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追放された魔法使いの巻き込まれ旅  作者: ゆ。
4章 氷の守護者グラント公国

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アルンくんと再会

一つずつゆっくり進めていきます。もどかしかったらすみません。


今日か明日に3章までのあらすじを書いたものを上げます。

「さっきぶりね、『シャルア』」

「ハイデル先生……?」


ハイデル先生は、腕に子どもを抱えて突然入ってきた。

一体何が……?

ファルも知らないみたいで、ハイデル先生が言い出すのを待っているみたい。

ハイデル先生は子どもの顔をこちらに向けさせた。


「あ……」


アルンくんだ。

私が気づいて顔を綻ばせると、アルンくんも目を輝かせた。


けど、それは一瞬で怯えた表情に変わった。


何に怯えているのだろう。

わからなくて首を傾げていると、ハイデル先生も困った顔をしてアルンくんを見た。


「どうしたの?さっきまで『おねえちゃんにあいたい』って言ってたでしょう?」

「う、ん………」


アルンくんは元気なさげに俯いた。

ハイデル先生の服の胸元を握っている手に力がこもってしわができる。

何か言い淀んでいるような……そんな感じで。

次にアルンくんが顔を上げて目を合わせたとき、目には涙が溜まっていた。


「おねぇ、ちゃん……なんで、泥だらけ、なの?」

「────!」


ハイデル先生とファルはアルンくんの言葉にもっと疑問を増やしているけど、私はその言葉で大体わかった。

ツィーシャで、アルンくんは父親とキルナさんに対して「泥だらけ」と言っていた。

そのときから、推測があっているなら「泥」は「瘴気」なのかもしれないと思っていた。

さっき、私が診察してもらったときに言われたことを思い出す。


魔力の半分以上が瘴気になっている。


アルンくんは『視える』から、私の体にある瘴気に反応したんだ。

それで怯えているんだ。


どうやったら、アルンくんを安心させられるんだろう。

あの人たちとは違うよ、なんて言ってもどう違うのかは説明しにくい。

………アルンくんは小刻みに震えてる。

恐怖がまだ残ってるのかもしれない。

当然だよね。


……今は会わないのが最適なのかな。



「アルンくん、怖がらせちゃってごめんね。しばらくは泥だらけかも……」

「……」


鼻をすする音だけが聞こえる。


「けど、これだけは言わせて」

「……?」

「アルンくんのおかげでみんな助かった。

本当にありがとう」


今は抱きしめられないけど、感謝の言葉だけは伝えたかった。


5歳で4キロ近くも進んでリュカオンを呼んできてくれた。

それでいて建物内部の構造とか『視える』ことを使って脱出を助けてくれた。

アルンくんなしでは無理だった。

だから、「ありがとう」だけは伝えたかった。


ハイデル先生のほうに顔を背けていたアルンくんは、私の言葉で少しだけこっちを見てくれた。

涙が頬を伝って流れ出している。

今は、こっちに顔を向けてくれただけで嬉しい。

にこりと少し笑ってみせると、アルンくんは堰を切ったように泣き出した。


「おねえぢゃぁんっ!ふっ、ぐすっ、うぇぇぇん!」


震えながら両手を伸ばして私のほうに体を向けたアルンくんを見て、ハイデル先生は私に視線を送ってきた。

震えているけど、今のこの状況はどっちが答えなのか。

私も少し迷っている。


私もハイデル先生に少し迷いの表情を見せていると、ファルが急に立ち上がってアルンくんを抱き上げた。

突然の出来事にアルンくんは涙が止まって、私とハイデル先生はファルを凝視した。

どうして急に……?


ファルはまた座ってアルンくんを自分の膝の上に乗せた。

そして私の手とアルンくんの手を取って近づけて、すんでのところで止めた。


「アルン、だっけ?あとちょっとで手が握れるけど……どうしたいかはアルンが決めろ」

「………ぼく、は」


アルンくんはファルの紅の瞳に気圧されたみたいで涙はとっくに引っ込んだみたいだ。

手助けして最後はアルンくんに決めてもらう。

昔からグラントの人たちは生き残るために助け合い、本当に大事なことは自分で見つけて決める。自主性と協調性がある。

グラントらしいやり方がここでも現れているんだなとこっそり思った。


アルンくんは私の手を見ながらどうするべきかすごく考えているみたい。


……でも、そんなふうに考えていたのもほんの一瞬で。

アルンくんは私の手を取ってくれた。

なんだか、これだけですごく嬉しい。

思いが通じ合ったみたいに嬉しい気持ちが溢れてくる。

アルンくんもそう思ってるのか、ぱっと私を見上げた顔はとても輝いていた。


「……ありがとう、アルンくん」

「うんっ、……うん!ぼくも、おねえちゃんありがとう!」







笑ってお礼を言ってくれたアルンくんは、また熱がぶり返したみたいで部屋に戻されてしまった。


「おねえちゃん、水色のおにいちゃん、ばいばい」


ハイデル先生と一緒に来た魔法使いの人に抱えられて帰って行くときは、初めて会ったときみたいに手を振ってくれた。


パタン


扉が閉まったのを確認して、ファルとハイデル先生は私のほうに向き直った。

目線から、さっきまでの話の説明を求められているのがわかった。

アルンくんが『視える』ことを勝手に言うのは気が引けるけど、全部報告しないとダメ……だよね。

私が『視える』ことを『クレア』以外にわかってくれた人たちだから、きっと大丈夫。

私はベッドの毛布を握りながら答えた。


「アルンくんは、人の魔力の属性が『視える』の。氷属性が水色、火属性が赤色……みたいに。

泥は……予想があっていれば瘴気のこと。ツィーシャでは私たちをさらった人もアルンくんの父親も泥だらけだったみたいだから、」

「トラウマになって泣き出したのね」

「そうです」


ふたりの様子をうかがってみる。

ハイデル先生は困ったような、信じられないような、よくわからない顔で笑っていた。

その意味を教えるようにハイデル先生が口を開いた。


「『シャルア』が前例にあったから対処はわかるけれど、『視える』人はそんなたくさんいるわけじゃないわ。『シャルア』はわかると思うけれど、『視える』というだけで売られたりさらわれることは普通にある。

いろいろあの子には教えることがありそうで、大変だと思っただけよ」

「……すみません」


私は素直にハイデル先生に謝った。

ハイデル先生は私の頭をくしゃくしゃに撫でた。


「公爵様に報告したあとで一応誓約を結ぶけど、幸い、ここにはあなたたちのことを悪用する人はいないわ。

ゆっくり休みなさい」

「はい、ありがとうございます」


私の返事を聞いて満足したようにハイデル先生は部屋を出ていった。

きっと公爵様に報告に行ったんだろう。


私はさっきから口を挟めずに黙っていたファルを見た。

ファルは特段驚いた顔はしていなかった。

先に私が『視える』前例にいたからかな。

むしろ納得したような顔をしていた。


私が見ているのに気付いたファルは、納得の表情を見せた理由を教えてくれた。


「さっき去り際に『水色』なんて急に言うから不思議だったんだ。外見に水色なんてどこにもないから。

それで属性と言われて納得したんだ」

「……それだけ?」

「え?そうだけど」


ファルは首をかしげて私を見て言った。

『視える』ことを特別視しないでいてくれているみたいで。

ハイデル先生の言う通り、悪用しようなんて考えてなくて。

それだけですごく嬉しくなった。




それからしばらくファルと談笑していると、メルオンが入ってきた。

顔色が悪いように見えたメルオンはファルに耳打ちをすると、すぐにファルが立ち上がった。


「『シャルア』悪い、仕事が入った。大人しく休んでろよ」

「うん、わかった。……怪我しないでね」


私の返事に少し驚いたようだけど、ファルは私の頭を撫でて颯爽と部屋を出ていった。

ハイデル先生もファルも、私の頭を撫でるの好きだな……。

ファルを見送って、交代したみたいに私のそばについたメルオンを見た。

いつもなら私が視線を向けたらわかるはずなのに、ぼーっとしている。


やっぱりまた『共鳴』、かな。

ファルがあんなにすぐ動くところからして、魔物が出たんだと思う。

城下町付近に出たのかな……。

あとひと月半もしたら気温が上がりだすころなのに、まだ魔物が活発に動いている……?


……私だけで考えても答えは出ないか。



「メルオン、座って」

「……はい?」


私がさっきまでファルの座っていた椅子に座ることを勧めると、メルオンが聞き返してきた。

やっぱり体調が悪いんだ。


「ここに座って」

「……かしこまりました」


私はメルオンを座らせることに成功した。

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