「エピソード18 中世編:追加する燃料『 不揃いな三拍子』」
僕は、これまで読者の皆様を甘く見ていた。
そのことを、静かに、しかし深く反省している。
僕は、これまで読者を信頼していた。
それを、静かに信じていた。
だから、もういい。
「ずっとそこに居ろ」
作者は苦行を背負い、
PVは情け容赦がない。
それでも、まあ──
理解はした。
君達は程度を知らない。
いつも同じものを欲しがり、
他人の見る「~なろう」を眺め、
それで満たされた気になっている。
血の気だけは盛んで、
中身は空っぽだ。
君達は御立派な──
獣だ。
そういう奔流があるを理解した。
支流に来たい奴だけ此処に居なさい。
「もう──還っていいぞ?
もう、こっちに来なくていい……。
互いの『~なろう』に逝け。不愉快だ。」
「分かった奴だけで構わない。
先に進んで良い。」
ナーレの友人たちを決めるとき、私はまず「彼女とどう関わるか」を三つのタイプに分ける必要がありました。
そこで一番最初に作ったのがアヴェーラです。
彼女は貴族の出身で、ちょっと高飛車。でも分かりやすく、存在感のあるキャラクターにしたかったんです。
ところが、物語の都合で、フィーネを先に登場させることになりました。
フィーネはメーテール学園の“共学”設定から自然に生まれたキャラクターです。
元は男の子の設定で、正義感が強く、ルールから逸脱するのが苦手な性格。
だからこそ、学園という舞台で彼女がどう動くかを見るのは、とても面白い作業でした。
物語が進むにつれて、ナーレの行動が手に負えなくなってきたのも事実です。
そこで、フィーネをナーレのリード兼“首輪係”に任命することにしました。
すると、これまで前提にしていたアヴェーラの立ち位置が少し崩れることに気づきました。
そこで急遽、彼女の身分を少し下げて、貴族ではなく商家のお嬢様として設定し直したのです。
こうしてバランスを取りつつ、キャラクターたちの関係性を微調整していきました。
本来、ep.18「不揃いな三拍子」の序盤では、薬草学の授業風景を描く予定でした。
フィーネとナーレが薬草を煎じる、ちょっとした授業シーンです。
しかし、ep.17で既に授業シーンを挟んでいたため、
今回はアヴェーラの登場回に注力することにしました。
その結果、薬草学の描写は残念ながらカット。
でも、その分、アヴェーラのキャラクターや関係性に集中できたと、私は納得しています。
私の中でアヴェーラは、金髪というより淡い金色のストレートヘアーをイメージしています。
その一方で、フィーネは茶髪で、どちらかというとボーイッシュな髪型です。
それ以外の細かい部分は、物語を進めながら自然に形作られていく予定です。
先ず説明したいのは、
こちユルのヒロインの三人は髪型と髪色しか設定していないのが特徴です。
我が主人公ナーレは、赤茶色の髪をしています。
髪は箒のように束ねられ、後ろから前へと流れるスタイル。
いわゆる“幸薄ヘアー”というイメージです。
その髪型ひとつで、彼女の少し不運そうで、でもどこか愛嬌のある雰囲気を表現しています。
さて、18話では、ナーレの人柄をじっくり掘り下げる内容になっています。
その最中、ナーレは日常における料理について、自分なりの持論を展開中。
二人のやり取りを通して、ナーレの自由奔放さやフィーネの料理の価値が際立つ回でした。
フィーネは、両親が日常的に不在がちなので、料理や日常生活のほとんどを一人でこなしています。
だからこそ、ナーレを見ていると不安が止まらない様子。「この人の将来の食卓、大丈夫かな…」
といった表情で、未来の惨状を想像して絶望しています。
「お願いだから、せめて基本だけはマスターしてよ……」フィーネのその切実な訴えからは、心配性で世話焼きな性格がよく伝わります。
それに対してナーレの答えは、
「だいじょーぶ! 食べる前に“やばい”って分かるから!」という、ちょっと酷いものでした。
ニコニコしながらこの答えを言うナーレを見て、
フィーネの顔が青ざめてしまうのも、仕方のないことです。
ここでは、自由奔放なナーレと、世話焼きのフィーネの対比が際立っています。
一旦、このやり取りは一区切りでしょう。
そして、場面転換──
その場に投入されたのがアヴェーラです。
「そうはならないように、ちゃんと調整しないとダメですわ~」
──ふたりの背後から、のんびりした口調で二人に割り込んできます。
メインストーリーでは、彼女が「“目盛りで量らなくても大体でいい”──あたりから」登場しているように描かれていますが、作者的には冒頭から二人の後ろに控えていたと思っています。
そうでないと、「それで、お昼はまだですのよね? もしよろしければ、私もご一緒しても?」
という台詞が自然に出てこないからです。
つまり、最初からナーレとフィーネが描かれていない幕間の間に、アヴェーラは前もって「お昼に行こうよ?」という台詞を耳にしていた、ということになります。
だから、自然に二人の後ろに控えながら登場できた──そんなイメージです。
「……また何か企んでるでしょ?」
ナーレが不安になるのも無理はありません。
というのも、アヴェーラには前科があります。
「良かれと思って新しいジャムができましたわ~」
と言い出し、過去にとんでもない結果を招いたことがあるのです。
その時、アヴェーラは十二種類ものジャムを作りました。
ナーレはそれを両親に渡したのですが──結果、
三週間、三食すべてジャムパン生活を強いられることになりました。
ここで言う“三週間ジャムパン生活”とは、
朝昼晩すべてジャムパン、という意味です。
なお、『こちユル』における「ジャムパン」は、
一般的な日本の菓子パンではありません。
作中では「ピザ生地のようなパンにジャムを塗ったもの」という扱いになっています。
そもそも「ジャムパン」は日本発祥の食べ物であり、
中世五世紀の世界には存在しません。
そこで設定上、メソポタミア文明におけるピザの原型──
トマトソース以前の“塗る文化”を拝借し、
「生地+甘味」という形に落とし込みました。
作者の中では、ここから派生して、
現在の「タルト」へと繋がるIFの歴史が生まれた、というイメージになっています。
ここから話はフィーネが制御役、
アヴェーラはやや暴走気味、
そしてナーレは悲観気味、
という役割分担で動き始めます。
「なんで毎回、私だけ……」
ナーレは小さく、ほとんど独り言のように絶望の声を漏らしました。
それに対してアヴェーラは、うっとりとした表情で、どこか夢見がちに言います。
「だって、そういうときこそ――私、輝けるんですの♪」
アヴェーラは最初からナーレを好き好きしてます。
それについてはメインストーリーで明かされるでしょう。
「フィーネ、助けてよ……」
ナーレは懇願するようにフィーネを見ます。
けれどフィーネは、苦笑を浮かべるだけでした。
諦めている、というより――
自分がターゲットではないと分かっているからこその余裕です。
「諦めなよ。ご令嬢さまは、私じゃなくてナーレにぞっこんなんだから」
どこか呆れ混じりのその言葉は、
フィーネが状況を把握したうえで、あえて一歩引いていることを示しています。
ナーレの願いは、ここではモノローグとして明かされる。
(お願い……もう理不尽が、自分の足で歩いてくるのはやめて……!)
(神よ……ここに救いを求める乙女がいます……ここです、ここ!)
人生において、制御不能なものは確かに存在する。
それらは前触れもなく、急に身近へと飛び込んでくる。
闖入者。
未確認で、なおかつ進行形の災厄だ。
「それでは、まいりましょうか♪」
アヴェーラは“ご令嬢”らしからぬ握力で、ナーレの腕をがっしりと掴み、そのまま引っぱっていきます。
フィーネは「やれやれ」と肩をすくめながら、その後ろをのんびりと歩き、三人は食堂棟へと向かっていきます。
18話では、この時点でフィーネとアヴェーラの役割がはっきりとスイッチしています。
制御役だったフィーネは一歩引き、代わりにアヴェーラが主導権を握る。
つまりこの場面、ナーレは完全に“制御されている側”というわけです。
19話に入ると、アヴェーラはナーレにひとつのお願い事をしてきます。
それはまったく新しい出来事であり、前触れもなく、突然身近へと飛び込んでくるものです。
この場面は、「新しい門出として」という言葉を合図に、
いくつかのフラグが立つ瞬間でもあります。
そこから物語は、次の二つのルートへと分岐していきます。
・ルートA:ep.19「アヴェーラのお願い」
・ルートB:ep.20「ナーレが選別される時」
既にに全てのルートを経験して下さった読者の皆様には、この先にどのような未来が待っていたのか、お分かり頂けていることでしょう。
ひとまず、このあたりで説明は区切りとさせて頂きます。
皆さま、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
『第十八話「不揃いな三拍子」』につきまして、
そのプロットや物語進行の意図を、少しでも感じ取っていただけていれば幸いです。
こちユルのヒロインたちは、
一見すると少々ゆるい……いえ、余白の多い設定で描かれていることに
お気づきになった方もいらっしゃるかもしれません。
とはいえ、彼女たちはまだ十三歳。
中世五世紀という時代背景を考えると、
身長や体格についても、あのあたりが妥当だろう──
そんな作者なりの解釈が反映されています。
なお、作中に登場するジャムパンについては、
もしご興味がありましたら、ぜひ皆さまで調べてみてください。
メソポタミア文明から続くパンの歴史、
そこから派生するピザや酒文化などを辿っていくと、
意外と面白い発見があるかもしれません。
『こちユル』は、作者自身の中では
いわば「ノベルビジュアル作品」のような感覚で書いています。
そのため、多くのキャラクターはまず“名前”と“立ち位置”だけが先に存在し、性格や細部は、物語が進むにつれて場面や会話の中で少しずつ形を得ていきます。
完成された人物像を最初から提示する、というよりは、
読者の皆さまと一緒に「立ち上がっていく過程」を
見守っていく──
そんな書き方をしている作品です。
また、ルートA/ルートBの分岐については、
アヴェーラが物語に本格的に関与した時点で発生します。
彼女は、ミステリー要素と本編の「選別の儀」――
その両方を呼び水として設定された存在だからです。
この点については、次回あらためて触れていこうと思います。




