超・事件20
更新75話目
2日たったあの後陽太郎は手術による麻酔含め2日間眠り続けた。
2日間眠り続けた理由は血を失った事とレースによる極度の疲労だと医者は言っていたがレース前に陽太郎から感じた雰囲気やレース中の雰囲気の変化を踏まえると精神的な疲労もあったのだと思う。
今回の国体での流血騒ぎはそこそこネットを騒がせる結果になった。
根性を褒める者、倒れる直前までの走りを褒める者、無理矢理にでも止めない係員を非難する者等声はさまざまある。
私とて止めたかったが大衆の中部外者が止めに入るのも憚られるしあの時の陽太郎は止めた者を殺すのではないかという気配を感じてしまった。
少し嫌な気配だった。
だから私は少しでも刺激しないように唇を噛み締めて見守った。
だがほんの少し後悔もしている。
「結衣、陽太郎の様子はどうだったの?」
「血が戻り切ってないのか少しテンションは低いけれどそれを除けば元気そのものです。本当……よかったぁ…………っ」
「熱中症で死ぬ事例も少し前にあったから警戒はしていたけれど我が身内ながら丈夫な身体で良かったわ。
結衣は何もしてあげられなかったと悔やむかも知れないけどあんなに丈夫な身体に産んで上げられたのは貴女が頑張ったからよ。だから悔やむのは止めなさい。…………妾の子である結衣が産んだ子なんじゃ……妾達が想像も出来んくらい可能性に満ち溢れておる。
故に悔やむより見守って支えて上げるのが何より大事じゃ。まぁだからとて仕事の量を減らし過ぎて陽太郎にべったりは流石に教育上よろしくないから牽制するがの」
今は寝ている陽太郎のベットの横で落ち込む結衣の頭を優しく撫でながら諭した。
結衣は仕事にのめり込み過ぎて陽太郎との交流を疎かにしている事も自覚しておりそれが自身を余計に追い詰めている。
それを含めて大丈夫だという思いを込めて少し乱暴に頭を撫でた。
「それよりもう少ししたら陽太郎のお友達達がお見舞いに来るわ。そんな時に落ち込んだ結衣がいたら空気が悪くなるからね、涙を拭きなさい」
無理矢理ハンカチで目元を拭う。
多少あった化粧も落ちる。
「ふむ…………やはり私の子供だけあってすっぴんでも綺麗ね」
「ちょっと止めてよお母さんっ」
「湿気た顔の子供の言葉はキコエナイワーーーー」
「ふふっ何その棒読みッ」
「やはり結衣は笑った顔が良いわ。上司に無理言って伸ばして貰った休みは大丈夫なの?」
「日数的には大丈夫よ。だけど会社の従業員自体の数が元々少ないから私と辰郎が抜ければ抜けるほど他の人達に負担が行くからもっと居たいけれどもう帰るわ。辰郎さんもそう考えてるからお母さん後は頼んでも良い?」
「任せなさい。頑張った陽太郎を沢山甘やかすわ」
「それはやめて」
「そこは頑ななのね…………」
「当たり前でしょ?」
別れの軽口を終えて結衣は辰郎と共に仕事へと戻って行った。
「……さてお見舞いに来るお友達でも待ちましょうか────」
ドタバタと足音が複数が聞こえる。
その足音は一直線にこの病室へと向かっていると分かった。
開き掛けていた本を閉じる。
「「「「失礼しまぁす!」」」」
来たのは加古、風間、高田、伊地知君の4人だった。
「あっ狐雪さんこんにちわ」
「こんにちは加古君わざわざ陽太郎のお見舞いに来てくれてありがとうね」
「いえ、大事な後輩なのでこのぐらいは……」
「それでも嬉しいのよ。そうね、軽くだけどお礼もしなきゃ貴方達に失礼ね」
「いえ、そんな!気にしないで下さい!」
「お礼を貰うのは悪いっす!」
「お礼は私の自由よ。ここは私の顔を立てると思って受け取ってくれると助かるわ」
「う、うーーん………………そういう、事なら」
4人は目配せをして目線と首の動きだけで会話をしていた。
何気にもの凄く器用な事してるわね。
「じゃあ……はい、お見舞いに来てくれた貴方達へ私からのお礼よ」
私は鞄の中から箱を4つ取り出した。
中には私が特別贔屓にしている老舗和菓子店の1日数量限定の和菓子セットが入っている。
1日に売られる数は30もない貴重な商品だがお願いをして特別に4日多く作って貰ったのだ。
「1人じゃ食べ切れないでしょ?これはお見舞いの品を持って来てくれた他の子達へのお礼も兼ねてるから皆で分けてね?くれぐれも独り占めしちゃ駄目よ?」
「「「「は、はい!」」」」
「よろしい!素直は好きよ!」
「狐雪さん」
「あら?神楽どうしたの?」
照れている4人を見て笑っていると神楽が病室に入り話し掛けて来た。
「あの………………陽太郎君に取材をしたいとの事で」
「は?」
この後舐めた記者を締めて追い出した氷鉋狐雪
締め出しただけに留まらず伝手と権力を使い記者の所属する会社に警告を出した。
空気を読めと記者達に切れた母親代わりのお婆様
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