「エピソード27 中世編:端艇變(たんていへん)『喪われた三枚銅貨-導入編Ⅰ-』」
≪──僕をこのままにして、そっちへ行く気か?≫
【ああ。それがどうかしたか?】
≪僕をどうしたいんだよ≫
【さあな。まずは淑女相手に礼儀を学んで来い】
≪改めて、その話を掘り返す刻ではあるまい……≫
【説明は要る。ヴァル。
何事も端艇だ。
波に任せれば漂うだけだろう?
ならば、俺達が櫂を握る】
≪だからって────それなのか?≫
【始点と視点を絡め、何度も組み直した。
結論は一つ。
先ずは小手を磨く。それだけだ】
≪城下町案内が、どうして謎解きになる?≫
【バグが出ている。
正規ルートは使えない。
だから、迂回する。
それが今の“謎解き”だ】
────っどうも。
タイトルは最初から、引っ掛けだったらしい。
彼の中で、何かが“バグ”っている。
さて──
何が謎解きなのか。
読者諸君、考えてみて欲しい。
作者である私はチェックシートを準備した。
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□現代編
□夏枝の設定、構成 →異常なし
□転生設定、歴史考察 →異常なし
□精神心理描写 →異常なし
……全て、正常。
□ナーレ(中世時代)
□ドラム・ロール →異常なし
□世界設定 →異常なし
□友人設定、関係性 →異常なし
□神話体系、基盤設定 →異常なし
□国家・設備・生活様式
それらに付随する世界観設定
→異常あり。
MAPなし。
アトラクションなし。
□エンディングロール1 →確立済み
□エンディングロール2 →確立済み
□エンディングロール3 →確立済み
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□************(十九世紀編)
□ドラム・ロール →確立済み(8割)
□エンディングロール1 →確立済み(8割)
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□************(現代編:2025年 未来IFの世界。中世より2500年の平行世界)
□ドラム・ロール →確立済み(8割)
□エンディングロール1 →確立済み(8割)
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□************(あとがき)
□こちユルのセルフ監査 →確立済み(8割)
□査定判定 →確立済み(8割)
□次回作品の紹介 →不確定要素、ジャンルジャンプの可否を再考せよ
□こちユルの結論─最終的なエンディングロール →確確立済み
□最終的なエンディングロール
□エンディングロール1 →観測済み
□エンディングロール2 →観測済み
□エンディングロール3 →観測済み
□エンディングロール4 →観測済み
男の頭には設計図がある。
しかし、その肝心な一枚が欠けている。
【設計に欠落がある。
正規解は存在しない。
だから最短ではなく、最適を選ぶ】
「最適と最短は一致しない、と言いたいのか?」
*********************
『喪われた三枚銅貨』は、物語より先に思想があった。
この時間軸の私は、現代編の転生シーンに異様なまでに執着していた。
それは単なる設定ではない。
この物語は、巡礼の思想のもとにある。
歩むこと。
回ること。
欠けたまま進むこと。
終わりへ向かうのではない。
巡りながら、観測するのだ。
「そうだな……そこら辺に銅貨が落ちている。
──拾ってこい。
神がそう創った異世界だ。
だから、あっちこっち歩くしかない」
【呆れた奴だ。
謎解きは部屋の中じゃ終わらん。
謎を解くなら歩け。
外へ出るための物語なんだ】
結局のところ、
「外へ出ろ」という話だった。
この異世界に、生活の匂いを与えたかった。
読者に歩いて貰いたかった。
そうでなければ、
私もこの世界に立っていられない。
まず、手っ取り早く。
アヴェーラがナーレの家をわざわざ訪ねてくる場面を挟みたかった。
そのために、ナーレが実際に衣服を着替える描写を入れた。
彼女が“そこに生きている”存在だと、
自分自身の頭に刻み込むためだ。
(ここで母親との販路の話を入れれば、
世界設定を自然に差し込める。
回収もできる。
横にも広がる。
構成としては悪くない。
……そう思った。
その結果が、今だ。)
馬車が門前に止まるところまで描いた────
違和感が、筆を止めた。
(────────?)
私は玄関に立たった。
馬車は、そこに在る。
だが、因果がない。
馭者がいない。
御付きもいない。
動力のない到着。
【誰が、これを動かした?】
『家政婦だよ。
御付きも馭者も兼任だ』
【あぁ──成程。
それなら、因果は繋がる】
〖馭者台に家政婦を立たせる。
彼女は、ずっとそこに居た。
ただ、見えていなかっただけだ〗
アヴェーラの御付きである家政婦、エスリン。
彼女は、当然のように其処に立っていた。
だが当然である以上、
二人の関係を語らねばならない。
しかし、表向きは初対面だ。
エスリンは既にナーレを知っている。
アヴェーラから聞いているからだ。
だがナーレは、何も知らない。
アヴェーラは突進する。
抱擁のルートは確定していた。
しかし、
そこに割り込ませた。
エスリンという“制御装置”を。
電荷のような緊張。
一歩の静止。
それで、構図は整う。
静止ではない。
介入でもない。
整備だ。
泥道に絨毯を敷く。
それだけで、
感情の突進は“作法”へと変換された。
(おそらく、これは少し厄介な思想構造なのだろう。
エスリンは、アヴェーラを守ったのか。
ナーレを守ったのか。
それとも──秩序を守ったのか。)
そんなことを考えながら、
私は筆を滑らせた。
当人たちは真面目だった。
しかし、
端から見れば完全にイチャコラだ。
ここで、フィーネという“引っ張り役”が必要になる。
圧倒的な配慮だった。
(このイチャコラを見せられて、彼女はどう思うのか。
たぶん、早くしてほしいのだ。
それに──
自分が探偵のような役回りをさせられていることにも、
疑問を抱いているはずだ。)
喧騒を断ち切るように、
場面は馬車内へ移る。
フィーネは座席に身を預け、
何かを考えるように外を見ている。
視線は、
薄いベール越しだ。
視線が噛み合わない。
アヴェーラは一点集中。
ナーレは全体を観測。
ナーレは進行方向に背を向け、
左にアヴェーラ。
左斜め前にフィーネ。
配置としては破綻していない。
ナーレの真正面にはヴァル。
そのため、座席はひとつ空く。
馭者台に上がる足音。
鞭が鳴る。
次の瞬間、馬車が揺れた。
止まっていた世界が、ようやく進み出す。
以降は馬車内の描写だ。
だが、いくつかはナーレの五感を通したものになる。
ナーレは、何かあればすぐに視る。
景色。
人の表情。
空気の揺れ。
観測することで、場を掴む。
だから彼女は、
格子戸から外を覗こうとして、
椅子に膝を立て、身を乗り出す。
それは衝動ではなく、
彼女の習性だ。
やがて、馬車が揺れを収めて止まった。
膝を立てていたナーレの視界は、
わずかに高い。
彼女は外を見下ろす。
実際の高さは大したことはない。
だが感覚としては、少し上から。
観測者としての距離を、
無意識に取っているのだ。
城門前。
エスリンが馬車を止め、
通行証を提示する。
相手は衛兵モーディン。
彼の態度には、
この町の“外の論理”が滲んでいる。
侮蔑。
値踏み。
わずかな卑下。
「身分も何も? あんたを見りゃ分かるさ。
でかでかと商会名を掲げた馬車で乗り入れてるんだ。
それに平時だろ? 提示なんてしなくても素通りできるじゃないか」
彼は嗤っている。
だがその声音には、
“不要だ”と断じる硬さがあった。
徽章もある。
誰の馬車かは一目で分かる。
(この商会は、何度もここを通っているはずだ。
それでも彼は、妙に厭味だ……。)
ナーレがその一一部始終を観察していると、
モーディンはエスリンの言い合いが始まる。
「でも? それが、あなたの仕事でしょ?」
「わかったわかった……カードと馬車の中、見せてもらうぞ?
もし本当に死の武器商人だったら、笑えねぇからな」
(どうにも、しっくりしない。
彼と彼女の関係性がピンっ!と張っているようで、視えない。)
モーディンはぶつくさと文句を言いながら、
カードをじっと睨みつけた。
その目は、やけに鋭い。
冗談を言っていた男の目ではない。
(なぜそこまで鋭いのか。
私には分からない。
取り払ったベール越しに見ても、
分からない。)
ナーレは静かに見ていた。
モーディンはカードから目を離し、
馬車へ視線を向ける。
そして──
ナーレを見た。
視線が、内と外を行き来する。
「なんだよ? モーレイのお嬢ちゃんじゃねぇのか。エスリン、どういうことだ?」
「あれはお嬢さまのお友達でして……。
遊びに来たと伝えたのですが」
モーディンの鋭い視線が、格子戸の隙間からちらりと馬車の中を覗く。
エスリンは慌てて答えながらも、わずかに眉をひそめた。
************
ここからは補足である。
この場面におけるエスリンとモーディンのやり取りは、ナーレの直接視点では描写されない。
馬車内の五感的な描写と、外側の会話劇によって構成されている。
ナーレは馬車の中に座っている。
この場面は、彼女の観測を通した間接認識として扱う。
***********
男は鼻で笑い、周囲の衛兵たちをチラリと見渡す。
「はぁ……? こんな城下町に遊べる場所なんてないだろ。よっぽど暇してるんだな」
彼の声には苛立ちがにじむが、どこか面倒くさそうな様子も混じっている。
「とりあえず、ざっと見るぞ」
「ええ、どうぞ。ただし、お嬢様方に粗相がないようにお願いします」
エスリンはぴんと背筋を伸ばし、緊張した面持ちでそう告げた。
「へいへい、分かっておりますよ、従者殿。
大切なお嬢様に手を出すわけにはいきませんからね、
そうそう…大切なものに手を出す訳がないだろ」
「そうですよ。貴方も子供は欲しいんでしょう?」
男はくすっと笑いながらも、警戒の目を緩めない。
「そうりゃそうさ、なんだ?あんたらそこまで……!?、刈り取るのか?」
モーディンという衛兵はまじまじと自身の股間を凝視していた。
「必要なら摘出しますよ」
エスリンの声は冷たく、男の挑発に決して動じていない。空気が一瞬張り詰めた。
此処での描写はエスリンがすごく、
強い女性というような印象を得られると思う。
此処でのエスリンは境界線上に居る盾的な存在だ。
(彼女に色々と熨斗を付けて、仕事を依頼しているのは、私なんですけど。
可能な限り怒らせないようにします。)
「おぉ、怖い怖い。だからあんたはそんな年齢で独り身なんだな。俺は御免だぜ」
モーディンが云いうように、エスリンは未婚者です。
「私も、そんな下品な話を口にする男とは結婚しませんよ」エスリンが返答していますが。
何故、こうもコミュニケーションは出来るんでしょうね?
(つまり、これはアフターストーリーになる。
いずれ書くかもしれないし、
読者の想像に委ねる形になるかもしれない。)
モーディンは軽口を吐きながら、馬車に近寄り、中を検める。
このときの彼は、いわば“仕事モード”だ。
口調は軽いが、態度は真面目である。
「……ガキしかいねぇのかよ」
そう言いながらも、それは本気の確認だった。
死の商人ではない。
高貴な空間で、少女たちがイチャコラしているだけだろう──
そんな予想を、彼はしていた。
だからこそ、無駄な警戒はしない。
パタン。馬車の扉が閉じられて、
またエスリンとモーディンが会話に入ります。
「エスリン! もう行け。俺も暇そうに見えるかもしれねぇが、暇じゃねぇんだ。」
「そうですか。それはそれは……遊びにお忙しいのなら、暇ではありませんね」
「うるさいぞ、エスリン。俺に権限があれば、気分で通さないところだ。早く入れ」
「はいはい、衛兵さん、そこのけそこのけ、馬車が通りますよ〜」
モーディンは実際には業務中である。
エスリンが「遊び」と言ったのは、彼の行動様式を揶揄した表現に近い。
彼は普段、賭け事をして時間を潰していることがある。
途中で衛兵が登場する描写があったが、
あれは賭け事の最中にエスリンたちを認識したためである。
つまり此処のモーディンは外野として、対応している。
「おう、入れ入れ。馬でも嬢ちゃん方でも通りやがれ!」
男は威勢よく声を張った。
こうして、馬車は石畳の道をゆっくりと進み始める。
このときのモーディンは、仕事が終わったことを内心で理解している。
本音では、早く賭け事に戻りたがっていた。
馬車はやがて石畳の道に入った。
揺れが穏やかになる。
「お嬢様、街に入りました」
馭者席から、エスリンの声が届いた。
門前の道は、泥と石が混ざった不均質な路面だった。
だが城下町の内部は、整地された石畳が敷かれている。
だから揺れは静かになる。
「それにしても、酷い衛兵でしたわね」
「お嬢様方には歯牙にもかからない者です」
エスリンとアヴェーラは、
馭者台越しに言葉を交わしていた。
馬車の扉が、ぱたりと開く。
涼やかな風が、車内へ流れ込んだ。
エスリンは静かに絨毯を敷き、
フィーネとナーレの二人を丁寧にエスコートした。
アヴェーラがエスコートされるのは、当然のことだった。
「それでは、夕方にまたここでお待ちしております」
門前を指さす彼女の視線は、
静かな自信に満ちていた。
「わかりました。またここで」
アヴェーラの言葉を受け、
エスリンは手際よく絨毯を回収した。
鞭の音。
馬車は静かに去っていく。
交差点を曲がり、
来た道を戻る車輪の音が遠ざかった。
「さあ、行きましょう?」
アヴェーラは先頭を歩き出す。私達は彼女に続き、
街の石畳を踏みしめながらパン屋へ向かった。
(この場面のフィーネは、どちらかと言えば渋々といった様子だ。
ナーレは、父の商会の手伝いで城下町に来ることがあるため、街自体には見慣れている。
しかし、フィーネを含めた三人で訪れるのは、これが初めてである。)
(───エスコートは完了した。
次回、**アウローラ神聖国**がどのような国であるか、改めて説明しよう。)
皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
『第二十八話「喪われた三枚銅貨─導入編Ⅰ─」』において、プロットや物語の進行意図を、わずかでも感じ取っていただければ幸いです。
さて、改めて。
三枚銅貨の意味について、説明を忘れていました。
結論から申し上げますと──
思い出して欲しいのは、『カロン』です。
────以上です。




