003 年下の同級生のお願い事
最初の金曜日の放課後です!
「美月ちゃん!」
金曜の講義を全て終えた美月が駐車場に向かっていると、ふと声がかかる。美月は声の方に目を向けると朔來曰く【エネルギー制御科の年上の人】である前田大和と、前田より背の高い浅黒い肌の男の子が近づいてくる。前田大和も175cmほどなので高い方なのだが、その前田より明らかに背が高いので180cmは超えているんだろうか?煌星よりは低い?とボケっと考える。
「どうしたんですか?前田さん」
「いやっ。名前!」
「あぁ!大和さん!」
「この間飲んだ時に名前呼びしましょうってなったじゃん」
「ですです!」
「俺だけ美月ちゃんって呼んで前田さんって呼ばれたら俺、痛い奴みたいじゃない?」
そういう事気にするのかぁ~と思いつつ前田大和を見る。顔もシュッとしてて色白で眼鏡。紙も染めてない艶のある黒髪で長さも清潔感があって神経質かもしれない。まぁ気になる人はなるのかと思いつつも茶化すように返す。
「じゃあ、敢えて前田さん呼びにしてぇ~」
「いやっなんで?それなら俺も森さん呼びになおすわ!」
「あははごめんなさい!大和さん。何か用ですかぁ?」
「今日は、颯太と一緒じゃないの?」
颯太に用事かな?と思って諸事情を話す。そういえば、大和のありなしはなんだったのかな?と思い出すけど、どうでもいいかと思いなおす。
「あぁ。今日は、高校の友達と会うので別行動ですよ。颯太と連絡とれないんですか?」
「いやぁ~そういう分けじゃないけど、美月ちゃん一人なのが珍しくて声かけた」
「あははなんですかそれ!私、急いでるんですけどぉ!」
「あっごめん!」
「嘘ですよ。友達と18時に待ち合わせになったんで一旦帰るだけです」
「びっくりさせないでよ。美月ちゃん面白いよね」
「すみません。ふざけてて」
「いや。いいよ」
ニコッと微笑むと本当にお兄さんっぽい。自分の兄を思い出していると、大和の隣にいる浅黒い背の高い男の方が話しかけてきた。
「どうも、森さん。今日は友達との用事だったんだね」
「はい?」
急に話しかけられてしかも予定の事を言われてビクッとなりハテナを飛ばしていると、まつげの長い濃いめの目を細めてニコッと笑った。
「中村雄大です。来週はよろしくね」
「あっ!あぁ!はい。了解です」
「来週って何かあるの?」
大和が聞くが、美月は何処まで話していいのか分からない。中村の悩みをここで言っていいはずもないので中村を見る。自分で言ったんだから自分で説明してほしい。
「オレの相談にのってもらうんです♪」
「らしいです!」
「へ~何の相談?」
「えぇ~言えませんよ。オレのプライベート何で!」
「ふ~ん」
大和が面白くなさそうな反応をする。空気が悪い。確かに目の前で秘密を作られるのはいい気分のするもんでもないもんなぁ~と思っていると。大和たちが来た方向からまた美月を呼ぶ声がする。
「美月さぁ~ん!」
「ん?やっほ!響くん」
いいタイミングですよ響くん!と思う。響くんもエネルギー制御科の同学年。タイのイケメンみたいな顔をしてるエキゾチックカッコイイな男の子だが、準日本人です。と本人が言っていた。いつもニコニコしてて飲み会の企画とかを仕切る担当みたいになっている。大輝の紹介で話すようになり、ITビジネス科の幹事役の美月とはよく相談相手になって仲良くなった。
「美月さん。丁度良かった!再来週の金曜、空いてますか?」
「ん?何かあるの?」
「エネ制の新歓の飲み会がするんですけど、ビジ科と被ってますか?」
「ビジ科は終わったよ」
「もうですか!?」
「そっそ!私が企画担当だったから、講堂借りて選択授業ごとにテーブル分けてお菓子とお茶とかジュースを頂きながら先輩に選択授業のアドバイスを受けるカタチにしました」
「なんですか!?それ!凄いですね!面白っ!」
「いいでしょ~!飲み会苦手な人たちも参加出来るからさ!出欠取って、来れなかった子にもアドバイスの冊子作った!冊子は美咲と朔來と喜屋武くんが作ったんだけど、あっフライヤー見る?私が作ったんだ」
「見たいです!今回は無理だけど今後の参考に!」
美月はスマホを開き、響にも見れるように体を寄せる。響も興味深げに近づきスマホを覗き込むと話を続ける。
「でも、そもそも何をとりたいか分からない人はどうしたんですか?」
「接待役と案内役に分けたの。テーブルでお茶とお菓子とか出しながら相談にのる人と、テーブル間をうろうろ迷ってる子たちにそれとなく話しかけてテーブルに案内する人にわけたの。案内役は同性が話しかけて、同性と異性の先輩どっちがいいのかも聞いたりしてね」
手で簡単に口を隠しながらニヤリと笑い美月がウィンクをする。所謂、悪代官の顔なのだが素直な響はそれには何も言わず感動してうんうん頷く。素直で可愛い後輩!同じ学年だけど1つ下の響は敬語でさん付けで呼ぶので後輩感が強い。
「いいですねぇ~!今度、参考にします。流石ビジ科!営業っぽい授業もあるんですか?」
「あるよぉ~対人スキルは事務方でも必要だからね。営業さんとコミュニケーション取れない事務方は困るってOP(Old person)さんの講義もあったよぉ~」
「あはは。そうですよねぇ~」
「響くんはそーゆー悩みはなさそうだよね!」
「そんなことないですよ!俺しゃべりすぎて無いかな?って気にしてますよ!あっ美月さん引き留めてすみません!大和さんと雄大と話してたんですよね!本当にすみません!」
「別に特に話してないよ。雑談でしたよね?大和さん?」
「そうだね。颯太と一緒じゃないの珍しいね。って話してただけだよ」
「そうだったんですね!良かった!あっ!そう、俺の用事なんですけど、再来週のエネ制の新歓参加してくれません?」
「え?部外者なのに???」
「エネ制、ほぼ男子じゃないですかぁ~でも、1年生に5名くらい女の子がいるらしくて女の先輩がいたほうが安心して相談とかしやすいかなと思ってて。ほら、陽菜ちゃんじゃ・・・ちょっと・・・」
頭を掻きながら笑う響くんに苦笑する。気持ちはわかる。陽菜ちゃんはいい子なんだけど先輩感は薄いからね。天然で可愛い妹タイプ。本人は男っぽいと思ってるけど、美月から見ても正直可愛い。
「OK!んじゃ、ビジ科の女子窓で行けそうな人に聞くでいい?何人まで大丈夫?」
「何人でも、大丈夫です!カラオケ《ハスキー》のパーティールーム予約したんで人数は増える分には大丈夫です!えっと、会費は2,000円ほしいです」
「あれ?俺ら4,000円なのに?女子だから?」
響の会費の件に、中村が口を挟む。会費が半額だから驚いたのだろう。
「エネ制はみんな4,000円だよ。陽菜ちゃんも!カラオケ大会とかの優勝賞品もあるし、ゲームの懸賞も買うし1年生は少し安めで3,000円にするから2、3年次は高いんだよ。それに、ビジ科関係ないのに相談要員として来てもらうから場代だけ!」
「イベントたくさんあるんだ?それは飲み会に参加したら強制?朔來はそーゆーの好きだけど、美咲は苦手かも!」
「大丈夫です!その場で出たい人ぉ!ってやる感じで全員参加はじゃんけんゲームくらいかな?司会とただじゃんけんするだけのやつです!」
「それなら、大丈夫かも!二人にも聞いてみるね!ただ私が二週続けて飲み会だから・・・どうかなぁ!みんなとの返事と一緒に返事でもOK?」
「オケーです!助かります!美月さん頼りになるぅ~」
「えぇ~頼られるだけじゃなぁ~貸1ね!」
「はぁい!俺で出来る事あったら使って下さい!」
「OK、あっヤバっ!時間、ヤバいかも。今日は帰るね!大和さんも中村さんもさよならぁ~!響くんバイバイ!」
美月はさっきまで響に見せていたスマホのスリープ画面が目に入り薄っすらと時間が浮出る仕様で時間が15分すぎてることを知らせる。家まで30分かかるし、家から琴音の家までも30分かかる。準備の時間が短くなるので慌ててその場を後にする。
家に着くと、昨日の夕飯作りと一緒に切って煮込んでいた野菜に火をかけて、カレールーの準備をしつつお米研いで炊飯器にセットする。鍋が暖まると、一旦火を消した鍋はカレーの具と一緒に入れたニンニクとコンソメスープのお陰でルーを入れる前からいい香りが立ち昇る、そこに細かく切ったルーをパラパラとまぶしいれる。ぐるぐる混ぜてカレールーが全部解けると後はスマホでSNSを開いて『カレーは温めの時は弱火で混ぜながら温めて』と兄弟窓にメッセージを送ると自分の準備に入る。
シャワーを浴びて友達と遊びに行く用の服に着替える。大学へは、デニムのボトムに大き目のサイズのTシャツが多い。胸の大きさを気にして、お出かけの時もオーバーサイズの服が多いが、先日の誕生日に兄の彼女と兄からピタッとした襟付きの黒Tシャツに青や灰色の入ったチェックのタイトズボンを貰った。
こんな細いのと思ったが、履いてみると全体的に締めはするがウエストは苦しくなく足も細く、全体的にボリュームの気になっていた美月がスタイル良く見える。去年も貰ったが勇気が出ず封印してある。
学校に着る勇気はまだなかったけど、女子の友達の評価を貰ってから着て行こうと、今日の琴音とのデートで着るつもりだった服だ。少しドキドキだなと思いながらメイクもする。はね気味で猫毛な髪にはアイロンを当ててストレートに矯正する。
今日会う2人は、美容師の卵と服飾師の卵なので評価がなかなか厳しい。ぶっちゃけて、合コンへ行くより気合の入った格好で行かねばならない。適当に行くと、開始から永遠と駄目出しの嵐だ。怖い。
琴音の家で琴音を迎えて、大型ショッピングモールに向かう。夜は肌寒かったのでロングセーターを着ている美月に琴音は久しぶりだねぇ~とだけ挨拶をして車に乗り込んだ。ショッピングモールについて駐車をしながら、何処の店舗の行くかを話始めるとふいに琴音が美月の服装を見て声を上げた。
「ロングセーターのせいで分からなかったけど、珍しい格好だね!」
ショッピングモールの駐車場から店内に向かいながらニコニコと話す琴音に、琴音の中で及第点の服なのかな?と思いながら話を返す。
「ひろ兄からの誕プレなのよ。・・・・・どうかな?」
「可愛い!凄い似合ってる!太陽さん凄い!分かってる!」
「本当!?一応、普通に恥ずかしい!でも、なんか・・・良く見える気がするからさ・・・」
「うんうん!美月は、スタイル悪くないよ!確かに細くないかもしれないけど、細ければいいってもんじゃないんだよ!美月は凹凸が完璧なの!それは、誇るべきことなのよ!」
「琴ちゃ~ん!正直すぎるから信じられるぅ~」
美月にギュッと抱きしめられた琴音も、お返しにギュッと抱き返す。ここは、ショッピングモールも駐車場なんだけどなと思いながらも美月のさわぎようが珍しいのでいい事にした。
会話の返しも楽しいし、愛想もいいが美月はテンションが高いわけでは無い。体いっぱいに嬉しい気持ちを表現するのは珍しい。そして、琴音のテンションは服飾関係の人間としてのベクトルで上がり始める。
「美月!そういうテイストで他の服も見て見ない?」
「え?」
「美月が恥ずかしいやつは見せなくていいから!着てみてほしい服はたくさんあるんだよね!ね?」
「おっおう・・・頑張ってみる」
「わぁ~い!」
「行こう!行こう!」
その後の美月は着せ替え人形と化した。琴音プロデュース美月に似合う服を片っ端からあっちの店に行ったり、こっちのお店に行ったりと色々なところを回った。真央と待ち合わせた《トラモント》に着いた時には心地の良い疲労感でくったりしていた。
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科 SNS名【森美月】
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中
前田 大和23歳 専門2年卒業後 大学2年生 エネルギー制御科
5/12生 専門学校卒業後の入学なのでみんなより少しお兄さん 色白神経質そうな容姿
中村 雄大20歳 大学2年生 エネルギー制御科
4/7生 颯太と大輝と同じ科の人 急に面識の薄い美月に恋愛相談を持ちかけて来た
宮崎 響20歳 大学2年生 エネルギー制御科
4/10生 幹事をしがちな人懐っこい男の子 タイ人っぽい純日本人 エキゾチックイケメン
松本 琴音20歳 服飾学校3年 SNS名【松本Koto】
2/15生 美月と中高一緒の友達 今年で学校卒業の年。卒業制作に忙しい。




