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追放された魔法使いの巻き込まれ旅  作者: ゆ。
4章 氷の守護者グラント公国

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状況整理

サンドイッチを食べて、またさっきみたいに暖炉に体を近づけて暖を取ろうとしたら、メルオンにベッドに戻された。

それで暖炉の熱魔法石を取り替えてくれた……のに、私がくしゃみをしたからわざわざ部屋全体があたたまるように部屋の四隅にも設置してくれた。

一応熱があるみたいだし、魔力とかも変になっているから病人扱いなのも仕方がないのかもしれない。

でもさすがに、ここまでするのはやりすぎなんじゃないかなって思うけど……。

熱魔法石は冬は至る所で必要だから、私の部屋で九個も消費するのは贅沢すぎるしあったかくなりすぎると思う。


コンコンコン


少しずつあたたまってきた部屋にまたノック音が響いた。

すぐさまメルオンが動いて扉を開けると、鍛錬終わりのファルが入ってきた。

ファルはここにくる前にシャワーを浴びてきたようで、髪を濡れたままにして首にタオルをかけている。

服はちゃんと綺麗に着直しているのに、どうしていつも髪は乾かさないのか不思議に思っている。


メルオンがファルにメモみたいなものを渡して二、三言話すとメルオンはワゴンを引いて部屋を出て行った。

交代するように入ってきたファルは私のところまで来ると、私の額に手を当ててきた。


「………熱いな」

「そんなに?微熱くらいだと思ってたんだけど……」


私の熱の高さに顔をしかめるファルは、私の言葉でため息をついた。


「頭痛、吐き気、寒気があって微熱はおかしいだろ……。

『シャルア』は痛みに慣れすぎなんだ」


さっきハイデル先生が『心配』を教えてくれたときと同じ表情だった。

じゃあこれも、『心配』………?

ファルはいつも私に会うたびに似た表情を見せている。

もしこの推測があっているなら、私はいつも、ずっとファルを心配させていたんだなと思う。

私は額に当てられたファルの手をそっと握った。


「ごめん、心配……させて」

「……本当にそうだ。『シャルア』相手だと、心臓がいくつあっても足りなくなる」


ファルはベッドサイドの椅子に腰掛けて私の手を強く握った。

その強さが、言葉の重みを教えてくれている気がした。こんなにも心配させていたんだなとわかる。

しばらくそのままだと思っていたら、ファルは「悪い」と言って手を離した。


「いつも弱った姿で俺の前に現れるから、次があったとき怖いんだ。

………本当に、無理をしないでほしい。無理するくらいなら俺に頼ってほしい」

「………うん、わかった」


切実に伝えられては頷けないはずがない。

一回約束を破ってしまったし、これがファルを安心させることに繋がるならそのほうが私も嬉しい。

ファルは私の返事を聞いて安心したようでふーっ、と息を吐いてすぐに表情を変えた。


「じゃあ何があったか教えてくれるか?」


メルオンが水晶を持って戻ってきて机に置くと、水晶が淡く光だした。録音……かな。

私はファルの顔を見る。

私の目の前にいるのは友達の『ファル』ではない、グラント公国次期後継者である『公子様』だ。


それもそうかと納得する。

いくら私がファルと友達とはいえ、急に立ち入り禁止の山に魔力枯渇状態で子どもを連れて転移してきた。

本来ならこんな厚遇を受けられるはずないし、奇襲目当ての犯罪者と思われてもおかしくない。

だからこそこうしてちゃんと事情を聞く義務があるんだ。


私はそれを理解した上で話しはじめた。


「私はルクレイシアに行った後────」







それからファル………公子様にことの顛末をわかる範囲で教えた。

昔お世話になったリュカオンに会うためにツィーシャへ行ったことから、さらわれてリュカオンが私たちを逃がしてくれたことまで。


黙って聞いていた公子様は途中から険しい表情で私の話に頷いていた。

すべて話し終えたころには眉間をもみながらため息をついていた。

水晶を持って部屋を出ていくメルオンを見送ると、公子様はいつもの調子に戻っていた。


「とりあえずそのリュカオンって人には感謝しないとな。なんでイェルガに行きたいのかようやくわかった……」


大魔協が関連しているかもしれないということも話したから、私が大魔協本部のあるイェルガに行く必要があることを理解してくれたみたいだ。

死んでいなければいつか会える。

一度会えたのだからもう一度会えるはず。

一縷の望みに賭ければ、リュカオンは今ツィーシャにそのままかイェルガにいるはず。

拷問するにはぴったりの場所ならイェルガだと思って決め込んでいるけど、本当にいるかはわからない。

行かないといけない。


そのためにも、今の魔力の問題とか外の状況を知らないといけない。


「……ファル、今度は私が質問してもいい?」

「『シャルア』にも気になることがあるはずだし答えられることなら」


ファルは姿勢を正して私のほうをしっかり見てくれる。

いろいろ気になるけど、一番に気になっていることから聞こうかな。


「子どもたちって今どうなったの?」

「『シャルア』と一緒に転移してきた子どもたちは必要な治療を受けて全員目を覚ました。

今は使用人の子どもを預けている部屋で一緒にみてもらっている。元気に走り回ってるらしい」

「そっか………よかった」


心の底から安堵した。

さらわれて怖がっていたり転移する前に諦めた表情をしていたりしたから、とても気がかりだった。

元気に走り回ってるなら、精神的にも大丈夫……かな?


「あ、でも……」


ファルは思い出したように顔を暗くした。


「一人だけまだ熱が引かないと言っていたな……。高熱にうなされていて、夜も何度か起きてしまうらしい。

ハイデルが言うには魔力枯渇らしいが、属性がわからないから無属性の魔法石で魔力を与えるしかできないみたいだ」

「魔力枯渇の子ども……」


私はツィーシャで魔力譲渡したのを思い出した。

アルンくんだ。

リュカオンを呼びに行って、私たちのいる部屋まで連れていくのを手伝ってくれた。

あの子は……。


「5歳くらいの男の子でアルンって名前の子じゃない?」

「……たしかそうだった気がする」


曖昧に返事をしたファルは、小さな魔法石を握ってそれに向かって何かを喋った。

少しして、コンコンコンと扉が叩かれてファルが入室を促した。

入ってきたのはハイデル先生のもとで働く魔法使いの人だった。


「ハイデルは?」

「師匠は例の魔力枯渇の子どもがまた悪化してつきっきりで……」


アルンくんはまだ子どもだから、魔力枯渇で体がずっとおかしくなってるのはなんとなくわかった。

少し萎縮しながら受け答えする魔法使いを見据えて、ファルは間髪入れずに次の質問をする。


「その子ども、名前はアルンでよかったか?」

「え?……そう、ですが」


呆けた声で返事をされてから、ファルは私のほうを見た。

もしかして、私が直接言えるように呼んでくれたのかな?

私も魔力がほぼないし、熱もあるから動けないことを考えての行動だったのかも。

私はファルにお礼を言ってから魔法使いの方と目を合わせた。


「突然すみません。私はアルンくんが魔力枯渇だったときに魔力譲渡をしたことがあったのであの子が空間属性だって知ってたんです。

それを教えたくて呼んでしまいました」

「空間属性ですか!?ちょうど師匠と属性が知れたら……と話していたところなんです!すみません、失礼します!」


魔法使いの人は血相を変えて礼儀も忘れて部屋を去っていった。

リュカオンに話を聞いたときに、部屋の構造が三次元的に見えて、なおかつ行きたい場所へのナビみたいなものが備わっているのかなと思ったんだっけ。

私も似たような感じで空間属性を使っているから、もしかしてと思って魔力譲渡をしたら上手くいったんだ。


これでアルンくんが助かるなら願ったり叶ったりだ。

子どもの魔力枯渇はずっと続けば衰弱死もあり得るから峠を越えられるように願うしかない。


扉から視線を戻して私は次の質問に移った。


「それじゃあ次なんだけど……この三日間であったことを教えて欲しい」

「そうだな……」


ファルは聞かれると予想していたみたいに、亜空間収納の袋からたくさん紙を取り出した。

新聞とか、報告書類が大体を占めている。

大体の新聞に大きくあの日のツィーシャの光景が魔法石で撮影されたものが掲載されている。


「ご覧のとおり……ってところだな。

急にツィーシャが陥落なんて話が出て、公爵城はとくにパニックだった」

「公爵城が………?」


一体なぜだろう。

ツィーシャは陥落したんだ。あれだけの火の手が上がっていたし、当然といったらそうかもしれない。

でも、それでどうして公爵城がパニックにになるのだろう。

首を傾げると、ファルは少し複雑な顔をした。


「アナスタシアが滅亡した日にとても似ていたから、それがよく記憶に残っている人は結構驚いていた。

『シャルア』がひどい状態で運ばれてきたところでその情報が来たから母上がショックで倒れそうになった。また巻き込まれたんだって」

「………夫人が」

「昨日まで寝ずにここで看病していたけど、父上がさすがに二日寝ていないのは……って言って一緒に寝室に入って。

それから仕事が終わって俺が看にいこうと思ったら『シャルア』が起きたってわけ」


ファルの表情の理由はすぐにわかった。

ファルは公爵夫人の話をするとこの顔をするから。

私のせいでファルと夫人に亀裂が入ってしまってから、ファルは夫人との接触を極力避けるようになった。

ここに住まわせてもらっていた五年間、ずっとそうだった。

だからあんな夜明けの時間にこっそりと灯りを持って私のところを訪れていたんだろう。


私はアナスタシアが滅亡した日をよく覚えていないけど……、リュカオンも言っていたようにひどい日だったんだろう。

それにここにいる人たちは私がアナスタシアでどんな目に遭っていたか大体知っている。だから、余計に怖かったのかも知れない。


「……新聞によれば、ツィーシャは火災が発生して国中が火に包まれて王城まで燃えたらしい。

不可解なのは誰もその火を鎮火できなかったことだ。

生き残った王族は『商業区域で火災が起きているなんて知らなかった。気づいたころには目の前まで火の手が上がっていた』なんて言ってるらしい。

この一件はトランスヴァールの侵略行為だって記事もあったくらいで情報が錯綜してるんだ」

「そう……なんだ」


誰も火災に気づかなかったなんてあり得るのか。

誰が火をつけたのか。


いろいろとわからないことだらけみたいだ。

……とはいえ、ツィーシャにリュカオンはいないことに確実性はでてきた。

そんな壊滅状態ならリュカオンを拘束したり拷問したりするには設備が十分じゃないはず。


やっぱりイェルガに行く必要がありそう。



大体状況がわかったところで、コンコンコンとまた扉が叩かれた。


【余談】

ファルは自然乾燥派です。

服を着ているのは寒いからだそうです。じゃあ髪も乾かしてくれと思いました。

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