表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

第41話 [ドロケイ前半]

 ホークさんの葬儀から数日後、僕らはPvドームに来ていた。


 葬儀から数日経っても、皆が暗いままなのを心配した麦が、Pvドームへ皆を呼びつけたのである。


このゲームでは、PvができるのはGvか一部のPvマップに限られている。それ以外でPvを楽しめるのがここ『Pvドーム』だ。


 中では、普通のPvを楽しめる他、『鬼ごっこモード』や『かくれんぼモード』など、通常とは違うモードを選択することもできる。


 誰でも入場できるようにも、チームだけで楽しむようにも設定できる。


 そんなPvドームへと呼び出されて集まったのは、ロマさん、こころさん、花音さん、伝心さん、マイラーさん、ポポちゃん、えーさん、ヴィンテージさん、そして僕と麦。


 あと、麦に「わんわんも誰か誘っちゃいなよ!」と言われたので、わんわんのメンバーにも声を掛けた。


 麦が個室の設定を始めると、後ろからロマさんとヴィンテージさんの声が聞こえてきた。


「ヴィンさんがドーム来るなんて、めずらしいな。どういう風の吹き回しだよ?」


「ん~、たまにはね~。僕も幹部らしく、皆のモチベーションを上げるのを手伝おうかなってね~」


 その言葉に反応したのは、マイラーさんだった。


「ガハハハ! ヴィンテージが幹部らしくとは! 初めて聞いたぜ!」


 マイラーさんは、なんだか嬉しそうにヴィンテージさんの肩へ手を置いて笑った。


 部屋の設定が終わった麦が、皆へ声を掛けた。


「ほれほれ! みなさーん! お部屋が整いましてよー!」


 麦の言葉を聞いて、皆はそれぞれ部屋へと入っていった。


 部屋に入ると、そこは西部劇に出てくるような街並みだった。


「なんや西部にしたんか、ネキ」


 ポポちゃんが辺りを見回しながら言うと、麦はポポちゃんの頭をモフモフしながら答えた。


「いや、ランダムにしたから適当だよ!」


「どうせやったら南極がよかったわ。それはそうと、ニキんとこのギルメンはいつ来るん?」


 ポポちゃんに聞かれ、僕はギルド情報を確認した。


「もうすぐ着くみたい! ちょっと待っててね!」


 まもなく、部屋へ爽真君が入ってきた。


 僕は爽真君を呼び、皆へと紹介した。


「僕のギルド、わんわん警備保障の爽真君です!」


「わっ、あっ! 爽真です! よろしくお願いします! うわぁ、メンツがやばいっすねー!」


 鷹の面々に驚愕する爽真君の反応を見て、絡み始める麦……と花音さん。


「おやおやおや~? 爽真ちゃんは私と会った時に、そんな反応しなかったではないかな~?」


「私の時もそうでしたね。この対応の違いは、なんでしょう」


「いやっ! 別にそんなつもりじゃないっすよ!」


(かわいそうに爽真君……)


 慌てふためく爽真君を見兼ねたロマさんが、ニタニタと絡む麦の頭を軽く小突いた。


――ゴン


「痛っ! ちょっと! ロマさん! 大事に扱って!」


「おまえなぁ、若い子にセクハラするオヤジと同じ目してたぞ」


 麦が頭をさすりながら、僕へ訪ねてくる。


「あれ? 一人だけ?」


「あっ、もうちょっと待って!」


 すると、すぐに部屋へ入ってきたのはトチギさんだった。


 誕生装備をつけて現れたトチギさんを見て、ロマさんが驚く。


「あぁ、誕生の人じゃん! 麦とえーさんが敵わなかった」


 その言葉にピクっと反応したえーさんが、ゴソゴソと何かをやりだした。次の瞬間、一発の花火が空へ打ちあがった。


――『Don't cry even if you lose.』――


(かましちゃいなよ花火じゃん……負けても泣くなよって、えーさん……)


 花火を見たトチギさんも、コソコソと始める。


――『泣きません』――


 トチギさんが打ち上げた花火を見て、ニヤっと笑うえーさん。その笑みに、トチギさんも口角をあげて応えた。


(そこは『負けません』じゃないんだ……)


そして、なぜかもう一発。


――『神奈川県相模原市〇〇〇〇までプレゼント送ってください』――


「えっ! ちょっ! 麦ちゃん! 何してんの!」


「いや、なんか見てたら私も上げなくちゃなって!」


 そこへ、マイラーさんが手を叩いて注目を集めた。


「おい! そこらへんにして、そろそろ始めようぜ! 三人とも今日は鷹だからって、遠慮なくやってくれよな!」


「せやで! Gvと違って、アイテムもスキルも制限あらへんからな! 好きにやりぃや!」


 マイラーさんとポポちゃんの言葉に、爽真君と僕、それにトチギさんは力強く頷いた。


 今日僕らが行おうとしているのは『ドロケイ』だ。地域によってはケイドロとも呼ばれている。


 泥棒チームと警察チームに分かれて、警察が泥棒を捕まえていく、集団鬼ごっこみたいなものだ。


 警察と泥棒のチーム分けは今回ランダムで決めた。勝手にチームごとのパーティーが組まれ、衣装もランダムで配布される。


『警察チーム』ロマさん、マイラーさん、伝心さん、爽真君、トチギさん、えーさんの六名。


『泥棒チーム』麦、ヴィンテージさん、こころさん、花音さん、ポポちゃん、そして僕の六名。


 チームが決まったところで、皆は配置位置に飛ばされた。


 警察チームは檻の前の警察陣地に飛ばされ、泥棒チームはマップに各々ランダムで飛ばされる。


 僕はどこかの家の中へと、配置された。


(泥棒チームかぁ。不安だなぁ……とりあえず仲間を探すか。しかし、これって……)


 僕に配布された衣装はオレンジの囚人服だった。


(泥棒っていうか、すでに捕まってるじゃん……)


 家の外に出てマップを確認する。すると、すぐ近くにパーティーメンバーのマークが出ていた。


 詳細を確認しようとした時、ポンっと肩を叩かれた。


「文ちゃん! 近くに飛ばされて良かったね!」


 僕の前に現れたのは、唐草模様の手ぬぐいを頭に巻き、同じく唐草模様の大きな風呂敷を担いだ、昔ながらの泥棒の恰好をした麦だった。


「麦ちゃん! 良かったー! 僕、ドロケイやったことなくて不安だったんだよ」


「えっ? 子供の時よく一緒にやらなかったっけ? まずね、警察と泥棒に分かれてね」


「違うよ! ドームでやるドロケイだよ!」


 麦がドロケイ自体の説明を始めようとしたので、慌てて遮った。


「あー! じゃあ、とりあえず移動しながら教えてあげるよ!」


 麦が歩き始めたので、僕はついていった。


「これって、どうやったら捕まるの?」


「うーんとね、動きを止めるかHP0にして倒れたとこを、『ポリ公とお友達手錠』を使って捕まえるんだよ!」


「ポリ公と……って、なんか聞き覚えがあるような?」


 僕が口にした瞬間、麦は膝をついて前に倒れた。


「くっ……! 前にイベントで手に入れた、『お友達手錠』の衣装……」


(あっ! そういや、前に図書館でロストしたとか言ってたな……あれか)


 倒れている麦を起こし、また歩き出した。


 僕はさっき聞いた中で、引っかかったことを尋ねてみた。


「HP0って、攻撃してってことだよね? 支援職不利じゃない?」


「そうでもないよー! ロマさんは得意だよ? この前なんて、ゾンビパウダー投げつけて、ヒールで倒してたし」


「えっ!? ヒールで!? さすが超回復ヒール……」


 そこへ、通りかかったバーのスイングドアが、勢いよく開いた。


「俺のこと呼んだのはお前らか? おいおい、こりゃ。真っ黒なドブネズミがいるぜ!」


「バァン!」と開いたドアから出てきたのは、アメリカンポリスの恰好をしたロマさんだった。


「げっ! ロマさん!」


 僕と麦は思わず走り出した。それを追ってくるロマさん。


 麦の遠投ナイフや毒攻撃は、(ことごと)くロマさんによって回復され、僕らは路地に追い込まれた。


 ロマさんが警棒を手に、ジリジリと寄ってくる。


「そんなに急いでどうした? お袋さんが産気づいたのか?」


 追い込まれた僕たちが震えていると、ロマさんの後ろから笑い声が聞こえてきた。


「ふっふっふ」


 笑い声の方を見ると、セクシーなライダースーツを着た、こころさんが壁に寄りかかっていた。


 その光景にロマさんは思わず、サングラスを取ってしまう。


 こころさんは、見惚れているロマさんに向かって、投げキッスをした。


「ロッマ~ん」


「こっころちゃ~ん!」


 そう言って、ロマさんはこころさんに向かって走っていった。


(そこは『逮捕だー!』じゃないんだ……)


 セクシーなポーズをしているこころさんに、ロマさんが飛びつく瞬間――


魅惑(チャーム)


「しまった……」


 ロマさんはチャームに引っかかり、動きを止めた。


「むぎちゃ~ん、今だよぉ~」


 こころさんの合図で、麦が目を輝かせ、ロマさんを猛攻撃。ロマさんはHP0になり、姿を消した。


「あれ? ロマさんが消えた……」


「あぁ! 警察はHP0で倒れると強制的に陣地に飛ばされるんだよ!」


「ちゃんとぉ~回復された状態でねぇ~」


「へぇ! そっか、警察は倒されても平気なんだ」


(ロマさん、きっと陣地でうなだれてるだろうな……)


 僕らが路地から出て、歩き出そうとすると、行く手を塞ぐ人影。


「この街も変わらねぇな……愛馬の好みと……」


 目の前にいたのは馬に乗ったカウボーイ風のマイラーさんだった。


(えっ……馬!? あ、竜か)


 投げ縄を横で遊ばせながら近付いてくるマイラーさん。


「目の前の賞金首以外はなっ! タンブルウィードのように転がしてやるぜ!ヒャッハー!」


 マイラーさんは、投げ縄を頭上で回しながら馬で駆け寄ってきた。


(さっきから、やけに皆ノリノリだな……)


 後ずさりしようとすると、こころさんが僕らの前に立った。


「まかせてぇ~!」


【チャーム】


 チャームの範囲ギリギリで避けるマイラーさん。


「おっと、危ないお嬢ちゃんだ。騎士にも遠距離攻撃はあるんだぜ?」


 そう言いながら、マイラーさんは僕らの後ろに回り込み、見た目が銃になった剣を構える。


「やばい! 何かくる! みんな気を……」


 僕がそこまで口にして振り向くと、麦とこころさんは、すでに猛ダッシュで逃げ出していた。


「え、えぇぇぇ……」


 結局、マイラーさんに倒された僕は、手錠をはめられ檻に飛ばされた。


 檻へ飛ばされる直前、マイラーさんが笑顔で言った。


「あんま、お袋さん泣かすんじゃねぇぞ!」


――ヒュン


 檻に飛ばされるとHPは全回復しており、手錠も外れていた。


(はぁ……一番最初に捕まったのは僕かぁ。まぁ、囚人だしな)


 檻の中でため息を吐き、窓の外を眺めるのだった。



――後半へ続く――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ