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第37話 [広がる道]

 正宗さんに会った直後、僕らはJ5の城に着いた。


 一足先に着いたのだろう正宗さんも、少し前の方に待機しているのが見えた。


 J5のコールが流れた瞬間、僕らは城の入口に一斉に突入する。


 僕はプリーストが出来る範囲の妨害をしつつ、先を走る犬彦さんを追った。


 遠くに、正宗さんが走っていく姿が見えた。


──『Jack 5castle MiG-25』──


 正宗さんのギルドのコールだった。


 さっき言われた言葉が悔しかったのか、僕の言葉を最後まで聞かずに行ってしまったのが悲しかったのか。


 この感情が何なのかは、よく分からない。だけど、見えなくなる正宗さんの背中に二度も追いつけなかったこと。


 それだけは確かに、胸の奥を締め付けてるのが分かった。


 戻されたセーブポイントで、少し立ち止まっていると、犬彦さんが肩に手を置いてきた。


 顔を見上げると、犬彦さんは微笑んでいた。


「J5は少し人が増えてきたから、別のとこ移動するか?」


 僕は頷き、今までのコールを思い出す。


「そういえば、さっきからJ6のコールが止まっているような……」


「じゃあJ6行ってみるか!」


 僕らはコールが止まっているJ6へ、進路を変えた。


 J6前に着くと、城の前にはまばらに人が待機し、ちらほら中に入っていく人たちもいた。


 僕らが様子を伺っていると、あとから来たキレマスさんと目が合った。


「あっ、キレマスさん。J6って……」


「小規模が防衛してんだよ。去年もいたけどさ、レーサーが紅白戦するって聞いて、わざと邪魔しにくんのよ! 普段こんなとこ来ないようなのがさ」


「そうなんですね……別のとこ散った方がいいですか?」


「うーん……」


 考えているキレマスさんの横に、白チームのリーダー、イニーナさんが歩み寄ってきた。


 気付いたキレマスさんが話しかける。


「おっ、イニーナさん! これ、どうする?」


「レース会場に戻す」


 その一言に犬彦さんが反応した。


「言うねぇ。戻せんのか?」


「あぁ、白チームには声をかけた。レーサーとは言え、数には敵わんだろ」


「皆で行けば怖くないってか。ククッ……。いいねぇ! のった!」


 犬彦さんはギルドチャットで、わんわんのメンバーに声をかけ、キレマスさんも赤チームのマスター達に声をかけた。


「さっ、来れそうなやつらは勝手に来るだろう」


 キレマスさんはそう言って、イニーナさんと先に城の中へと入って行った。


「俺らも行くか」


 犬彦さんの後に僕らも城へと入って行った。


 魔石部屋へと向かうと、部屋の入口前から少し乱戦状態になっていた。


 僕はレーサーらしき人達に出来るだけの支援を回した。


 イニーナさんがスミスと戦っているのを見つけると、犬彦さんは駆け付け、二人で相手を倒した。


「おーい、騎士ならパッと倒しちゃえよ!」


 犬彦さんはイニーナさんに笑い掛けた。


「俺はレース特化だ。対人特化ではない」


「よく、そんなんで突っ込むとか言えんな!」


 二人は顔を見合わせ、互いに笑みを返すと、また別々の方向へと散った。


 次第に辺りはレーサーが増えていき、気付けば戦況は有利になっていて、魔石部屋へとレーサー達が雪崩れ込んでいった。


 僕も勢いにのり、魔石部屋へ突入すると、すでに魔石を叩いているイニーナさんが見えた。


 次の瞬間、セーブポイントに戻された。


──『Jack 6castle Gun bullet』──


(なんだかんだ言っても割っちゃうんだな……)


 対人特化ではないと言い切りながらも、結局言った言葉の通り、レース会場へあっという間に戻してしまったイニーナさん。


 敵ながら、かっこいいなと思ってしまった。



――その頃K1では。


「ロマさん! 助かりました!」


「おぅ! よく周りみろよ! って、あいつはまたどこ行った……。あっ、いた」


 俺は周りに支援を振り撒きながら、すぐいなくなる麦を追っていた。


 乱戦の間をすり抜けつつ、魔石部屋の入口前まで辿りついた。


「おい! 麦! お前離れ……」


 麦に話しかけた時、横目に赤黒い光が見えた。


(まずい! 『オヤジ』がくる!)


 反応しようと思ったが、気付くのに遅かったことは分かっていた。


――ドゴッ


 鈍い音が俺の前に響くと、目の前でホークさんがオヤジを受け止めた。


 ホークさんがオヤジを受けたと同時に、オヤジを撃ったモンクをマイラーさんとポポが仕留める。


「あぶねぇ! 助かったぜホークさん!」


 HPの減ったホークさんをすぐさま回復してると、麦が寄ってきて背中を叩いてきた。


「ロマさん! 周りをよく見なきゃダメじゃん! 私なら、あんなのヒョイよ! ヒョイ!」


(こいつ、支援切らしてやろうかな……)


「しかし、辿りついたのは五人か。部屋ん中にMaxの十人がいるとして、五人じゃ、さすがに辛いな。どうするよ、ホークさん?」


 防衛側は魔石部屋に十人までしか配置できないルールがある。その分、部屋の中は精鋭ぞろいのことが多い。


「あぁ、そうだな……」


 ホークさんが辺りを見渡すと、数名がこっちに合流した。


「またせたねぇ~。なんとか切り抜けてきたよ~」


 ヴィンテージさん、えーさん、あと鷹のプリーストと騎士が合流した。


「ホークよ、どうすんだ? ここ制圧してから突入すっか?」


 マイラーさんがホークさんに尋ねると、少し考えたホークさんが口を開いた。


「いや、こっちが乱戦の今、中はまだ来ないと奴らも踏んでるはずだ。デスたちがここを押さえてる間に、ここに揃った者だけで行く」


「いいね! さすがホークさん! はよっ! 行こ!」


 ホークさんの決断に、そこに居たメンバーは顔を見合わせ小さく頷いた。


「待ってぇ~! こころもついたよぉ~」


 そこに笑顔で現れたのはこころだった。


「こころん、よう辿り着いたな! ダーハルはどないしたん?」


 驚くポポに、こころが微笑む。


「男性キャラが多いほう狙ってきたからねぇ~。ダーちゃんはあっちぃ~」


 こころが指差す方を見ると、デスさんの横で激しく腰を動かし踊るダーハルが見えた。


「突入するならぁ~、こころも必要でしょぉ~?」


「そうだな。さぁ、皆。いくぞ」


 ホークさんの掛け声で、その場に居合わせた十人が魔石部屋へ突入をかけた。


 一斉に十人で入ると、目の前をピンクの光に覆われた。


(くそ……動かねぇ。魅惑にかかったか)


 戦士のダンサー『織姫』の魅惑にかかった俺と鷹の騎士。


 織姫の横では、魅惑を放とうとしている男のダンサー。


 数秒間動きを封じられた俺と騎士に向かって、戦士の数人が攻撃を仕掛けに来た。


 その瞬間、俺の近くからピンクの光が辺りに広がった。


【魅惑】


 戦士の男ダンサーより先に魅惑を放ったのは、こころだった。


 こころの魅惑にかかり、相手の男ダンサー含め四人がその場で動きを止めた。


「よくやった! こころ!」


「でしょぉ~。しかも、こころが止めたのは、織姫ちゃんの倍の四人~。パキヨムのおかげかなぁ~?」


 こころがそう言って織姫に目をやると、織姫は顔を真っ赤にして怒り出した。


「くぅぅぅぅ! あんたねぇ! 今にみてなさいよ! 私がパキヨムのジュエル取ったら五人は止めてみせるわよ!」


「その頃にはぁ~こころは六人ぐらい余裕かもぉ~」


「なんですってぇ! そしたら私は八人よ!」


「こころなんて十人全員っ! 止めちゃうかもぉ~」


(全員女キャラだったら止めれねぇじゃん……案外こころなら、いけっかもな)


 言い争ってるダンサー二人を横目に、戦いは続いていた。


 残りの戦士の内、数人がこっちに一斉に駆けてきた。


【ブレイクインパクト】


 ヴィンテージさんが斧を地面に叩きつけ、衝撃波で敵を吹き飛ばす。


 だが、ノックバック耐性で吹き飛ばなかった数人は突き進むことを止めない。


 そこへ俺の前にマイラーさんが立った。


「もう魅惑とけるか?」


「あぁ、マイラーさん! もう解けるぜ」


「じゃあ突破口作るから麦と行け!」


 マイラーさんの後ろで、俺と麦は目配せをした。


【ラインブレイカー】


 マイラーさんは向かってくる敵に対し、一直線に突撃し道を開いた。


 魅惑が解けるとともに、俺と麦は一直線に魔石へと走り出した。



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