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超・事件19

更新74話目


衝撃で心臓が止まりかけた。

目の前で陽太郎が転び陸上競技場の縁石ブロックに頭を打ち付け一瞬とはいえ動かなかったのだから。

その後直ぐに動き出したのは良いけれど足の進みは普段の歩き寄りも遅く明らかに異常だと分かった。

血が出ているのかタータンに小さく血痕が見える。

係員が何人も止めようとするがそれら全てを何度も拒みながらゴールを目指していた。


「神楽!」


「今掛けています!」


私の声の意図を察した神楽はスマホを取り出し救急車を呼ぶ為にこの場を離れながら連絡をする。

陽太郎の様子にどうするべきか迷いおろおろしている結衣と辰郎に声を掛けて荷物全てを仕舞い車へと移動するよう伝えた。


「一度落ち着く為に2人は峰墓と共に運ばれる病院から連絡があるまで待機!他にも呑天にも連絡入れるから何か必要があればその子に伝えて!拝!片付けは終わった?!」


「今終わりました!」


「氷の入りそうか袋は?」


「これを」


拝から渡されたのはスーパーで使うような少し大きめのビニール袋。


「十分よありがとう」


私達は観客席から出ると結衣と辰郎と別れる。

物陰を探して隠れると拝から貰ったビニール袋の中に2㎝四方のブロック状の氷を大量に生成し詰めていく。

ある程度貯まると直ぐ様ゴール付近に直行する。

大会の役員やら陽太郎の同級生やらがいた。


「…………流石にゴールまでまだ時間あるみたいだわ」


「あっ!狐雪さん!」


私の名前を呼んだのは意外にも小野寺の小僧だった。

咄嗟に声のした方向を見ると小野寺の小僧が焦った表情で私を見ている。

拝と一緒に設置されているテントの所まで向かう。


「小野寺君良い走りだったわ。もっと褒めてあげたい所だけど悪いけどそれは後にして貰うわ。陽太郎の事は私より近くで見ていた君ならどんなふうに転んだか分かる?」


「え、あっと……何というか突然糸が切れたみたいに足に力が入らなくなってそのまま倒れた感じです。どうやら怪我をしてる見たいなんですがどこを怪我したかははっき…………り………?!?!額をやったのか?!」


突如驚いた様子で取り乱す。

意味が分からずその視線の先を追うと陽太郎の姿を真正面で捉える。

そしてその姿は右半身のユニフォームが血で汚れていた。

原因と思われる額は顔半分が真っ赤に血で汚れている。


「……………………は?あの子、あの状態でまだ走り続けてたの?!」


普通あれだけの怪我を負えば泣き叫びたいくらい痛いのにそれすら無視して今陽太郎はゴールを目指している。

血も失い今は殆ど意識が無い状態に見えた。

それでも係員の制止を頼りない足で拒み続けたのは一重に足利勇旗に勝ちたいからに他ならない。

そこまで思われるのはある意味一種の愛だ。

そう思うと子供とはいえ視界内で立ち尽くしている足利勇旗が羨ましくすら思える。


「小野寺君、勇旗君」


「「っ!はい!」」


私の言葉に肩を離させながらびくついた2人は何とか返事を返した。


「私は一応部外者だから中に入れないわ。一応選手で関係者な貴方達なら中に入れるでしょ?だからこの袋を持って行って」


小野寺君に手渡す。


「これは…………」


「私が急いで用意した氷よ。出血が酷い見たいだから濡れタオルも無いならこれを使って頭部を冷やして。

 冷やせば多少は出血量も少なくなるから病院に行くまでの応急処置になる。中学生と高校生に頼む事じゃないけどね。もし血を見るのが苦手だとか気分が悪くなるとかだったら係員の人に事情を説明してこの氷袋手渡して。

 予想より出血が酷い場合に備えて患部を抑えるタオルも欲しいのだけれど…………」


思わずポロッと溢した泣き言に近くにいた子供から声が掛かった。


「あ、あの!良かったらこれを使って下さい!タオルが必要何ですよね?!自分は予備があるので大丈夫なのでこれが必要な状態ならあの子に使ってあげて下さい!」


声を掛けて来たのは今回3位だった橘真人だ。

手渡されたタオルは患部に当てても刺激し過ぎないようなややふわっとした素材が使われている。

細かな所で気遣いが出来る男の子のようで少し嬉しくなった。


「ありがとう助かるわ」


「狐雪さん今救急車があと少しで着くようなので案内の為に私は入り口に向かいます」


「あっ」


「分かったわ。なるべく早く来て貰えるよう案内はしっかりね」


「分かりました」


「あ」


足早にその場を後にする神楽を小野寺は目で追っていた。

そんな乙女みたいな反応をしないで欲しいわ。

気が緩んじゃう……


「もう直ぐゴールしそうです」


橘真人の声に足利勇旗と小野寺君は弾けるように頭を上げた。

そして陽太郎がゴールする直前に飛び出しゴールして体が倒れると同時にその体を2人で抱き止める。


「おっも……!」


「2人掛かり何だから泣き言を漏らさないで貰いたいね!!」


「係員さん!」


係員を呼ぶと担架を持って来ていた。小野寺君と足利勇旗が2人でゆっくりと担架に乗せる。

移動する前に陽太郎の顔に氷袋を乗せると付き添うように移動を開始した。


「小野寺俺の荷物持って来てくれ」


「どれ?!」


「テント右奥黒基調白のストライプ」


「分かった」


小野寺君は返事をすると私の元に戻り荷物を漁り必要な分を持つ。


「係員さん!既に救急車を呼んでいるので外に!!」


私が声を張り上げるとこちらに来る。


「救急車は?」


「この子が転んで少しして怪我をしている事に気付いた瞬間に呼びました。既に5分以上時間が経っているのでもう直ぐ来るはずで─────」


ピーポーピーポー


「来たっ!救急車が入って来れるギリギリまで移動させたら後は本職の人に任せましょう!」





一応1番年上なので軽く指揮を取った氷鉋狐雪

今回結衣と辰郎は動揺が激しくそばにいても使い物にならないと判断して別の所で待機させた。

今回大真面目なお婆様






ここまで読んで下さりありがとうございます!!

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