09話 【召喚呪文 レバル】 朝子!
マイ・ロードからの切羽詰まった声が聞こえてきた。
「セカンド、他国からの領空侵犯だ。爆撃機2機と護衛機3機の合計5台が飛んでいる。この国の空軍が応戦しているが勝てないと思う」
「マイ・ファースト、まずは安全なところに身を隠してください。
落ち着いたら、もう一度、連絡してください」
「わかった。セカンドが教えてくれたようにする。朝子さんの準備状況は?」
「こちらは大丈夫です。では、通信を切ります」
セカンドが私の方に向いて、複雑そうな顔をしていた。
「まあ、この国の軍事力では、こうなるでしょうね。朝子、ディスプレイをご覧ください」
この国の対空砲からミサイルが発射されたが、爆撃機にギリギリ届かなかったり、届いたときも回避されていた。この国の戦闘機が爆撃機を落とそうと攻撃しても回避された。第2射を打つ前に、敵方の護衛機に撃ち落されていた。
「戦闘機の旋回半径がひとまわり小さい。高度も低い。速度も遅い。
これでは勝てませんね」
「セカンド? どうして、余裕なんだ! この国が敵国に攻撃されているんだぞ」
セカンドは、不思議そうに返事をしてきた。
「この国の空軍が頑張っているのを邪魔したら、うらまれますよ!
負けた原因にされたいのですか?」
「被害は無い方がいいだろう」
「朝子は良いひとですね。いいですか? 覚えておいてください。
世の中のほとんどの人が理解できる形で、チカラを示してから、助ける必要があります」
「訳が分からない。他人事じゃないんだぞ?」
「ええ、その通りです。だからこそ、介入するタイミングは重要です。
テレビアニメも現実も同じです。国の軍事力が全滅した後で、スーパーロボットまたは特撮ヒーローが登場します。この順番を無視して、登場したら、こう言われてしまいます。
『目立ちたがりが、しゃしゃり出て、邪魔しやがった』
国家権力である軍隊は高い給料をもらっているのですから、給料分は働いてもらわないと。そして、2階級特進の良い機会を奪ってはいけません」
「で、でも、命を無駄に失わせるよりは良いはずだ」
「あれれ~? 人間たちは、そうは考えませんよ。
予防よりも、事件後です。
犯罪予防パトロールよりも、犯罪を起こした人を逮捕するほうが、見せ場になります。
火の用心と防火運動で町を見回るよりも、火事を消すほうが、見せ場になります。
悪意あるハッカーからの攻撃を未然に防ぐよりも、隠し切れないトラブルに発展してから解決する方が良い。
マッチで火をつけて、自分でポンプで水をかけて消す。マッチポンプや自作自演をしろとまでは言いませんが、助けるタイミングは間違えないでください。
だから、わたしは人間が嫌いなのです」
わたしは言い返せなかった。ただ、黙っているのも嫌だった。
「わかった。セカンドが言う通り、コケる前に支えても、迷惑がられるだけだ。
それよりも、こけた人に、手を差し伸べる方が喜ばれる。
そういうことだな」
セカンドは自分の言い分が通ったのに、悲しそうな顔をしていた。
「おっしゃる通りです。でも、朝子の考え方が正しいと思っています。
それでも、人間は多数派の考え方が正しいことにして団結したがるのです。
ですから、私のことを嫌いにならないでくださいね」
私は、セカンドは人間よりも温かみがあると感じていた。
「大丈夫だ。セカンドのことは好きだ」
セカンドは、うれしそうな表情を向けてきた。
そして、真剣な顔つきに変わった。
「そろそろです。朝子、出る準備は良いですか?」
「すぐに、準備する」
わたしは、服を着替えて走り出した。
◇
こころを落ち着けて準備を整えたとき、こころの中で、マイ・ロードの声が響いた。
『【召喚呪文 レバル】 朝子!』
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