 入口に入れるぞ! )

 

 私は黙ってそれを受け取った。松明の炎が、私の手元でゆらりと揺れる。

 その光は、照らすものすべてを陰影に変え、村の奥に沈む影を、より濃く、深く見せていた。

 

 村はすでに死んでいた。否。

 

 “生きている”と口にする村人ですら、

 その瞳は腐り果てた死人のように生気を失い、

 ただ虚空を彷徨っているだけだった。

 

 生命の輝きを失ったその眼差しは、

 見つめる者を深い絶望の淵へと突き落とす。

 

 小道は足を踏み入れるのをためらうほどの悪臭を放つ泥が悪夢のように覆い尽くし、

 かつての面影を残す家々は、今や今にも崩れ落ちそうな廃墟と化している。

 

 屋根には穴が空き、壁はひび割れて風雨に晒され、

 そこかしこに黒々としたカビがべっとりと張り付いている。

 

 窓の破風はほとんど砕け散り、黒い口を開けたように闇を覗かせ、

 一部の扉は朽ちて外れ、中は漆黒の闇に覆われていた。

 

 井戸からは時折、何かを呟くような、

 あるいは啜り泣くような奇妙な気配が漏れ出し、

 それが闇をさらに深く、底なしの淵へと誘う。

 

 音なき村に響くのは、ただ死の気配だけだった。

 

 人影は確かにそこかしこにあったが、

 活動する者は一人もおらず、

 生きた者としての微かな鼓動さえ感じさせない。

 

 彼等は道端に崩れ落ちたまま、

 あるいは壁にもたれかかって虚ろな目を見開いている。

 

 肌は土気色に変色し、

 栄養失調と病がその身を蝕んでいるのが見て取れた。

 

 まるで時間が永遠に止まってしまったかのように、村は静かに、しかし確実に朽ち果てていく。

 その光景は、訪れる者の心を凍てつかせ、背筋に冷たい雫が伝うのを感じさせた。

 

 (今、メインストーリー別ウィンドウで見てるけど。

  これくらいに段落付けた方が見やすいわね……

  サブ連載を書きつつ、メインストーリーを修正していく)

 

 【漢が道化を演じながら、

  鮮やかな手口で誤魔化す】

 

「おまえには……聞こえないのだろう……あの歌が……。井戸から……空から……ただ……響くだけ……」

 途切れがちで、掠れた声が、まるで消えゆく命の残滓のように闇に溶けていく。

 

 (アカラサマな原作リスペクトだな!?

  御大……俺は別の軌跡ベクトルで紡ぐことにするよ! )

 

 鮮明にその言葉の断片一つ一つが、

 私の意識を捕らえ、心の奥底まで確かに縋りついてきた。

 

 次の瞬間、村人の体がずるりと傾ぎ、

 生気の失われた重みがぐったりと私の体に乗りかかってきた。

 

 私は反射的に身を硬くし、

 胸にのしかかる冷たくて忌まわしい感触に、全身に鳥肌が立った。

 

「封じた者も……聞けなかった……。そう……この歌だけは……」

 

 

 血の気を失い、青ざめた唇が、かろうじて次の言葉を紡ぎ出す。

 

 その声は、もはや息をすることさえも苦しいのだと、その全身で訴えているようだった。

 喉の奥から絞り出すような音は、彼の苦痛が極限に達していることを示していた。

 

 ただ、彼の虚ろな瞳の奥には、確かに狂気と、

 そして何としても伝えようとする必死な光が宿っている。

 

 それは、わずかに残された理性が、最後の望みにしがみついているかのようだった。

 

「村は……ただ、“次”を待っていた……ずっと……。終わり、だ……」

 

 最後の言葉は、ほとんど聞き取れないほどの囁きだった。

 

 (流石に御大も井戸の水が干上がっていく、

  吸い込まれていく! なんて考えないだろう!

  ククク──。これは後に回すかぁ! )

 

「……こんな、こんな場所、来るべきじゃなかった……」隣に立つカイルが、

 苦い表情を浮かべながら私に向き直った。

 

 (何を言っているんだ! 青年よ!

 こんな宇宙的恐怖の前に! ワクワクしてきたぞ。

 最高に気違いになりそうだ! )

 

「すまない。俺は、こんな場所になっているとは思わなかった。 ……でも、この村は、俺の故郷なんだ」

 

 彼の言葉は、この村が辿ったであろう悲劇を、

 そして彼の心に宿る無力感を静かに物語っていた。

 

 故郷が変わり果てた姿への衝撃と、

 私を巻き込んでしまったことへの自責の念が、彼の声には滲み出ていた。

 

 (最高に気違いになる場面だというのに!

 湿ってきたな……

 湿って……ヨシ! 此処に老婆を一摘みして。

 カイルと知り合いだってことにすれば……)

 

 そのとき──村の奥、朽ちかけた家々の影から、新たな人影が滑るように現れた。

 

 それは、ひとりの奇妙な老婆だった。白髪は乱れ放題で、まるで枯れ草のようだ。

 

 顔は深く刻まれた皺に覆われ、まるで長い年月と苦悩が刻み込まれた地図のようだった。

 その皺の一つ一つが、村の秘密を語っているかのようだ。

 

 何よりも目を引いたのは、

 その目の焦点がまるでこの世のものではないかのように宙を彷徨っていることだった。

 

 彼女の瞳は、狂気と、そして何か遠いものを映しているかのように、

 どこまでも虚ろで、底知れぬ闇を覗かせた。

 

 (おおっと! 御大も満足するような、狂気の御方がズィーと出てきたな! )

  

  奇妙な老婆の出現を目の当たりにした途端、カイルの顔から見る見るうちに血の気が引いていく。

 

 その蒼白な表情は、

 目の前の老婆がただの狂人などではないことを、

 雄弁に物語っていた。

 

 まるで、彼女の存在そのものが、

 彼の知る世界の法則をねじ曲げているかのようだった。

 

 彼は無意識のうちに、私を危険から庇うように半歩前に出る。

 その動作は、彼女から私を守ろうとする本能的な衝動だった。

 

「ヴィネリ……まさか、あんたまで……」カイルの喉から絞り出されたその声は、

 驚きと、そして拭い去れない深い絶望が入り混じっていた。彼はその老婆を知っている。

 

 それによって、彼女がここに現れたことが、

 何かしらの決定的な破滅を意味しているかのように、その場に立ち尽くしていた。

 

 彼の足元から、地面が崩れていくような、そんな錯覚を覚えた。

 彼の視線は、ヴィネリの存在がもたらすであろう未来の暗さに囚われていた。

 

「……来たか。双つの声を宿す、客人……」

 

 (マロウドなのか? 外人のまろうどなのか……?

  作者の頭の中で、TECMO作品「零」シリーズのライトが点滅し始める。

  ……………………客人という言葉に、異様に躊躇してしまう作者が居た)

 

 (作者の手に射影機(サーチライト)が携わった。

  『ファインダーに越しに捉えた瞬間、フィラメントが赤く点滅し、シャッターチャンスを告げる』

 

  ──パシャァ……。

 

  何度も目にしてきた光景だ! 

  何度も目にしてきた、何度も目にしてきた! 何度も目にしてきた!!

 

  フィラメントが赤く点滅し──。

 

 『怨霊』がリストに追加ファイルされた。


  ────何度もベストポジションを、何度もやり直す。


  何度も同じ場面を見直す。

  同じルートを繰り返す……。

 

 作者は三部作をやりこんだ。

 厭という程に()()()()────)

 

 <歌を喰った。運命を呑んだ……獣の名は忘れられたが、その気配だけは村に残った。

  空が泣き、井戸が唄い、地の底から運命が滲み出す……その運命に、村人は染まった>

 

 (まるで、紅い蝶だな…節操というものが知らないのか?)

 

 (作者は天野月子の「蝶」の歌詞を思い出し始めた。

 ────────────そういえばこの二作目と三作目はやりこんでた…)

 

 <その声の主はかつて、封じた者の末裔。

  だが、もう人ではない。伝承と狂気の淡いに沈んだ声だ>

 

 (作者はフラッシュンバックした。

  隧道、洞穴、儀式巫女、楔、釘、儀式、

  蝶、異界────────)

 

 その瞬間、私は理解した。

 

 この狂気に満ちた村で、誰よりも真実を知るのは、

 最も深く狂気に囚われた者だけなのだと。

 

「ナーレ……? 君……一瞬、意識が無かったように見えたが?」

 

 私は答えに迷った。

 この異常な状況で、彼に何を伝えるべきなのか。

 真実を話せば、彼を更なる混乱に陥れるだけかもしれない。

 

 ヴァルが、まるで慎重に言葉を選ぶように、

 私の脳裏に念じた。その言葉は、迷いを断ち切る確かな響きを持っていた。

 

 ≪言うべきではない≫

 

 ヴィネリはなおも語る。

 その声は、狂気を孕みながらも、悠久の時を語る預言者のようだった。

 

 その言葉には、途方もない知識と、そして深すぎる絶望が込められている。

 

 かつて、獣を封じた魔術師たちは、その戦いの末に精神を失ったのだという。

 それは、抗いがたい運命に抗った代償だったと。

 

 そして、今、この村に蔓延る「諦念」は、魔獣が運命を書き換え、

 その絶望を村人の魂に深く確定させた結果なのだと。

 

 彼女の言葉が、村の悲劇の全容を少しずつ明らかにしていく。

 

「逃れられぬ運命があるということを、

  彼らは受け入れてしまった。 そうして、全てが壊れた」

 

 ヴィネリの声が村の空に響き渡る。

 

 その音は、死にゆく者の苦しみか、

 あるいは村の魂が絞り出す悲鳴なのか。

 

 私は、自らの内に宿る“もう一人”の存在、

 ヴァルと共に、この深い狂気と絶望の中に立っていた。

 

 しかし、そのすべてを受け入れ、

 なおも心の奥底で反発する確かな意志が、私の中に灯っていた。

 

 ≪ならば、私は力を貸そう。君の“意志”がある限り≫

 

 井戸の奥からは、まるで村の終焉を告げる歌のような、

 不吉な破滅の旋律が聴こえてくるような、そんな恐ろしい錯覚に囚われた。

 

 その音は、

 私達を、

 そしてこの村を、

 深淵へと引きずり込もうとしているかのようだった。

 

 (私を見つけに、私を一つに)

 

 作者のインストールが完了した──────。

皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


『第三十七話「魔術師は賽を手では振らない-導入編Ⅱ」』において、

プロットや物語の進行意図を、わずかでも感じ取っていただけたなら幸いです。


【えっと……何かを言いたい。 そういう眸になってますよ? 】


【だから、言ったじゃないか?

 色々なジャンルに興味を持てって──】


【モンタージュ・コラージュってことで……】


【御大も赦しては下さるでしょうが、

 どうやら彼は白人主義の気配を帯びていたらしい。

 となれば、私が出向けば最後、

 “アウトサイダー”扱いは免れなかったでしょうね】


【私は好きですけどね。

 たとえ拒まれると分かっていても――

 タイムワープが叶うなら、御大に会い、

 『ダゴン』の原初を覗いてみたい】


【――それこそが、

 “アウトサイダー”の務めでしょう】

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