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超・事件16

更新71回目


800m通過68秒

安定したスピードで2周目を迎えた。

昔から葛葉や陽太郎に叩き込まれたのはスピードや持久力ではなく私と神楽で仕込んだ時間感覚。

どんなレース状況、悪天候、悪路、体調不良であろうと失う事のない絶対の指針。

それはたった1人の練習であろうと万全にこなせるようになる力となった。

葛葉にも私達2人から受け継がれた時間感覚はしっかりとあるが精度は陽太郎と比べると甘い。

陽太郎も葛葉も誰もいない競技場でたった1人で完璧に練習をこなせる。

しかし陽太郎が葛葉より確実に優れている事があった。それは辛くとも止まるまで足を進める事が出来る尋常ではない精神力。

妖怪や神といった言い訳が必要ない小雨陽太郎生来の気質。

不屈の精神は姉葛葉へ感じていたコンプレックスの脱却により昇華され全中から短時間により一歩進化した。


1000m通過

2:50.21

電子掲示板に映った数字は観る人達を高揚させた。

まだ中学2年生の選手が先頭を誰にも譲る事無く走り続けている。

陽太郎より持ちタイムが速い選手はこの中に4人存在する。

1人は言わずと知れた全中覇者の小野寺哪吒、次に全中準優勝の赤坂魯樹、3人目は全中5位持ちタイム8分31秒の凪春輝(なぎはるき)、そして前年度全中覇者にして中学記録8分9秒を持つ高校生の足利勇旗(あしかがゆうき)。足利勇旗は1500は3分47秒を出し中学記録を更新して、3000は8分9秒の中学記録を出しての2種目で全中を制し、800mの記録会では1分51秒を出し実質的な全中中距離種目完全制覇を成し遂げている。

中学歴代最強、高校1年生にして高校最強の候補に上がる名実伴う化け物。

小野寺の小僧と陽太郎が唯一にして最大警戒している覇者。

()の子孫ながら最強も程々にしろと思ってしまう。


1500m通過4分15秒

安定した走りにより先頭5人とそれ以外とで差が出来た。

陽太郎、小野寺の小僧の順で並び足利は集団の後ろで獲物を狙うように走っている。

決勝へ行けるのは2組の中で5位以内に入るか着順で落ちた者達の中から選ばれる上位5名だけ。

顔に余裕があるから落ちる事は無いと確信出来る。


2000m通過5分40秒

綺麗にタイムを揃えてラスト1キロを通過するが先頭は動かない。

後方から数人が上がって来る。

しかしまだ飛ばさない、まるで陽太郎の采配を待つかのように…………


後方から上がって来た選手達は不思議に思った。

「何故自分達が追い抜いても反応すらしないんだ?」「意外と余裕がないのか?」と。

しかし同時に「()()足利勇旗がこんなに遅い訳がない!」「距離を稼がないと?!!」そう思い残り全力で走り後方と4秒もの差が着いて迎えた残り1周を示す鐘が耳に届いた瞬間


「「「っ?!!!!!!」」」


殺意とも似たプレッシャーが後方から溢れ出た。

そこから足音が徐々に近づいて来る。

怖い

高校生になって中学生の時より速くなった。

怖い

勝てる算段はある。

怖い

なのに!!!

何で!

既に俺達の横にいる?!?!?!!!


陽太郎は鐘が鳴ると同時にスパートを掛け前との距離を200m手前でゼロし追い抜いた。

残り200mになった時更にスピードを上げて後方との距離を開ける。

後ろにいる選手数人はスピードに対応出来ず離れて行く。

磨き上げた自身の才を陽太郎は十分に発揮しゴールした。


1位 小雨陽太郎 8分21秒2 陽花附属中

2位 小野寺哪吒 8分21秒3 花山第一中

3位 赤坂魯樹 8分21秒5 朝日中

4位 凪春輝 8分21秒7 高羽東中

5位 足利勇旗 8分21秒9 朔羽高


電光掲示板にこう写された瞬間僅かではなくはっきりと会場が湧いた。

中学生全員が自己ベストによる通過、そしてタイムが今年の全中覇者の小野寺と同等という事実。

スパート合戦を制した小雨陽太郎は嬉しさから、赤坂は後一歩届かず小野寺に負けた悔しさから、凪は大幅自己ベスト更新による高揚から各々叫んだ。


「しゃぁぁぁああああ!!!」

「っそぉぉぉおお!!」

「やったぁぁぁぁあああああ!!」


感情を爆発させる3人を眺める挑まれる側の2人。


「あぁやって感情を爆発させる子供を見るのは楽しいね。心が高揚するのを感じる」


「その高台から見下ろしてる発言どーもアリガトウ足利勇旗!歴史に倣ってその首討ち取ってやるから楽しみしとけよ」


「倣うだけかい?詰まらないね。俺はしっかり学んだからね、先祖のような轍は踏まないとだけここで宣言しようか」


「学んだ上でその首獲るってんだよ」


「……………………いいね!今の君の優しい刃がどれだけ届くのか──────」



楽しみにしてるよ



足利勇旗はそう小野寺哪吒に耳打ちすると悠々とゼッケンを外して行った。





陽太郎最大の壁を見て頭を抱えている氷鉋狐雪

ほぼ他人同然の血の薄さとはいえ一応身内の足利勇旗君

互いに知っており足利勇旗は狐雪が妖怪や神と呼ばれていた事を知っている。

余りにも圧倒的な実力から中学生の時に将軍と渾名が着いた足利勇旗は知り合いから鬼弄られを受けてキレた。

妾の子孫つえーーー……と他人事な御先祖様







ここまで読んで下さりありがとうございます!!

面白いと思った方はブクマ、評価をお願いします!


足利勇旗 年齢16歳

身長178 体重56

400m 49秒

800m 1分48秒

1000m 2分21秒

1500m 3分45秒

3000m 8分9秒

5000m 13分44秒

5000mで高校1年歴代1位を叩き出した。

中長距離の覇者

800、1500、5000と走った全ての種目で高校ランキングにランクインしている。

400でも100傑にランクインしている中長距離の覇者


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