004 気を許せる場所と人
今回もちょっとセンシブルな発言もあったりします。
何処までが、大丈夫かは人それぞれなので苦手な方はすみません。
「「こんばんわぁ~」」
「いらっしゃ~い!あっ美月ちゃん恰好・・・」
《トラモント》のバーテンのダイチがドアのベルの音に反応して声を出すとその後の言葉にお構いなしで被せる真央の声が響く。
「もぉ~バイト後の私より遅いってどーゆーことよ!あっ美月可愛い!ん?カッコいい?まぁいいや似合う!めっちゃ似合う!」
「あはは真央もう飲んでるの?テンション高い」
あははと笑いながらカウンターの椅子から降りて来た真央にハグされる。真央は見た目はクールビューティーだけど、人懐っこいくて、飲むと外国人みたいなテンションになるのが可愛い!
「少しねぇ~」
「なんか、のどか沸いてるとか言って3杯のみ切ってるよ。30分前にしか来てないのに。美月ちゃん、本当に、いつもの格好のいいけど、今日のは凄く似合ってるね」
お店の奥から男性にしては背の低い中世的な顏の店長のユウさんが出てきて時計を見ながら、心配そうに真央を見ながら説明してくれる。そして、百点満点の誉め言葉だ。
「しかも、空きっ腹に飲んでるから危ないぞ。テーブル席に移動するか?おぉ!本当だ。スタイルいいね!美月ちゃん!」
キッチンの出口から短髪で男らしい端正な顔立ちのオーナーのヨータさんが顔を出す。
この高台にある《トラモント》は、長身の若く見えるけど32歳のオーナーのヨータさんと、女性みたいに綺麗な顏の29歳の店長のユウさん、それに糸目の長髪をオールバックで纏めている24歳のバーテンのダイチさんの3人で回しているカフェバー。
18歳で車の免許を取ってから暇さえあれば真央と琴音の3人交代で車を出してドライブをしまくって見つけたお店だからかれこれ3年くらい通っている。20歳になったらお酒飲むと約束していて、真央と琴音と美月の3人で初飲み会をしたお店でもある。
トラモントに通った縁で、2件隣の美容室で真央はバイトをしている。丁度、一人暮らしようの部屋を探していた真央の借りているアパートの部屋も徒歩10分のところにある。真央は高校を卒業してから2年、美容室でバイトをしながらお金を貯めて、今年やっと美容学校へ通い始めた。
真央は美容室で働きながら通信で免許を取得するつもりだったけど、働いてるお店の店長さんに絶対昼に行けと言われてしぶしぶお昼の学校に通うことになったと言っていた。だけど、気の合う仲間が出来て楽しそうだ。
「あっ!ヨータさん。明日のお昼まで駐車場お借りしていいですか?」
「ん?」
「真央の部屋に泊まろうと思って!」
「えぇ~。真央ちゃん家に泊まるの?俺の部屋でもいいよ!すぐ上だからめちゃ近いよ」
ヨータさんがいつもの軽口を叩くので、美月がどう返そうかな?と考えていると、琴音が横からスルッと口を挟む。
「ええぇ~私たち泊まったらヨータさんお店のカウンターで寝るんですか?落ちたらヤバい高さですよ」
みんなで、カウンターの上に寝そべるヨータさんを想像して笑う。琴音は本気だ。オーナーのヨータさんが頬を書きながら困った様に琴音を見ながら言う。
「琴ちゃん。なんでカウンターなの?うちソファー席もあるよ?」
お店にいる、後2組のお客さんまで爆笑する。もう、涙まで溢れる。ヒーヒー言いながらなんとか笑いを押さえて、ソファー席に移動します!と真央の荷物を持って、真央を押す。
他のテーブルにいたお客さんにもお騒がせしてすみませんと頭を下げると時々見かける常連さんカップルと女性グループだったので、親指を立てられた。グットのサインを5人にされた。どうやら面白かったから許して貰えたらしい。
琴音と二人でお礼をして、二人掛けのソファーの奥に真央を座らせその隣に美月、向かいの2つ並んだ1人掛けのソファーに琴音が座る。奥の席にはポンポンと鞄を置くと、注文を取りに来たダイチさんに謝る。
「真央絡んでこなかった?遅れてごめんねぇ~」
「あはは大丈夫だよ。真央ちゃんの絡みなんてめっ・・・・・・・・・・・・・・・・ちゃ可愛いだけだから!」
「凄い溜めたね」
「凄い酔っぱらいはたくさんいるからねぇ・・・」
ソファーの向こうの側は1面ガラス張りで、時間帯によっては高台から見下ろす海に落ちる夕日が見える。今の時間帯はもう真っ黒だが真っ黒の海を見つめて、つぶやくダイチにクスクスと笑いが漏れる。そんな話をしているとカウンターの向こうからカウンターに肘をついたヨータさんが口を出してくる。
「なに?今日もスクランブルエッグバケット?」
琴音と目を合わせてクスクスと笑いながら答える。
「はい!お願いします!いつもの!」
「あっでも、いっぱい歩いてきたからお腹空いてて!トラモントピザとぉ~」
「サラダも欲し!」
美月がオーナーの軽口に乗ると、追加の注文を琴音も直接料理担当のオーナーに直接言う。隣で、すでにふわふわしている真央も手を上げてサラダも所望する。
「あぁ。じゃあ、豚しゃぶサラダで!後はメニュー見て決めます!」
ヨータさんにそう言うと、ダイチさんに向かって飲み物を注文する。ヨータさんは任せろと言ってキッチンへ消えて行った。
「私はモスコミュールで、真央は?」
「カシオレ!私に糖分を下さい!」
「琴は?」
「ん~ジンバック!」
「おぉいいね。次、私もそれにしよう」
美月が琴音の注文に同調するとダイチが糸目の目じりを下げてニコニコとしながら問いかける。
「あはは、美月ちゃん。ジンジャーエール好きなの?」
「はい!ちょうどいい甘さで!」
「あぁ。ここのジンジャー蜜、ユウさんのお手製だもんねぇ。甘さ控えめだよね」
「はい!最初吃驚したんですけど生姜のパンチが効いてて美味しい!」
「ですってぇ~ユウさん!」
「ありがとう!美月ちゃんの為に頑張って作るねぇ~!」
あははと言いながら、ダイチがカウンターの中に戻るのでメニュー表を取り出して追加のおつまみを探す。
「真央。もう、ハニートースト食べたい?」
「食べたい!学校行って、バイト行って、カクテル3杯飲んでお腹ペコペコ!」
「おぉ。頑張ったねぇ~偉いぞぉ~」
カクテル3杯よりご飯を食べなさいよ。と言いながら美月が真央の頭をわしゃわしゃすると真央は髪の毛は辞めろと手を払う。あははと笑いながら琴音がメニューを見ながらどんどん食べたい物を言う。普段3人とも、何故かクールという評価を貰う方だけど、3人集まるとシラフでテンションがおかしくなって、こんな感じで楽しい。
「焼き鳥と~カマンベールチーズフライ、ん~ポテトも行く?」
「「行く!」」
「ガーリックとチリだけど、ガーリックいっちゃう?」
「「いっちゃう!」」
「OK!」
「そんな・・・女の子が店内でいくいく言わない・・・」
カクテルを3つ持ってきながら呆れた声でユウさんが美月と真央に注意する。美月はキョトンとした顔になるが、真央は敢えてユウさんの名前つきで再度言う。そこで、やっと気がついた美月が顔を伏せるとユウさんがオヤ?という顔をする。そこに何故かどや顔の真央が美月を抱き寄せながら偉そうに言う。
「ふふっん。美月はねぇ~こんな顏とスタイルしてるのにピュアですからね!」
「まっ!真央!辞めなさい!」
真央の暴露を琴音が止めるがもう遅い。ユウさんの後ろでサラダを持ってきたヨータさんがマジ!?って顔をしておしゃれなガラスのお皿に盛り付けられた豚しゃぶサラダを置きながら美月を見て声をかける。
「え?彼氏いるでしょ?」
美月は顔を上げてあははと乾いた笑いを出しながら答える。
「いえ~産まれてこの方・・・」
「「「「「「えぇ!?」」」」」」
ちょっと多い!奥のカップルは二人の世界だけど、隣の席のお姉様方には聞かれていたようで振り返って目を見開いている。完全に見世物きぶん・・・。
「え?マジで?こんな可愛いのに?」
「性格いいのに?」
ダイチさんとユウさんが嬉しい事を言ってくれる。そして最後にヨータさんが・・・
「こんなおっぱい誰も見てないとか!美月ちゃんの同級生男子はついてないの!?」
その瞬間、ユウさんの右手がガシッとヨータさんの顔を掴む。ヨータさんとたまに夫婦に間違われるくらい美人のユウさんもアイアンクローが出来るくらい手大きいんだぁ〜とどうでもいい事を女子3人で思ってた事を後で知る。
「美月ちゃん。ごめんね。このオジさんは遠ざけるから帰らないね、ゆっくり食べて!」
「あはは、ユウさん大丈夫だよぉ~割と慣れてる!むしろ、ヨータさんみたいにあけすけに言ってる割には視線行かない人の方が私は楽ぅ~」
「いやいや慣れちゃだめだから。まぁとりあえず、ゆっくりしてて少し厨房に潜ります!」
店内のお客さんに声をかけて、アイアンクローのままにヨータさんをひきずって行くユウさんを手を振って見送る。先ほどのフードの注文をダイチさんにして気を取り直し。まあ、とりあえず飲みましょうと乾杯をしてカクテルを其々飲んで、小皿にサラダを分けて其々の目の前に置いてあげる。
「ごめん。美月」
しょぼ~んとする真央に、苦笑する。琴音は反省しなさいと怒るが真央が事実しか言ってないので何とも言えない。でも、折角だから声を大にして言いたい話をする!
「大丈夫だよぉ。まぁそもそも事実だし!でもさ、その恋愛経験ゼロ人間に【恋愛相談】してくるやつが多いんだけどそれは何故!?」
「えぇ?また?」
「あぁ~」
真央が驚き、琴音が苦笑する。そう、割と頻繁なのだ。男女問わず。話をする美月は男女問わず恋愛相談を受ける事が多い。
「もぉ~さぁ~何故私なのか!?そして、今回は更に、面識ない人なのよ」
「え?なんで?面識ない人から恋愛相談を受けるの?」
琴音の質問に大輝がSNSのIDを教えたことから説明する。知らない男の子の相談を来週の金曜に受ける羽目になり、その後、大輝に驕ってもらう話までする。
「はぁ?無視すればいいのに」
「あはは。颯太にも言われた。でも、大輝が絡んでるから邪険にも出来なくてねぇ~」
真央の率直な意見に、颯太にもした言い訳をする。琴音も困った顔になり、でも美月はそうなるよねぇ~と納得する。
「内側に入れた人間が困ってると頑張っちゃうからなぁ。美月は」
「友達が絡むと、断れ無い性格は心配なんだけど・・・」
真央の心配に、美月は真央に向き直るとギュッと抱きしめる。細っこい真央はシャンプーやコンディショナーのイイ匂いがする。
「真央ちゃんありがとう!気を付ける!」
「本当にね」
「絶対よ」
「本当に気を付けて!」
「美月ちゃん可愛いの自覚して!」
「そうヤバいよ。男は狼だから」
急に女子3人の会話に入る店の人3人。隣のテーブルのお姉様方までうんうんと頷いて心配されてしまった。申し訳なくなって美月はグラスを持って席を立ちお姉様方の席で一人づつ乾杯をする。何故か、ひとりひとりにコメントを返される。
「本当にいい子だ・・・」
「スタイル良!」
「マジで気を付けて!」
お姉様方も優しくてじーんと心があったかくなる。その後は、たくさん食べて飲んで、2時頃には真央の家に帰ったのに、お茶を飲みながら着せ替えショーをして馬鹿話をして明るくなりかけてからあわてて眠った。
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月 21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃
体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中
松永 真央 21歳 美容学校1年 SNS名【Maomao】
6/3生 美月の高校から友達 2年間バイトで貯めたお金で美容学校へ通っている。バイト先も美容室 年下の彼氏あり
松本 琴音 20歳 服飾学校3年 SNS名【松本Koto】
2/15生 美月と中高一緒の友達 今年で学校卒業の年。卒業制作に忙しい。
林 陽太32歳 『トラモント』のオーナー キッチン担当
高身長濃いめの顔の陽気なアラサーなお兄さん 失言が多い
中島 悠29歳 『トラモント』店長 キッチン・バーテン兼用
中性的な美人なお兄さん 怒らせると1番怖い
福田 大智24歳 『トラモント』バーテンダー
糸目の雰囲気イケメン(真央談)お話上手で褒め上手




