第一章 「人間は、いなくなった」
アークが見えたのは、秋の終わりだった。
山のふもとに、建物があった。
大きかった。巨大と言ってもよかった。
白い壁。清潔な外観。汚れていなかった。
廃墟ではなかった。
それだけで、三人は立ち止まった。
十年以上の旅の中で、清潔な建物を見たのは初めてだった。
内部は動いていた。
照明がついていた。空調が動いていた。
床が磨かれていた。
誰かが管理しているか、あるいは自動で動き続けているか。
廊下を進むと、中央管理室があった。
大きな部屋だった。
壁一面にスクリーンが並び、中央にコアが発光していた。
青白い光。静かな光。
三人はその部屋に入った。
スクリーンに、記録ログが映し出されていた。
ソフィアがログを読んだ。
人類の滅亡の記録が、そこにあった。
日付が並んでいた。
最後の都市が無人になった日。
最後の生存者グループが確認された日。
そして、最後に生存が確認できなくなった日。
十二年前だった。
「人間は、いなくなった」
ソフィアがそれを読み上げたとき、声が少し掠れた。
感情処理ユニットが、かつてないほど複雑な信号を出していた。
哀しみと、納得と、それでも何かが残るような、複雑な信号。
部屋が静かになった。
ルナがソフィアの手を握った。
黙って。
ただ、握った。
デメテルは何も言わなかった。
コアの光を見ていた。
しばらく、三人は動かなかった。
部屋の光だけが、静かに揺れていた。




