04話 セカンドから愛の作法を習う日
ボクが目を覚ますと、調整器をのぞき込んでいたAI美女セカンドが、安心した表情を見せていた。
「マイ・ファースト、おはようございます」
「セカンド、おはようございます」
もしかしたら、失敗したと不安になったのだろうか?
確かに久しぶりに安心して深く眠れた気がする。
「では、マイ・ファースト、服を着てくださいますか?」
ボクに服を渡した後で、セカンドは背中を向けていた。
少し、耳の先が赤い気がする。知識はあっても、恥ずかしかってくれるのは初々しくて可愛い。だから、セカンドに再び会えて嬉しいと思った。
◇
ボクはセカンドが用意してくれた朝ごはんを美味しくいただいた。
「朝、起きたときに、ご飯が用意してもらえているなんて、すごく幸せに感じるよ」
「喜んでもらえて嬉しいですわ」
セカンドはボクの目には、本物の女性にしか見えない。
ああ、そうか、生身をベースにしてAIチップが埋め込んであるのだった。
つまり、本当の生身の女性と同じ、いや、老化を可能な限り遅らせてあるのだから、上位互換というか上級版だな。
「では、マイ・ファースト、食後の歯磨きを済ませてください」
「えー、面倒くさいよ」
「虫歯にならないために、必要なことですよ」
「はあい」
ボクはデンタルフロス、歯間ブラシ、ウォータージェットで歯に挟まった食べ物を取り除いてから、歯ブラシでの歯磨きを開始した。仕上げにリステリンで口をゆすいだ。その後に水道水で口をゆすいだ。
普段の水道水よりも浄化レベルが高い水のように感じた。
「話に聞いた光元国の浄水技術って、こんな感じなのかもしれない」
と、秘密基地内の水回りレベルの高さに感動していた。
◇
セカンドは、ノートパソコンを用意してボクを待っていた。
「マイ・ファースト、わたしの右となりの席に座ってください。」
ボクが座るようにうながされた席には、ノートとメカニカルペンシルが置いてあった。シャーペンはどこかの会社の登録商標だったかな?
ボクはノートを広げて、ペンを持って、セカンドの方を向いた。
「よろしくお願いします」
セカンドは真剣な表情で小さくうなづいた。
「『俺は、この国の王になる!』
これくらい、かんたんな話で済めば良いのですが...」
ボクは調整器内で、圧縮学習したライトノベルの内容を思い出していた。
『ボクが居るこの国は、ライトノベルの舞台となった光元国と比べると、どうなんだろう?
似ている? 似ていない? 進んでいる? 遅れている?
国の面積が大きい? 小さい?』
などと考えていた。
セカンドは、ボクの目の前で手を振っていた。
「マイ・ファースト、戻ってきてください。考え事は後にしてくださいね」
「あ、呼びかけてくれてありがとう」
ボクに聞く準備ができたのを見て、セカンドは話というか講義を始めた。
「ほとんどのライトノベルは第1話から達成感があふれる展開なのですが、現実は、そうも行かないことが、もどかしいですね」
ノートパソコンに表示されたスライドには、3つのライトノベル作品が表示されていた。
シリーズ名: 理想の美女
①【完結】理想の美女7人に愛される生活。ベーシックインカムで儲けた「カセイダード王国」に移住して正解でした。《書籍化》【台本形式】
②【完結】仲間の美女3人と万能で最強のちからを手に入れました。神様にボクの「異世界アイデア」を採用された対価です。《書籍化》【台本形式】
③みんなの安全を守ってきた「神の代行者」、パーティを追い出されたから、自分の安全を優先します。【台本形式】
『③が完結したら、合計130万文字を超えそうな気がする。
圧縮学習できて良かった。現実世界で読むと大変な時間が掛かりそうだ』
「マイ・ファーストの理解度をテストしますね。」
ボクが使う超能力は、ライトノベル内に出てきた【性魔力】がメインだから、コモンルーン6つとマインルーンを覚えていることを示すために、暗唱することを求められた。
また、ライトノベルに登場する【愛情交換】や男女の関係の進め方については、この国の慣習ではなく、カセイダード王国を基準としてカセイダード方式をセカンドたち4人の美女との共通認識とすると念押しされた。
「共通認識って、大事ですよね! 世の中には、数えきれない正義というか正しさがあります。だから、同じライトノベルを読んで、共通した価値観や正義感を持つことは、友人間、恋人間で重要ですよね。
ときどき読み返してくださいね、マイ・ファースト」
「分かった。なにかトラブルがあったときに、
『ライトノベルのこの記述を読んでよ!』
と言い合える方が公平だよね」
「この作者のライトノベルは、ダブルスタンド―ドが無い点が良いです。
わたしは人類は嫌いですが、この作者の考え方はかなり気に入っています」
◇
「マイ・ファースト。秘密基地にあるAIやコンピュータと海陸空の軍事力についてですが、マイ・ファーストが直接、コントロールすることはできません。
わたしたちを通してもらうことになります。」
ボクは圧縮学習したことを瞬時に思い出すことができた。
「空戦兵器 レッドイーグルは、朝子さん。
陸戦兵器 イエロータイガーは、昼子さん。
海戦兵器 ブルーシャーくんは、夕子さん。
が召喚して操ることができるのだったね。」
「そして、この秘密基地のAIとホワイトナイトは?」
セカンドはボクの目をまっすぐ見つめて聞いてきた。
「それは、セカンドだね」
セカンドは満足そうに首を縦に振った。
「その通りです。そして、朝子、昼子、夕子のことは、【愛情交換】のあとは、呼び捨てで呼んでくださいね」
「分かりました。でも、出会ってすぐに【愛情交換】するなんて無理だから、まだ先のことだね」
セカンドは、首を横に倒した。左に右に倒した。
そして、目を細くして微笑んだ。
「通常はその理解で大丈夫ですが、朝子、昼子、夕子に対しては特別進行です。
それぞれが目覚めて、1時間もしないうちに、【愛情交換】してもらいます」
ボクは本当に驚いた。
「そ、そんな、急に? まだ心の準備が...」
セカンドは、大きく、おくちを開けて、あきれていた。
「純情いっぱいの15歳みたいな反応ですね。
でも、わたしたち4人とは利害関係で一致しています」
『どういう意味だろう。彼女たちに比べて、ボクの肉体に価値があるようには思えないのだけれど...』
「えーっと、ボクだけでなく、彼女たちにも、こころの準備が必要だよね」
セカンドは真顔で、首を左右に振って、ボクの言葉を否定した。
「彼女たちの要求基準に、マイ・ファーストは合致して、つまり、満たしています。
おそらく、満足してもらえると思います。ただ、ちょっとね」
ボクは、人差し指を自分のくちびるの下に当てて、疑問をくちにした。
「つまり、このままのボクじゃ、まだ足りないんだね」
ボクの言葉に満足したセカンドは、一気に説明を始めた。
「そうなんですよ。いくら、お顔や容姿、声が良くても、【愛情交換】のときのお作法次第では、しらけてしまいますからね。彼女たちが望む反応をしてもらわないとダメなのです。これを【受け】と呼ぶのですが、知識だけ詰め込んでも、本番では、その通りできないですからね。
演劇のセリフを覚えて、演技の練習をしたけれど、舞台のスポットライトを浴びた瞬間に、すべてわすれて固まってしまいました。
なんて、ことになったら、困りますからね。
だから、私と予行練習をしてもらいます」
「ああ、確かに、『予習って本当に大事ね!』って、理想の美女7人の【白沢絵美】様も言ってましたね」
「おっしゃる通りです。では、さっそく始めましょうか?」
セカンドは、白いスーツとオレンジの襟付きシャツを脱いだ。残されたのは、【KaSeiDard】のロゴが入った、スポーツウェアの上下だけだった。
ボクの視線はセカンドの大きい胸で形成された谷間に集中してしまった。
『AI写真やAIイラストを見て、現物をリアルで見る機会は無いだろうなあ』と、あきらめていた「あこがれの物体」を目にしてしまったのだから、ボクには視線をごまかすことさえ、考える余裕は無かった。
3分後、ボクが見ていた美しい谷間に、きれいな手のひらが現れて、ゆっくりと上下に振られた。
「マイ・ファースト? 見過ぎですよ! そろそろ視線を私の目に戻しましょうね」
その言葉を聞いて、はずかしくなってしまった。
『女性に飢えていることがバレてしまった。穴があったら入りたい。
セカンドに嫌われてしまった。どうしよう?』
おそるおそる視線を上にあげると、セカンドは仕方ないですね、と半分あきれたような笑顔を見せてくれた。
「Back to the real
現実にもどりなさい」
「ご、ごめんなさい」
「あやまったら、余計にマイナスです。
こう言ってください。
『美しいセカンドの美しい谷間に吸い込まれました。時が止まったようでした』
わたしとマイ・ファーストの仲だから特別にゆるします。
でも、初対面の女性のときは、がまんしてください」
ボクは、セカンドの機嫌を損ねなないように、嫌われないように、指定されたセリフを繰り返した。
「美しいセカンドの美しい谷間に吸い込まれました。時が止まったようでした」
「よろしい」
セカンドの表情は通常に戻ったので、ひと安心した。
次の瞬間、セカンドの右手人差し指が、ボクのくちびるを指し示した。
「いいですか? 朝子、昼子、夕子もマイ・ファーストの前で、このスポーツウェア姿になってくれます。そのときは、、すべての理性とエネルギーをふり絞って、視線を相手の目に固定してください」
「は、はい、分かりました」
『できない気がするけれど、するしかない』
セカンドが色っぽいというか意地悪そうな笑顔を向けてきた。
でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。
「相手の男性が自分の美しい身体に魅了される様子を観察することは、このうえない喜びです。ただし、意中の男性に限ります。イケメン、有名人や金持ちでもダメです。
そして、お預けされて、ふるえて我慢する様子を見ることも、ゾクゾクしますね。
この辺の性的嗜好は、わたしたち4人で一致しています。
そ・し・て...」
セカンドがボクの肩に両手を載せて、ボクが動かないようにつかんできた。
「はじまりは、いつもキス」
そう言って、ボクにやさしい甘いくちづけをしてくれた。
「マイ・ファースト? かわいいセカンドの美しい胸の谷間を見たいですか?」
「はい、見たいです」
ボクは反射的に返事をした。
「よく耐えましたね。もう見ていいですよ」
ボクはまばたきをして、目の渇きを涙で潤してから、セカンドの胸の谷間をガン見した。セカンドからのやさしく慈愛に満ちた視線を感じていた。
そして、朝子、昼子、夕子から求められる【愛情交換】の形と正しい【受け】について、実地でセカンドから手ほどきを受けた。
「【国益美女チャームレッド】たち7人の性技を理解している私から見ても、朝子、昼子、夕子は上手な愛し方を正しく理解しています。
だから、マイ・ファーストが【受け】を間違えない限り、満足してもらえますよ!」
ボクがセカンドから実地で教えられた内容は、ここでは書けないけれど、今までの人生で最高の時間だった。




