「エピソード17 中世編:それでは本気と行きましょ? 『 観念と理念』」
僕は、これまで読者の皆様を甘く見ていた。
そのことを、静かに、しかし深く反省している。
だから、これからは――
作者は、物語の影に身を潜める。
今までの遊びは、そっと幕を閉じる。
『お遊びは、もう終わった』
これより、ただ、物語と向き合う。
君たちも、きっとそれを望んでいたはずだ。
責任をもって、答えよう。
これ以降、本文と私の説明が入れ子になる。
分かりづらいので『=』で囲い。『作者メモ(脚注扱い)』として説明する。
宗教関係方には先にお詫びしたい。
<この作品はフィクションです。
全てにおいて、全ての方の価値観、全ての宗教観における気品を損なわれるようなことがございます、
その全てに対し、真実を与えるつもりはございません。>
<これから行わる、四方山話は残響でございます。>
「えぇ──と、まずは皆さんに、私たちアウローラ神聖国の土地柄について授業します」
ネル先生はそう言うと、教室の正面にある粘板岩に向かい、石の棒で大きな島の絵を描き始めた。
左右には、大小異なる二つの島。
左の島には「ツランド島」、右の島には「リブラン島」と、ネル先生は大きく文字を書き入れる。
「アウローラ神聖国は、ツランド島にある中規模の国です。
この島の東南部、“デレイン地方”に位置しています」
ネル先生はツランド島を指しながら説明を続ける。
「アウローラ神聖国は、ツランド島にある中規模の国です。
この島の東南部、“デレイン地方”に位置しています」
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作者メモ(脚注扱い)
ツランド島:名前は「ツンドラ」を並び替えただけ。
デレイン地方:当初はアウローラ神聖国自体をコノート地域として設定していなかった。
アイルランドの「ダーク湖」にあるキラロー付近をモデルにした名残。
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「中海を挟んで東には“リブラン島”があり、
そこには大小さまざまな国が領土を主張しあっている“セッチ王国”があります」
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作者メモ(脚注扱い)
ネル先生は大昔のイギリスである七王国時代の話をしている。
“セッチ王国”のセッチはアイルランド語で『7』を意味している。
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「この地域では、領地を巡る争いが絶えません。
そんな小競り合いがツランド島にも波及し、“宗教改革”という名の小規模な侵略行為が起きたのです」
ネル先生は教科書を読みつつ、私たちの顔を見回して退屈していないか、目で確認してくる。
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作者メモ(脚注扱い)
実際にイギリスからアイルランドへ「キリスト教」が伝播した史実をもとに、
ここではそのことを語っている。
アイルランドではそれ以前、「ドルイド教」が信仰されており、
「キリスト教」と交わることで、「ケルト教:キリスト教」という状態となった。
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こうした小競り合いが何十年も続いた結果──
この国では独自の宗教観が育まれていくことになる。
それが「ティダルト宗教」。
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作者メモ(脚注扱い)
「ケルト教:キリスト教」=「ティダルト宗教」というのが、
アウローラ神聖国の宗教観となる。
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「古来の土着信仰と、リブラン島から伝わった“モリック宗教”が融合して生まれた独自の宗教よ」
ネル先生はそう力強く語りながら、黒板に何本も線を引いて熱弁をふるっていた。だから、私もこの部分はよく覚えている。
今日は、その“復習授業”なのだ。
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作者メモ(脚注扱い)
「キリスト教」=「モリック宗教」と設定した。
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「ティダルト宗教は──多神教と唯一神の要素をあわせ持った宗教です」
「えっと……ティダルト宗教にはピラミッドのような階層があって──
頂点には唯一無二の存在、“創造神”がいます。その下には、五つの属性を司る“上級神”、“中級神”、“下級神”がいて、一番下に“藩神”が位置しています」
「“上級神”、“中級神”、“下級神”、そして“藩神”たちは、創造神が人類の祖の罪を憂いて、私たちに“加護”を与えるために遣わされた“使者”です」
「だから、多くの神々を持ちながらも、創造神という唯一神を頂点に据えている。そこが“多神教と唯一神信仰”を合わせ持った宗教だと言われる理由です」
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作者メモ(脚注扱い)
ナーレが説明しているように、
「ケルト教:キリスト教」=「ティダルト宗教」は、
キリスト教の価値観が付属したもの。
頂点に創造神がいて、
その下に上級神 → 中級神 → 下級神の三つのグレードの使途が存在する。
一番下、グレード外には藩神の使途がいる。
藩神は、ヴァルが言っていたように雑多に生まれた神で、
非常に歪んでいる。つまり、生まれたての状態なのだ。
そのため、神様というより人間寄りの性質があり、
「神と悪魔、両方の性質」を持つ不純な神である。
五つの属性については、『五大元素』の話であり、
グレードごとに力の差異があると『信じられている』、
これが「ティダルト宗教」の大まかなあらましである。
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「“藩神”は、神と悪魔の中間の存在として、古代の神官たちに捉えられていたわ。
彼らは神と悪魔、両方の性質を使って、加護者に試練を与えるの」
「どういった試練なんですか?」
私は気になって、思わず尋ねた。
「私たちは、十二歳から十三歳になるとき、“選別の儀”を受けて、
自分に加護を与えてくださる神を選ぶのよ。
その先にどんな試練が待っているかは、加護を授けた神と本人自身に委ねられるわ」
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作者メモ(脚注扱い)
ネル先生は藩神が試練を与えると言っているが、実際にはどの神も試練を与える。
ただ、藩神は余りに「神と悪魔、両方の性質」を持つため、
判断基準が非常に難しいという話である。
これは、本人の価値観や習慣で判断せねばならないことを示唆しており、
つまり、人生における選択と結果を自分で判断しなさい、ということを
遠回しに説明しているのだ。
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「えっと……つまり、よく分かってないってことですか?」
私はそのまま、感じたことを口にしてしまった。
(だって、神様って何なのか、ちゃんと説明されてない気がするし)
「そうね……よく分からないわ。正直、私にだって“神”が何なのかは分からないもの」
ネル先生は、そっと指を組んで、静かに目を閉じた。
(ああ──なるほど。つまり、出たとこ勝負ってことなんだ)
私はがっかりしながらも、ほんの少しだけ納得した。
──“選別の儀”って、どんな儀式なのか。
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作者メモ(脚注扱い)
ネル先生は、先生でありながら頼りないことを話している。
宗教関係者が「神が分からない」と言う有様である。
これは何もおかしなことではなく、
神自体も「本人の価値観や習慣で判断しなさい」という意味を示唆している。
この点については、神がいるのか、存在するのか、信じるかどうかについて
活動報告で考察している。
『ある』と思うからあるのであり、
『いる』と信じる確証のために信じている──
そのことを指している。
つまり──『こちユル』最初の段階で、
宗教観について、正面からステゴロで殴りに行っている状態である。
「神は要る、要るから居るのであって。
それは最初から居られず、後から居られた。」
──そのことを示している。
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皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
『第十七話「観念と理念」』のプロットや物語進行の過程について、
ご理解いただけたでしょうか。
ちょっと堅苦しかったかもしれませんね。
前のスタイルに戻してもよろしいのですが……
読者の皆様が「厭」とおっしゃったので、
今回は様子見としてこの手法を採用させていただきました。
説明する部分はあまりありませんでしたが、
この回で、こちユルの思想や、作者の宗教観について
少しはご理解いただけたのではないかと思います。
なお、作者は否定いたしません。
ファンタジー小説は宗教と密接に関わっています。
そのことは、真実として受け入れます。
その他の部分については、私の判断に委ねさせていただきます。




