053 中学校の友達飲み会
またちょっと理解しがたい奴や出ます。
ぞわぞわ案件です。
楓とランチの後、なんか楽しくなっちゃって遊びに出かけたって言ってもカフェを移動してお喋りしただけだけども夕方まで喋り倒して解散した。やっぱりランチタイムだけでは少ない。
翌日は夜は、中学校のメンバーとの飲み会。小人数とは言っていたけどなんだかんだで20名ほど集まったらしい。美月と一緒に行く颯太と琴音を除いた17名は、連絡をくれた陽葵と幹事の和佳奈と残り15名も確認した。
高校が一緒のメンバーは一人もいなくてホッとする。高1の時に違うクラスの人もいるけど、噂は信じてないにしても聞いているだろうから。高校の事を考えなくて良くて正直気が楽になった。琴音ともメンバーの共有をしたし、颯太も一緒に言ってくれるので心強い。
葵ちゃんの家庭教師で相変わらず何故か癒されて、今日はプチ同窓会があると話をしていたので綾乃さんもすぐに送り出してくれた。
◇◇◇◇
「ごめん。和佳奈遅くなって!」
「大丈夫!大丈夫!バイトあったんでしょ?オヤ?山崎も一緒?」
「そうそう!車出してくれた!」
「私もいますよぉ~」
美月が遅れたことを謝り、颯太と琴音と居酒屋に入ると幹事の酒井和佳奈が座敷から降りて迎えてくれた。以前から成人した中学校の友人メンバーには飲み会しようと良く誘われていた。
今年の1月の20歳の同窓会も逃げて、ずっと断っていたけど、今、目の前にいる酒井和佳奈に仲のいい少人数での飲み会だからおいでと言われた。アイツがいないことは確認したつもりだった。
なのに、会場に入るとすぐ目の前に美月のトラウマ男、井出拓海が笑顔で美月に向かってきて久しぶりだなと中学生の時の様に近づいてきてそのままギュッと抱きしめて来た。
「美月!久しぶり!相変わらずだなぁ!その服に合うな!可愛いぃ~!」
美月の指先から血の気がどんどん失われていく。最近では、今の学校の友人や高校からの友達のお陰で落ちついていたトラウマが呼び覚まされる。
あまりに突然の事に呆然としてしまったが、我にかえると井出拓海の胸を押して離れろと暴れるがびくともしない事に絶望した瞬間。
颯太が井出の腕をつかんで剥がして、琴音が美月を後ろに引っ張り井出から剥がす。そのまま琴音に抱きしめられるが美月の震えは止まらない。
「なんだよ?ソータ!」
「なんだよってなんだよ?なんで、急にお前が美月に抱き着けるのか俺は理解が出来ん!」
「はぁ?何?美月、ソータとつきあってるの?」
「ちがっ」
美月は蒼白になりながら、颯太にまで迷惑をかけそうで声を出すがタイミングが悪かった。颯太と付き合っていることを否定した為、颯太が黙ると井出のニヤけた顏が目に入る。
「じゃー関係ないじゃん!引っ込んでくれる?これはオレと美月の問題なんだから!」
「はぁ?山崎は美月の仲のいい友達だから美月を助けるのは当たり前じゃない!つーか!最低な元同級生ごときが美月に触るな!美月が嫌がってるのに抱き着くとか犯罪だから!」
自分と美月の事を強調する井出拓海に琴音がかなり強い語彙で反論する。その言葉にハッとした颯太が井出拓海と琴音に抱きしめられている美月の間に立ちはだかる。
「なんだよ!最低な元同級生って!琴音こそ入ってくんなよ。美月もオレのこと意識するからテレてるんだろ?」
「うわぁ~相変わらず日本語通じない変態め。美月は貴方の事嫌いですけど?」
「はぁ?そー言ってるのはお前だろ?なに?琴音もオレの事好きなの?だから邪魔するのかぁ」
意味の分からないにもほどがあることを言われた琴音は固まる。琴音に抱き寄せられ、颯太が壁になってくれたのでさっきよりも少しだけ落ち着いた美月は美月の口から井出拓海へ拒絶の言葉を言ったことが無い事に気がつく。まだ震える手で、琴音の服を引く。琴音が目を合わせてくるので深く頷く。
「わっ・・・私は、井出が嫌い」
「はぁ?・・・・」
井出は顔を驚愕して美月を見る。口がパクパクしているが言葉が一言しか出ない。きっとそんなこと言われたことないんだろう。結構裕福な家庭の末っ子次男として家でも甘やかされ。顏も芸能人の様に整っている。
「・・・ちょっと違うかな・・・」
「だよな」
美月が思考しながらボソボソという言葉にホッとしたが、次の言葉にさらに奈落に落とされて今度は顔色を変える。意外にも怒るかと思ったら蒼白だった。
「気持ち悪い。近づきたくない。さっき・・・近くにいただけで・・・吐きそう」
「ちょっと、美月!酷くない?拓海君わざわざ仲直りしてあげる為に来たのに!」
美月の言葉に、和佳奈が反応する。この言葉から、井出拓海が来ることは和佳奈は知っていたようだった。美月が目の端に映る陽葵と視線が合うと陽葵は頭をフルフルと横に振る。陽葵は知らなかったみたいで少しだけホッとする。
こんな事に加担している人が少なくて良かった程度の安心だが、もう帰りたい。視界に入れたくない。視界に入りたくない。気持ち悪い。
「和佳奈・・・ごめん。用事出来た。帰るね」
「えぇ~!そんなぁ~!なんで?ちょっと!なんで拓海君に酷い事言って帰るの?」
「え?私メンバー確認したよね?」
「でも。そろそろ仲直りしたらぁ~?拓海君も反省してるし!」
和佳奈と会話も出来ないのかと落胆する美月だが、和佳奈の言葉に琴音が反応する。いつもよりかなり低い声なのに和佳奈は気にせず続ける。
和佳奈は中学校の時から井出拓海の周辺にいた。学力が伴わず高校は別だったがまた頼られて嬉しいのだろう。
「は?わざと・・・?たまたま来たんじゃなくて?」
「そうだよぉ~2人がずっとわだかまってたらみんなが集まりにくいじゃ~ん!仲良くしようよぉ!」
冷えた指先からポポポッと熱が帯びてくる。それか美月が感じたほどの無い怒りだった。頭もくらくらしてきて、涙まで溢れそうになるがそれは根性で止める。こんな奴らの前でなんか泣けない。
美月が出口にフラフラと歩きだすと、後ろから琴音に服を引っ張られた颯太がついて行く。井出拓海も追いかけようとするが琴音が立ちはだかる。陽葵は意味が分からないが、美月の尋常じゃない反応に思うところがあり琴音の隣に立つ。
「なんで?琴音が邪魔するのぉ?拓海君に好かれるなんて美月にはもったいないくらいなのに!まぁ。大学生らしく服装は大分ましになったみたいだけど」
和佳奈の斜めな言葉に琴音は、和佳奈を睨みつけて問うが井出拓海は高校の時の事は伏せた様だ。本当に自分本位で最低な男だ。これで、美月が好きって言うんだからたちが悪い。
「はぁ?コイツが美月にした事全部知ってて言ってんの?」
「全部?中3のときのことでしょ?告白の後の・・・」
「はぁ?中3?本当に最低、全部言わないで協力させたの・・・」
「さっきから全部。全部って何?アレくらいの事もう水に流してもいいじゃん5年前だよ?」
和佳奈の言葉に琴音はさっきから怒っているがさらにイライラが増す。美月も井出拓海と会わなくて済むなら特に隠さないでいいと言っていた。
「コイツと美月が高1同じクラスだったのは知ってるの?」
「「「「「「え?」」」」」
さっきまで、黙って成り行きを見ていた周りの人間も半数ほどが反応するがそのまま琴音の言葉に耳を傾ける。
「コイツとコイツの友達の伊藤と美月しか、同じ中学の人間がいないクラスでコイツがした事知ってるのか?って言ってんのよ!」
「はぁ?え?え?」
「コイツねぇ~美月に振られた腹いせに、美月の胸を新しいクラスメイトの前で鷲掴みにして牛みたいって言ったのよ!その後も、アノ胸使って援助交際してるとか、全く事実無根な事クラスの奴らに吹き込んだのよ!」
和佳奈と、和佳奈に賛同して参加していた元同級生たちは、真っ青な顔になり拓海をみる。さらに続ける琴音に拓海は反論してきた。馬鹿なんだと思った。
「「・・・・・・」」
「クラスの女子は美月を遠巻きにして、男子の下品なやつらは、『いくらなの?』とか『俺は若いからタダで相手してもいいぜ』だとか、さんざん言われたのよ!高校入ってすぐよ!和佳奈が同じ立場なら耐えられるの?笑って許せるの?あの偏差値の高い学校でそんな噂がでた女子なんて、女子友達もできないのよ!女子から孤立した中でずっと男子に揶揄われてアンタらは高校生活満喫できんの!」
「はぁ?美月がエンコ―なんかするわけないじゃんか、見ればわかるだろ?冗談だろ。冗談!美月の制服すげぇ似合ってて可愛かったから!本気な奴が寄らない様に虫よけだよ!それを真に受けた奴らが美月にちょっかいだしたのは俺は関係ないだろ?」
「何言ってんのよ。関係ないわけないじゃない!アンタが原因に決まってるじゃない!あれから、教室に行けなくなった美月を知ってるくせによくそんなこと言えるわね!そして、まさかまだ好きとか言うんじゃないでしょうね!」
拓海は図星だったようで。頬を染めて気まずげに目線をそらすが、何処に照れる要素があるのか理解できない琴音は怒りしか沸いてこない。和佳奈が震える声で謝罪するがそんなのは理由にならない。
「ごめん。私、知らなくて・・・」
「はぁ?知らないとで許されると思ってるの?だったら、聞きなよ!コイツ以外の同じ高校の人間に聞けばすぐわかる事よ!いないじゃん!ここに、一緒の高校の人。呼ぶなって言われたんでしょ?コイツはそーゆー奴なんだよ!私にだって連絡来なかったけど、美月から誘われたんだよ。和佳奈が拓海が好きで気を引きたいからって美月をダシに使うな!」
「ちょっと!なっなんてこと言うのよ!」
「コイツ、美月がくるなら参加するとか言ったんでしょ?ずっと好きな子、傷つけまくって謝罪も出来ない男の何がいいの?最低だから。知ってた全員が最低だから。同じ高校のメンバーを呼ぶなって聞いた時点で少し聞けよ!あなた木下由香とかとは仲いいでしょ?別に大きなイベントに来ないでとは言わないけど個人的には二度と連絡しないで!美月にもよ!」
琴音の剣幕に絶句してる会場の数名の同級生を一瞥して、琴音が出口に向かおうとすると琴音の隣にいた陽葵が琴音の手を取る。最初は触れる様に握られたが言葉を出しながら握る力が入っていく。
「ごめん。私・・・知らなくて・・・・」
「うん。美月は井出がいないか聞いたんじゃなくてメンバー聞いたんでしょ?」
「・・・うっ・・うん」
「美月は甘いからなぁ~。来てから井出がいても陽葵が、今日来れるようになったんだぁ。くらいしか思わなかったとしてもそれはしょうがないよ」
「・・・・でも、美月凄い青い顔してた」
「うん。でも、颯太がいるし・・・・・」
琴音は少し逡巡してからさらに言葉を続ける。敢えて井出拓海は振り向いて言った。
「もしかしたら、今日がきっかけでくっつくかもね。最近イイ感じだったからさ」
「はぁ?颯太なんて10人並みだろ!」
「はぁ?あんたより100万倍いい男だと思うけど?あぁ。今、あの二人同じ学校でアンタは颯太がどれだけ美月甘やかしてるか知らないからなぁ~。まぁ~アレは惚れちゃうわぁ。まぁ。アンタのいい所なんて顔だけだろう?でもね。美月の好みは父親がベースなのよ。めっちゃ塩顔!アンタは違う!」
井出拓海はどちらかと言うと字は違うけど同じ名前の俳優みたいにソース顏だから、そのイケているはずの顔はパクパクと口を開け閉めして蒼白だけど、そんなの知らない。美月が植え付けられた事実無根の噂に比べれば琴音は事実しか言っていない。事実になるかもしれない事と・・・。
「琴音!」
「なに?陽葵」
「もしかして、二人イイ感じなら琴音いけないよね?」
「そーだね。確かに帰ろうかな」
「私、まだ飲んでないの!場所変えよう!色々、話聞かせて!帰りは代行でもいい?」
「いいの?代行イイよ!私は陽葵と話したい!」
「ねぇ!和佳奈!私も今後連絡しないでね!こんな、だまし討ちの片棒担がされるなんて思ってなかった!うちらのメンバーで1番美月がうんっていいそうで、事情話したら協力しなさそうだから黙って私に美月誘わせたんでしょ?琴ちゃんだったら疑われそうだもんね?」
にこやかに言っているが陽葵もしっかり怒っている。ふわふわと朗らかで明るい陽葵はめったなことで怒らないというか怒ってるところを琴音も他のクラスメイトも初めて見る。
「え?あっ」
「自分勝手な事ばかりしてると友達無くすよ?」
陽葵の言葉に、和佳奈は黙ってしまう。このままこの人たちはどんなテンションで飲み会をするんだろうかと琴音は思ったけど知ったことは無い。知ってる人も知らない人も巻き込んだのは彼らだ。
二人が出て行こうとすると事情を知らなかった陽葵と一緒に来た2人も私たちも一緒に行くと言って出て来た。もちろん、和佳奈にもう誘いに乗らないからと言い残して。
読んで頂きありがとうございます!!
~登場人物~
森 美月21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科 SNS名【森美月】
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中 ブラコン 敢えて鈍感 年下に甘い
松本 琴音20歳 服飾学校3年 SNS名【松本Koto】
2/15生 美月と中高一緒の友達 今年で学校卒業の年。卒業制作に忙しい。
山崎 颯太20歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科 SNS名【Sota.Y】
7/28生 美月の幼馴染 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した 美月が好き みんなにバレてる 美月にはバレてない
太田 陽葵 20歳 地元の短大に通っている 保育士志望
12/7 大らかで朗らかな性格 よほど悪い人でない限り誰とでも話してみんなと仲がいいタイプの人
井出 拓海 20歳 東京の大学に進学
3/2 5人兄弟末っ子次男 末っ子と甘やかされた 工藤〇に似ている容姿と裕福な家 頭がいいのでかなりモテたが美月が初恋 幼稚園児ような好きな子を虐めてるのに自分が嫌われるわけないと思っている自己肯定感が限界突破している方
酒井 和佳奈 20歳 高校卒業後地元の洋服屋の店員をしている
9/10 井出のことが中学生の頃から好き 美月が中学生の時に告白を断っているので、今回連絡が着て自分にもチャンスがあるのではないかと思っていた
伊藤 一騎 20歳 井出の友達 美月の大学に今年入った 高1も同じクラス 井出拓海信者
木下 由香 20歳 和佳奈と井出の友だち クラスは違ったが高校が同じだった 高校の美月の時間から井出と伊藤と距離を置いている 和佳奈とはよく会う




